Montblanc watches managing director: Laurent Lecamp Interview

新しいイノベーションと
“完全”を追い求める精神

April 2021

日本からはオンラインにて披露された国際時計見本市、Watches & Wonders Genevaで、モンブランは今年も意欲的な新作を多数発表。

今年の1月に同社のウォッチ部門ディレクターに就任したばかりのローラン・レカン氏にインタビューした。

 

 

Laurent Lecamp

ローラン・レカン

2001年、LVMHでスイスのワイン&スピリッツのブランドマネージャーとしてキャリアをスタート。その後、時計業界でさまざまな起業家的およびリーダーシップ的な役割を果たす。2010年には自身の時計ブランド、サイラス(CyrusWatches)を共同設立。2014年にカールF.ブヘラに入社し、セールス担当エグゼクティブバイスプレジデントに就任。2016年からは同社の日本法人CEOも兼任。2021年1月、モンブラン ウォッチ部門ディレクターに就任。

 

 

 

————多数の新作を発表されましたが、特にリミテッドエディションモデルが多く印象的でした。

 

「私は前職で関わりがあった関係で幾度となく日本を訪れていますが、日本で体験したお話をさせてください。ある日本の百貨店を歩いていると、美味しそうな匂いを漂わせるパン屋さんがあり、夕方5時に行列ができていました。なぜ並んでいるのか尋ねると、数量限定のパンが販売されるからとのこと。日本の方々というのは、そのような限定品の価値を特に理解されていると感じています。稀な材料を使ったエクスクルーシブな商品というのは、唯一無二の価値がある。だから並ぶ。時計も同じだと思うんです。やはり特殊な部品や材料というものを使って作られたタイムピースはユニークであり、そこに価値があるのです」

 

 

————今年はそのようなエクスクルーシブな新作ばかりということですね。

 

「リミテッドエディションのモデルを充実させた理由はたくさんありますが、共通する特徴としては、新しいイノベーションを取り入れているという点があります。これらはまず開発に時間がかかりますし、非常に難しい技術ばかりです。限定モデルであっても、品質を保たなければなりません。モンブランのヴィルレの工房では、ムーブメントの組み立ても一人の時計師がひとつの時計を担当します。ですから製造にも時間もかかります。数が少ないからこそ特別なタイムピースとして価値が高まるのです」

 

 

————ではそういう意味で、2021年のモンブランは、“新しいイノベーションを打ち出した年”と言えるでしょうか。

 

「そのように言えると思います。どれも新時代のイノベーションと結びついておりますし、またストーリーとも結びついたものとなっています」

 

 

————『モンブラン 1858 ジオスフェール リミテッドエディション1858』には、探検家の精神と壮大なストーリーが込められていますね。

 

「モンブランのマークメーカー、ラインホルト・メスナーが2004年に成し遂げた、2000km、5週間におよぶ単独でのゴビ砂漠横断という快挙への敬意を込めた時計です。時計というより、ひとつの本といえるかもしれません。チャプター1は、色についての物語。ベゼル、ダイヤル、ハンド、ケースすべての色がゴビ砂漠の色彩で構成されています。彼がゴビ砂漠を横断するにあたり観察した岩や砂のカラースキームが取り入れられています」

 

 

『モンブラン 1858 ジオスフェール リミテッドエディション1858』は、ダイヤルに回転する北半球と南半球を配置し、異なるタイムゾーンを直感的に読み取ることができる独創的なワールドタイム コンプリケーションモデル。各半球に4つずつ赤い点があり、ラインホルト・メスナーが制覇した世界最高峰の一部と、モンブランの位置を表している。世界限定1858本。自動巻き、ブロンズケース、42mm。¥781,000(予価/5月発売予定) Montblanc

 

 

 

「チャプター2は、チタン製のケースバックにあります。ゴビ砂漠の北アジアを横断するルート上のバヤンザグにある有名な『炎の崖 (フレイミング・クリフ)』を描いたユニークな彫刻がレーザーによって施されています。この絵に見られるすべてがレーザーによって生み出されています。輪郭や奥行きはもちろん、マットと光沢の仕上げ、そして色付けもレーザーで施されています。彩色しているのではなく酸化作用の度合いで色を表現しているのです。これは非常に革新的な技術であり、これだけの大きな面積に施すのは至難の技。スイスではおそらくモンブランが初めてです」

 

 

 

ケースバックにはレーザー彫刻によりゴビ砂漠の有名な場所が描かれている。日没時、炎のような赤やオレンジ色に彩られることから、アメリカの古生物学者ロイ・チャップマン・アンドリュースによって「炎の崖 (フレイミング・クリフ)」と名付けられた。伝統的なモンゴルの装飾に触発された風の模様を施した羅針図も描かれている。

 

 

 

————『モンブラン 1858 モノプッシャー クロノグラフ オリジンズ リミテッドエディション 100』でも、このレーザー彫刻技術を採用されていますね。

 

「はい。こちらはムーブメントを保護する“オフィサー”(士官用)ケースバックの蓋部分です。女神ミネルバの頭部を描いています。ケースバックを開きますと、マニュファクチュールのモノプッシャー クロノグラフキャリバー MB M16.29を見ることができます。このリミテッド エディションは、1930 年代のミリタリー モノプッシャー クロノグラフの復刻モデルで、搭載していたミネルバのキャリバー 19-09CHからも多くの点を引き継いでいます。例えば、わずかに黄みがかっているのが特徴の未加工のジャーマンシルバー(洋白)を使用していたり、1912 年に特許を取得したアイコニックなV 字型ブリッジ、コラムホイール、水平カップリング、そして18,000A/hの振動数も継承しています」

 

 

『モンブラン 1858 モノプッシャー クロノグラフ オリジンズ リミテッドエディション 100』は、モンブランの傘下であるミネルバ社が1930年代に製造していた46mmのミリタリー モノプッシャー クロノグラフを復刻したモデル。オリジナルのあらゆるディテールの意匠を再現しつつ、ケースをブロンズ製とするなど全体的にヴィンテージ風の捻りが加えられている。世界限定100本。手巻き、ブロンズケース、46mm。¥3,488,650(予価/5月発売予定) Montblanc

 

 

 

————外観についてはどのような点を引き継いでいるのでしょうか?

 

「46mmの大型のケースや、ダイヤルのスモールセコンドとミニッツ クロノグラフを持つバイコンパックスカウンター、レイルウェイミニッツトラックなどのオリジナルデザインを再現しています。一方ケース素材は、オリジナルはスチール製でしたが、今回は時間の経過とともに風合いを得られる特殊なブロンズ合金とし、スーパールミノバはベージュカラー、ストラップもブラウンのスフマートアリゲーターを採用しています。全体としてヴィンテージルックを表現しました。とにかくあらゆるディテールにこだわっています」

 

 

————日本の時計愛好家はディテールに対して追求する傾向にありますが、特に日本向けのおすすめの新作はありますか?

 

「『モンブラン ヘリテージ ピタゴール スモールセコンド リミテッドエディション 148』はいかがでしょう。こちらはケース径が39mmなので、小型を好む日本のみなさんにも特に気に入っていただけると思います。このモデルは1940年代に作られた、黄金比に基づいたムーブメントを再現したものです。角穴車にある螺旋状の模様は、『ダイヤモンドシェルフィニッシング』というもので、ヴィルレの工房で作られたムーブメントにはすべてこの装飾を施していますが、このノウハウを持つ職人はスイスでも非常に稀なんです。また細かいところですが、4時位置に非常に小さくミネルバのロゴが入っています。こういったディテールもコレクターの方の心をくすぐるポイントになっていると思います」

 

 

『モンブラン ヘリテイジ ピタゴール スモールセコンド リミテッドエディション 148』は、1948年にヴィルレの工房で開発、製造されたミネルバキャリバーNo. 48 に敬意を表したモデル。黄金比に基づいて作られたオリジナルムーブメントを再現。18KWGケースはブルーダイヤル、18KRGケースはブラウンダイヤルとなっている、世界限定各148本。手巻き、39mm。各¥2,313,300(予価/6月発売予定) Montblanc

 

 

 

————今回、まったく新しい素材を搭載したモデルも登場しましたが、どのような経緯で開発が進められたのでしょうか?

 

「『モンブラン 1858 スプリットセコンド クロノグラフ リミテッドエディション18』ですね。ライムゴールドというグリーンがかったゴールドを2年ほどかけて開発しました。なぜ開発しようと思ったかというと、ちょうど2年前にグリーンダイヤル、グリーンのNATOストラップを採用したブロンズケースのモデルを発表したのですが、そのときにグリーンのゴールドもつくってみようというアイデアが出たんです」

 

 

『モンブラン 1858 スプリットセコンド クロノグラフ リミテッドエディション18』は、淡い黄みがかった緑色に変化する濃い金色であることから「ライムゴールド」と名付けた合金素材を初採用したモデル。文字盤の外周には、ミネルバのクロノグラフに共通する機能であるテレメータースケール(雷などの目に見える現象と聞こえる現象の距離を測定できる)を搭載。独特のヴィンテージの雰囲気にストラップと調和したグリーンのカラーリングが相まって、唯一無二の個性を放つ。世界限定18本。手巻き、18Kライムゴールドケース、38.4mm。€49,500(時価/5月発売予定) Montblanc

 

 

 

————近年時計業界ではカラーダイヤル、特にグリーンは人気を博している印象があります。

 

「先ほど述べたように、モンブランは既に過去にグリーンの時計を発表しています。トレンドを生み出した側とまで言えるとは思っていませんが、既にその動きを取り入れていたのは事実です。時計のカラーとして売れてきているのは、ホワイト、ブラックに続いて、ブルーが流行し、それからグリーンに対する興味が高まってきていると思います」

 

 

————今後はどのような時計が人気になるとお考えですか?

 

「誰もが予想もしなかったような2020年の暗い経験を経て、人々は生活の中で彩りをもたらし、ポジティブなエネルギーをもらいたいと考えています。そういう意味でグリーンというカラーリングはますます人気が出るのではないかと思っています。また、今後はあくまでクラシックでありながらも、いかに差異を出すか、他との違いを打ち出していくかということになると思います」

 

 

————モンブラン ウォッチ部門ディレクターとして今後どのように取り組んでいこうとお考えでしょうか?

 

「私が京都の龍安寺を訪れた時の話をさせてください。龍安寺の石庭は、砂が海、石が山を表していて、石は15あります。面白いことにこれらの石は、どの角度からみても14しか見えません。必ずひとつの石が隠れてしまうように配置されています。東洋で15という数字は“完全”を表す数字。つまりこの庭は“不完全”な庭です。常に足りないものを見つめ、次を探さなければならない、そして今を感謝することを忘れてはならないというメッセージが込められています。以来、それが私のビジネスにおける哲学。モンブランの革新技術は、ブランドの探求精神に即したものといえるでしょう。これからも15番目の石を常に探し求めていきたいと思います」

 

 

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