HOW TO WEAR WHITE IN WINTER
冬のホワイトの着こなし方
December 2022
「レイバー・デーの後に白を着用してはならない」という古臭い約束は忘れてほしい。ここでは冬のワードローブにちょっとした輝きをもたらす白の使い方をご紹介しよう。
by CHRISTIAN BARKER
英国ウェールズの街ヘイ・オン・ワイで開催された文学祭ヘイ・フェスティバルに参加した作家のトム・ウルフ。
作家のトム・ウルフは、一年中、頭からつま先までホワイトの服を着ていたことで有名だ。1962年にニューヨークに移り住み、『ヘラルド・トリビューン』紙に入社した際に、数枚のジャケットと変なトラウザーズしか持っていなかったのがきっかけらしい。記者はスーツ姿のほうがいいと感じた彼は、すぐにスーツが必要になった。夏だったので、ウルフは故郷のバージニア州リッチモンドで、暖かい季節に紳士たちに好まれていたホワイトのスーツを選んだのだ。
秋の紅葉の季節になったが、彼はその白いスーツが冬でも着られるほど厚手であることに気づき、そのまま着続けた。薄給のジャーナリストとして、仕立屋に行く余裕がなく、それがやがて生涯の習慣となったのだ。
ウルフを見習えとはいわない。しかし、9月の第1月曜日に当たるレイバー・デー(労働者の日)の後にホワイトの服を着ることを禁止するのは、アメリカの禁酒法と同じようにナンセンスなことだ(とはいえ、白い服が好きな人は、カベルネとカンパリは避けたほうがいいだろう)。冬のホワイトは素晴らしい効果を発揮する。ただ、その使い方には注意が必要だ。
ウルフがホワイトを着た理由は貧しさ故だったが、明るい色の服を着ることは、もともとは富の象徴だった。一世紀以上前は、汚れたら召使いに渡して洗濯し、着替えられるだけの服を持っていたのは富裕層だけだった。貧しい人々は1〜2着の服しかなく、洗濯する機会もあまりなかった。日々の仕事の汚れが目立たぬように、暗い色を身に着けるしかなかったのだ。
サザビーズ・インターナショナル・リアルティ・フランス・モナコのCEOであり、自らのブランドも展開するアレキサンダー・クラフトは、冬に着るホワイトについて昔ながらの貴族的なアプローチをとっている。
「コツは、よいクリーニング店を持つことです。真のレイキッシュ・マンは、衣服が汚れるなどという些細なことを気にしてはいけません。なんでも着たい時に、着ればいいのです」
昔は、冬に白い服を着ると“アイドル・リッチ”と言われたものだ。“面倒な仕事など、する必要がない人々”という意味である。
しかし今日、冬のワードローブに取り入れるべきシンプルな白いアイテムのいくつかは、実はワークウェアから派生したものである。例えば、クラシックなアランセーターは、今ではジーンズやネイビーブレザー、あるいはレザージャケットやコーデュロイと合わせるが、もともとは19世紀に英国の漁師たちが着ていたものだ。
また、ホワイトデニムのジーンズはどうだろうか? イタリアの巨匠アレッサンドロ・スクワルツィは、冬のホワイトデニムのお手本だ。ミリタリースタイルのカーキジャケット、チェックのシャツ、ハイキングブーツなどを組み合わせている。またネイビーやキャメルのコートにタートルネック、ブラウンのスエード製モンクストラップを合わせれば、よりスマートなルックになる。
よりフォーマルな白いトラウザーズを穿くとき、服飾評論家のアラン・フラッサーは次のような提案をする。
「ラルフ・ローレンならどうするか、考えてみてほしいのです」
フラッサーは、1980年代のニューヨークにおけるイベントでラルフ・ローレンが登場したときのことを思い出す。
「彼はツイードジャケットにクラシックなシャツとネクタイを合わせて、プリーツの入ったホワイトのフランネル・トラウザーズを穿き、モノグラムのベルベットスリッパーで仕上げていました。クラシックにひねりを加えた、ラルフならではの装いです。古き良き時代のパームビーチ風ホワイト・フランネルが彼にぴったりだと思いました」
ホワイト・フランネルのトラウザーズを作る場合、アーモリーのアラン・シーは以下のようにアドバイスする。
「かなり大胆なカラーであることに注意してください。ハイウエストのパンツに慣れている人は、ライズを少し下げてみるといいでしょう。また、オフホワイトはよりソフトな印象になることを覚えておいてください」
シーのビジネスパートナー、マーク・チョーはこう語る。
「冬のホワイトはあまり好きではありませんでしたが、アランには賛成します。オフホワイトが好ましいと思います」
チョーは白いフランネルのトラウザーズはあまり好きではないようだ。
「糸くずや汚れをたくさん拾ってしまう。だから白なら、ホワイトジーンズのほうが好きです。着こむほどに味が出る。少し着古した感じのホワイトジーンズは、とてもいいものです」
トラウザーズ専門店Kit Blakeのデザイナー、クリストファー・モドゥーは、「冬のホワイトは慎重に扱うべき」と語る。
「暖かく、深い色合いのホワイトを選び、明るい色のバリエーションは選ばないこと。手始めとして、重厚なモールスキンやコーデュロイのパンツなどをおすすめします。またケーブル編みのセーターもよいでしょう。でも、頭のてっぺんからつま先まで使ってはいけません」
上級者になったらクリーム色のフランネルを試してみてはどうか、とモドゥーは提案する。一方、よりコンサバな人には、アクセサリーで冬のホワイトの世界に足を踏み入れるのがいいと言う。
「ホワイトのニット手袋、スカーフ、帽子は冬の装いをリフレッシュしてくれます」
また、ウエストコートでさりげなく取り入れる方法もある。フラッサーはこう述べる。
「フランネルやウールメルトンでできたホワイトのドレスベストをチョークストライプのスーツに合わせると、上品で高級感のある装いになります。英国の元首相アンソニー・イーデン卿や、ハリウッド俳優アドルフ・マンジューの着こなしで、このスタイルを見たことがあるかもしれませんね。ホワイトのウエストコートは、クラシックなグレイやネイビーのツーピースに、華やかさを加える方法のひとつでした」
フラッサーとモドゥーはともに、アウターにおいての白を避けるよう呼びかける。モドゥーは証拠として、イースト17(90年代のボーイズグループ)のクリスマスヒットシングル『Stay Another Day』のミュージックビデオを挙げる。なるほど、その主張には説得力がある。