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鴨志田流着こなし術 Vol.15
素朴で野暮ったいツイードがいま新鮮

January 2023

ちょっと着たくらいではびくともしない粗野な雰囲気と、大自然のさまざまな色が織り成す柄のハーモニー。昔から何も変わらないツイードは、鴨志田康人氏を魅了してやまない。

 

 

 

text YUKO FUJITA

photography SETSUO SUGIYAMA

 

 

 

鴨志田康人/Yasuto Kamoshita

1957年生まれ。ビームスを経て89年、ユナイテッドアローズの設立に参画。クリエイティブ ディレクターを経て2018年よりクリエイティブ アドバイザーに就任。2008年にスタートした自身のブランド「カモシタ」が世界で人気を集めているほか、2019年からはポール・スチュアートの日本のディレクターも務めている。

 

左:80年代後半にパリで購入したアルニスのツイードジャケット、MHLのタートルネックニット、エンジニアードガーメンツのドット柄シャツ、ポール・スチュアートのジョッパーズパンツ、パラブーツの靴、レイノルズ&ケントのペッカリーグローブ。「上着にとても存在感があるので、合わせは極めてシンプルに。このツイードはインテリア用で、恐らくマギーのものだと思うんですけど、すごくフランスっぽいでしょ? この生地でまた何か作りたいのですが、もう生産されていないんですよね」。すべて property of Yasuto Kamoshita

中:「アンダイドと呼ばれる無染色のツイードは各生地メーカーが出してきていて昨今の流れになっていますが、マーリング&エヴァンスのツイードを使用したこちらのコートはまさにそれ。シンプルながら今っぽくいいモダンさがあって、群を抜いてカッコいいですよね。全体をナチュラルさのある優しいトーンで組み、中はニットのセットアップでリラックス感を出しています」。コート United Arrows、ニットパーカ、ニットパンツ both by Sovereign / all by United Arrows Roppongi Hills コート、ジャケット property of Yasuto Kamoshita

右:「アクアスキュータムのバルマカーンコートは80年代にロンドンで古着として購入したもので、相当古いものです。当時はホワイトジーンズにオールデンを合わせて、サンジェルマンを散歩しているような気分で楽しんでいました。しばらくタンスで眠っていましたが、今またそんな気分で着たくなっています」。トラウザーズはアンダーソン&シェパード ハバダッシャリーで購入したもの。タートルネックニット H Beauty & Youth コート、トラウザーズ property of Yasuto Kamoshita

 

 

 

 

 織りが生み出す素朴で荒々しい素材感と、大自然の色から取り込んだ独特の色柄を楽しめるところ、ハリスやドニゴール、シェットランドやチェビオットなど、地域によって個性が異なり、さまざまなタイプのものを楽しめるところに、ツイードの魅力があると語る鴨志田氏。

 

「ツイードは重たい印象になりがちな素材ですから、いつも言っていることですけれど、重たい素材をいかに軽やかな印象に見せるか、そこを心がけながら着るようにしています。ただ、ツイードの持ち味は、よくも悪くも野暮ったいところにあります。それを完全に消してしまうのではなく、上手く楽しんで程よく醸し出せるくらいの感じが好きですね。その塩梅が難しくてハードルは高めですけど、そこを着こなすのが楽しさでもあります」

 

 鴨志田氏らしいのは、ツイードでもスーツで仕立てていることが多い点だ。

 

「そうなんです。パンツにするのに耐えられない生地でしたらジャケット単体で作るしかありませんが、そうでなければセットアップで仕立てるようにしています。そうすればパンツ単体でも使えますから。実際にそういう使い方をよくしていて、何かと汎用性が高まって重宝するんですよね。ツイードは色や柄が個性的できれいなぶん、パンツがあるとより楽しみが広がるので、皆さんにもぜひオススメしたいですね。非常にタフで、経年変化を楽しめるという点でもサステナブルですし、今の時代にも合っていますから」

 

 

左:ソブリンのツイードジャケット、ジョン スメドレーのタートルネックニット、アンダーソン&シェパード ハバダッシャリーのトラウザーズ、ポール・スチュアートのブーツ。それにジョシュア エリスのカシミアマフラーが差し色になっている。ジャケットの生地はドーメルのスポーテックスがベースで、格子柄を大きくしたUA別注仕様。「生地の美しい色柄にひと目惚れしました。大きな格子が昔ながらの雰囲気でいいんですよね」。ジャケット Sovereign、マフラー Joshua Ellis / both by United Arrows Roppongi Hills

中:2002年にミラノのジャンニ カンパーニャで仕立てた、ややソフトめのチェビオットツイードのスーツ、サルトリア アットリーニのカシミアタイ、ポール・スチュアートのシャンブレーシャツ、エトロのチーフ、アルテのカシミアマフラーという合わせ。「ブリティッシュのカントリースーツの象徴的な色であるオリーブグリーンには昔からずっと憧れがありました。長らく着ていなかったのですが、そろそろこういうのがカッコいいのでは、という気分になってきて、今年はたくさん活躍してくれそうです」。すべて property of Yasuto Kamohsita

右:シェットランドヤーンを使用し、イタリアのミルで織り上げたツイード生地によるセットアップスーツ、それに合わせたシャツとタイはポール・スチュアート。「非常に目付けのある生地で、スコットランド以上にスコットランドらしい(笑)。ポール・スチュアートの視点でスコットランドを都会的に解釈した装い、とでもいった感じでしょうか。セットアップのトラウザーズは単品でも使えて重宝しています」。チーフ Fratelli Luigi / United Arrows Roppongi Hills スーツ、シャツ、タイ property of Yasuto Kamoshita

 

 

THE RAKE JAPAN EDITION issue49