Leading The Way: RANGE ROVER ✕ Ryotaro Muramatsu
時代をリードする人とクルマ
レンジローバー✕村松亮太郎
March 2024
text tatsuya kushima
photography and video yoshihito sasaguchi
世界中のセレブリティに広く愛されるレンジローバー。この名はオフローダーの王様として長く君臨するとともに、ウルトララグジュアリーSUVとして知られる。すなわち、高いオフロード性能を持ちながら英国王室が御用達にするようなラグジュアリーさを備えているということだ。そしてそれは、このクルマは新たなジャンルを開拓してきたリーダーであることを意味する。レンジローバー以前にそういったポジションのクルマはなかったからだ。
今回、THE RAKEは一人の男にスポットを当てた。彼の名は村松亮太郎。映画監督や俳優の仕事の傍ら誰よりも早く3Dプロジェクションマッピングを手掛けて世間をアッと言わせた人物である。
ともに先駆者であり、リーダーでもある両者の邂逅の中で見えたものとは。
《Profile》
Ryotaro Muramatsu/村松亮太郎
アーティスト。NAKED, INC.創業者。大阪芸術大学客員教授。長野県・阿智村ブランディングディレクター。1997年にクリエイティブカンパニーNAKED, INC.を設立以来、映像や空間演出、地域創生、伝統文化など、あらゆるジャンルのプロジェクトを率いてきた。映画の監督作品は長編/短編合わせて国際映画祭で48ノミネート&受賞。2018年には個人アーティストとしての活動を開始し、国内外で作品を発表。2020年からは、分断の時代に平和への祈りで世界を繋ぐネットワーク型のアートプロジェクト「DANDELION PROJECT」を通して世界各地での作品設置に取り組む。
<Start of Dream>
3Dプロジェクションマッピングの第一人者として知られる村松亮太郎氏だが、俳優、映画監督、そしてクリエイティブカンパニーNAKED, INC.のリーダーなど多彩な顔も持つ。
そんな彼のスタートは役者だった。16歳の頃、表現に携わる仕事としてそれを選んだのが全ての始まりだ。日々、“何かを作りたい”とか、“何かを表現したい”と考えていたそうだ。
「例えば映画監督になるためにはどこの学校に行かなきゃとか、就職しなきゃとか、考えたことがなかったです。どうやってそれをやろうかな、みたいな発想でした」
その後彼はアメリカ留学し、帰国後に大学入学をきっかけに東京へ。目的は表現することの仕事につながるキャリアを積むためだ。そこで役者、モデルの仕事を通しながら映像の仕事へとのめり込んでいく。
とはいえ、東京ですぐに成功したわけではなく、しばらく時間に余裕のある生活をしていた。
「その頃仕事はそれほどなかったので、時間はたくさんありました。なので好きな映画を1年に1000本ぐらい観ていたんです。本当にもう一日中。映画作りたいな、映画やりたいなとか思いながら」
そんな日々が続く中、ある日彼はMacのコンピューターと出会う。まだパーソナルコンピューターがメジャーになっていない時代。デザインや音楽、映像が出来るという話を聞いて、独学で勉強し、コンピューター作業に没頭する。世はまさに8ミリからデジタルビデオへの転換期で、村松氏はそこに映像の未来を感じた。
ユニークなのはそこで手がけていた映像の中身だ。それは、モーショングラフィックと言われるような、動くデザイン。世間的にはまだあまり見たことがない映像だった。
そこで役に立ったのが年間1,000本は観ていたという映画。新作はもちろん、旧作や海外の映画鑑賞に費やした時間が肥やしとなった。
「フランス映画、ポーランド映画、ギリシャ映画、スペイン映画、イラン映画、あらゆるジャンルを1日4本観るんですよ。日本よりも海外のものの方が多かったですね。本とかアートも。それらが皆クリエイティブな部分で財産になりました」
そして出来上がった作品は、じわじわとテレビ関係者や映像関係のプロデューサーたちの目に留まり出す。新しい世界を見せられたような感じだ。するとオファーが増え、個人や仲間だけでは手に負えなくなってきた。そこで村松氏が代表となりNAKED, INC.を設立。オファーの数に導かれるように会社をつくった。まさに、映像技術とコンテンツで先駆者となった結果の出来事である。
「会社ってツールなんですよね。その物を実現していくために必要だったから作っただけ。NAKED, INC.は97年当初4人でした……」
まさに仲間たちとのスタートである。
<Leadership>
4人でスタートしたNAKED, INC.だが、すぐに大成功、規模は次第に大きくなり、今では多くの社員、スタッフを擁するに至った。では村松氏は組織をリーダーとしてどのようにコントロールしているのだろうか。
「うちの会社の組織図は変わっています。コアみたいなのがあるんです。地球ならマグマが沸騰しているような。(笑)」
彼が意図しているのは独自性である。通常組織図はピラミッドのカタチになるが、そうではなく円形をイメージしている。しかもそこに線による区切りはなく、担当者が決まった仕事をするという概念を持たないようにした。
「組織図は最初カラーホイール、フォトショップの色のパレットで作ったんです。だから、グラデーションしかなく線で割りません。『分別』っていうのは、良くない意味だったという話を読んだことがあるんです。『分けるな、物事は分かれてないのに分けるからおかしくなる』っていう」
区切りのない組織図を村松氏は“野球ではなくサッカーっぽい組織づくり”と表現する。野球は1番、2番と打順が決まっていて、守備位置も内野、外野それぞれのポジションは大きく動かないが、サッカーはそうではない。もちろんピッチ上の各々のポジションは決まっているが、チャンスがあればいつでもオーバーラップOK。ディフェンダーはもちろん、時としてキーパーが前線まで上がって行くことも可能だ。しかも、それと同時に他の選手が空いたスペースをすぐにカバーする。枠にとらわれず連動し合うような組織である。
では、そんなグラデーションの組織図の中でリーダーシップを取るのは容易なことなのであろうか。村松氏は多様性を含め今の時代それは難しくなっているという。
「リーダーシップが難しい時代になっていると思うんです。昔の方が、パイレーツオブカリビアンのブラックパール号みたいに、船長が『行くぞ!』って言ったら行くことが出来た気がします」
また、時代だけでなく組織の大きさにも難しさは比例すると話す。
「組織が大きくなってくると、世代はバラバラになるし、人数も多いから、一艘の船で行けなくて、艦隊を組まないとならない。すると、この船こっちって言われたら、戦略上そうしなくちゃならない」
個人が全体に組み込まれることで、ひとつの仕事のみに専念しなくてはならなくなる。そうなったとき組織のパフォーマンスをどう維持し、かつ上げて行くかという課題が生まれる。そしてその時リーダーが何を示すかが重要となるのだろう。
これは前述したサッカーチームのような組織の中でリーダーシップをとる難しさに通じる。組織のパフォーマンスを維持しながら個々のキャパシティを広げるために、リーダーは“他の人々に最高の自分になるよう刺激を与え続けなくてはならない”からだ。セグメントをリードする存在が、業界全体に与える刺激、つまり影響を与えているのだ。
<Encounter with The Beautiful Vehicle>
ラグジュアリーSUVとして今なお輝きを放ち続けるレンジローバー。村松氏の作品同様その美しさで人々を魅了し続けるクルマとの邂逅に、彼は何を感じたのであろうか、という問いかけに開口一番こう答えた。
「レンジローバーにはずっと憧れていました。本当にかっこいいですよね」と。
村松氏の生活の中でクルマの占める割合は多く、2台を所有し、普段の足として使っている。仕事での移動に東京から長崎まで走ったり、北海道に行くのにフェリーにクルマごと乗り込んだりしたこともあるそうだ。そんな使い方をするので、パーソナルスペースとしての居心地の良さもクルマに求めている。その意味でもレンジローバーに対する期待は大きく、試乗した後の満足感は想像以上に高かったようだ。
「近年SUVが流行ったことでオフローダー風のクルマも増えましたが、レンジローバーはもともと四駆を作ってきたメーカーなのがいい。その安心感が魅力的ですよね。時代に合わせて造形を洗練させながら、ルーツである四駆としての性能に磨きをかけ続けるストイックな姿勢に共感できる方にぴったりだと思います。空間としての居心地もとても良いクルマなので、僕みたいにいろんな場所へ遠出をする方もきっと気に入るはず」
ラグジュアリーカーとしてのセグメントに君臨するレンジローバーだが、それと同時にオフローダーとしての高い実力を備えている。そう言ったこのクルマならではの魅力が村松氏のハートを射止めた。そして、彼はそのままステアリングを握った印象を立て続けに語り始めた。
「とにかく楽ですよね。ボディは重そうなのに軽快に走っちゃう。走り出しはフワッとしていますが、その後やっぱりピシッとしてくるんですね。長距離ドライブでも疲れなさそうに思います。それほどアクセルを踏み込まないで、これだけのパワーが出ているっていうのが、ラグジュアリーな走りという気がします。PHEVだから燃費もいいんでしょうね」
「EVは静かで、音楽を聴くのにいいんです。クルマに搭載されているオーディオが購入の決め手になったりもするぐらい、僕にとって音は大事な要素です。環境への負荷も気になりますし普段使いはEVで、音楽を聴きながらゆったりドライブするのが優雅ですね」
ガソリン車とEVの2台を使い分けが理想と語る村松氏だが、PHEV(プラグインハイブリッド)モデルは普段クルマを多用する彼のライフスタイルを一層上質なものにするに違いない。
「内装も美しいですよね。スイッチを減らしたミニマムなところがすごく現代的な考え方だと思います」
<Epilogue>
本物のラグジュアリーを知る世界中のセレブリティに愛されながらそのオフローダーとしての実力は他を圧倒するレンジローバー。そんなクルマに時代をリードするクリエイター村松氏に対峙してもらったわけだが、そのケミストリーは確かに感じ取れた。
ともに先駆者であり、今なおカテゴリーをリードする両者は、常に周りの人、触れる者に刺激を与える存在であり続けている。レンジローバーとの時間に終始納得の表情であった村松氏は、ドライビングフィールのみならず自身との共通点を見出していたに違いない。
そしてその充実感はこのクルマをガレージにおさめる世界中の多くの成功者やリーダーが得るものと同じであろう。
RANGE ROVER SV PHEV P550e
全長×全幅×全高:5,060×2,005×1,870mm
ホイールベース:2,995mm
動力システム:プラグインハイブリッド 直6 3.0L+モーター
システム最高出力:550PS
¥28,070,000〜
村松氏率いるNAKED, INC.はレストラン事業にも力を入れている。写真は代々木公園のレストラン「TREE by NAKED yoyogi park」(ツリーバイネイキッド ヨヨギパーク)より。