Hilton KYOTO

繁華街なのにリゾート。「ヒルトン京都」という新しい京都の楽しみ方

February 2026

京都を訪れる理由はそれぞれだ。寺社仏閣を巡ることが目当ての人もいれば、仕事のついでにちょっと観光でもしようかなという人もいるだろう。食を目的に京都を目指す人もいる。私もそのクチだ。食いしん坊の私にとって旅と食は切り離せない。が、近年、京都を訪れる目的がもうひとつ増えた。「ホテル滞在そのものを楽しむ」という歓びを知ってしまったのだ。

 

 

text aya hasegawa

 

 

「ヒルトン京都」。館内には京都ならではのカルチャーが散りばめられている。

 

 

 

 ここ数年、京都には新しいホテルが続々とオープンしている。今回、訪れたのは、2024年9月、河原町三条に開業した「ヒルトン京都」。京都では初となる、ヒルトンのフラッグシップ・ブランド「ヒルトン・ホテルズ&リゾーツ」のホテルだ。「これは行かねばならない」と誰に頼まれたわけでもないのに勝手に使命感を抱いていたのだが、開業から約1年経ちようやくその機会を得た。

 

 特筆すべきはその立地だ。京都駅から車で約15分。地下鉄なら京都市役所前駅から徒歩約2分と観光にも外食にもビジネスにもこれほど便利な場所はなかなかない。

 

 


デザインのテーマは「ORIMONO(織物)」。フロント背後の格子は、京都の織物から着想を得ているそう。

 

 

 

 エントランスをくぐると、5階まで吹き抜けの壮大なロビー空間が目に飛び込んできた。コンセプトは「京都SYNAPSE(シナプス)」。歴史と現代、伝統と革新──京都という街が持つ多面的な魅力をつなぎ、訪れるゲストを新しい体験へと誘うという想いを込めた。

 

 

ロビーの真ん中で存在感を放つのは、宮城県で採石された伊達冠石のオブジェ。蹲(つくばい)をイメージしたものだ。

 

 

 

 空間デザイナーの故・橋本夕紀夫氏が手掛けた空間には、格子模様や西陣織を象徴するモチーフが散りばめられている。フロント前には、大きな石が鎮座していた。日常から非日常へと切り替える──そんな精神的な「結界」の役割を担っているといるのだとか。日常と非日常を行き来できる、スペシャルな「扉」を手に入れたようで胸が高鳴った。

 

 

1階エレベーター前に設置された“はた織り機”のオブジェ。

 

 

7階のエレベーターホールの上には、元禄元(1688)年から織物業を営む⻄陣織の⽼舗、「細尾」で設えた西陣織の生地が使用されている。

 

 

 

 客室へとアクセスするエレベーターホールには、西陣織を手織りする際に実際に使われていたはた織り機を使ったアートが展示されていた。京都の過去と現代の映像が「カッタン」という織機の音とともに流れている。伝統技術の物語の世界に足を踏み入れるかのような演出は、このホテルが単なる宿泊施設ではなく、京都文化の発信地でもあることを強く印象づける。

 

 

障子の窓が作り出す柔らかな光、京町家をイメージした設え、西陣織のヘッドボードなど、客室の中だけでも京都の風情を感じることができる。

 

 

130室のうち10室がスイートだ。

 

 

 

 客室は17タイプ・5カテゴリー、全313室。スタンダードでも約40平方メートルというゆとりある広さを確保している。壁面には西陣織のタペストリーが飾られ、窓には障子が配されるなど、快適性を確保した上で、しっかりと京都の情緒が感じられるのがうれしい。ベッドのマットレスはサータ製、羽毛枕は西川製で、いずれもヒルトン京都のために作られたオリジナルだ。案内してくれたスタッフが、絨毯の模様は京都の地図を表現しているとのことを教えてくれた。水が流れているように見えるのが鴨川だ。

 

 

国内初となるヒルトンのスパブランド「エフォリア・スパ」。

 

 

 

 今回の滞在で楽しみにしていたのが、国内初となるヒルトンのオリジナルスパブランドである「エフォリア・スパ」でのトリートメントだ。 “奥の間”’をイメージした静謐な空間では「アロマセラピートリートメント」や、化粧品は海外高級スパブランド、クリスチャン フロリアン製の商材を使った「フェイシャル」などの施術を用意している。今回は、すでに同ホテルを訪れた友人が、「ツボ押しを含むトリートメントが凝り固まったカラダに効く!」と絶賛していた「アロマセラピートリートメント」をチョイスした。施術には京都産の植物や果物を使用したエッセンシャルオイルを使用する。ラベンダー・京都産クロモジ・京都産ヒノキをブレンドした「ハーモニー」、京夏みかん・京都柚子・ペパーミントの「エナジャイズ」、北山杉・ネロリ・イランイランの「リジュネレイト」という魅惑的なラインナップの中から、迷った末になんだか美味しそうな「エナジャイズ」を選んだ。担当してくれたセラピストによれば、香りを嗅いでピンと来たものが、今カラダが求めているものだという。

 

 

 

「エグゼクティブラウンジ」。エグゼクティブフロアとスイートに宿泊するゲストが利用できる。四季折々の京都の風景が凝縮される入口の「坪庭」は、150年以上の歴史を誇る植彌加藤造園が手がけた。

 

 

今回は「エグゼクティブラウンジ」で腰を据えてしまったため、足を運ぶ機会がなかったが、次回は、京都の街並みと共に鴨川や東山の風景を一望できる屋上の「クラウドネスト・ルーフトップバー」(季節営業)にもぜひ立ち寄りたい。

 

 

 

 施術の後は客室でごろんとしたいところだが、そうも言っていられない(笑)。今回は、9階の「エグゼクティブラウンジ」にアクセスできる客室を予約している。ちょうどカクテルタイム(17:30〜19:30)が始まる時間帯だ。ここで喉を潤すとしよう。ラウンジのエントランスには植彌加藤造園の職人が手がけた坪庭がある。鴨川や北山、保津峡など京都の名所を縮景として表現したその坪庭は、どこか誇らしげにそこに存在していた。

 

「エグゼクティブラウンジ」は縦長に設計されていて、奥へ進むにつれて印象が変わる。これは京都の町屋を意識しているのだとか。伝統的な左官技術を用いたアートウォールや、和紙を用いた照明がやわらかな陰影を生み出し、日本らしい「陰影礼賛」の美学を体現していた。

 

 

ヒルトン総料理長を務めるマリアンジェラ・ルッジェーロさん。日本国内におけるヒルトン初の女性総料理長だ。

 

 

 

 軽くアペロを楽しんだら、2025年秋に新たなコンセプトでオープンした「オステリア イタリアーナ セブン・エンバーズ」へと向かいたい。総料理長のマリアンジェラ・ルッジェーロさんは、イタリア政府から「イタリア料理のアンバサダー」として称号を授与された、新進気鋭の女性シェフだ。テーマは、「Soul of Italy × Elegance of Kyoto」。彼女の家庭に伝わる「ファミリーレシピ」をベースとした、京丹波高原豚のラグーを用いたパスタ「カヴァテッリ」や、淡路産モッツァレラを使用した揚げピザなど、本場の技法と地元の食材が織りなす一皿を堪能できる。オーセンティックイタリアンでありながら、彼女ならではのエスプリが加わった新感覚の料理は、美味しいのはもちろんエキサイティングだ。「次はどんな料理が出てくるのだろう」と心が躍る。聞けば、ほぼすべての料理を、オープンキッチンの窯を使って調理しているのだとか。ここでしか食べることのできない唯一無二のイタリア料理は、京都のクラフトビールや自然派ワインとの相性も抜群だ。

 

 

解放感のある空間でいただく朝食は格別。京都らしいおばんざいはもちろん、ホテル内で焼き上げるペストリー類も人気だ。

 

 

 

 オールデイダイニング「テオリ」の朝食ビュッフェにもときめいた。料理が80種以上、ドリンクが約15種と種類が豊富で、一品一品の質も高い。汲み上げ湯葉や京漬物、魚の西京味噌焼き、万願寺の甘辛煮など、京都ならではのメニューも数多くラインナップしている。1週間連続で通っても楽しめそうな気がする。

 

「オステリア イタリアーナ セブン・エンバーズ」の料理、「テオリ」での朝食、クラブフロアでのアフタヌーンティーやカクテルタイムと、続々と登場する“美味しいものたち”のオンパレードに抗うのはなかなか困難だが心配は無用だ。地下1階には、全長18メートル、4レーンを備えていた温水プールがある。また、同フロアにあるテクノジム製の最新マシンを揃えたフィットネスセンターは24時間利用可能だ。食べた分は消費すればいい(笑)。

 

 

地下1階にある屋内プール。水面に淡い光が反射する様子がエレガントだ。

 

 

 

 繁華街にありながら、一歩足を踏み入れれば京都の歴史と文化に包まれ、そしてリゾート感も味わえる「ヒルトン京都」。美食家の胃袋を満足させる「食」も充実している。観光やビジネスはもちろん、お籠り滞在にもその実力を遺憾なく発揮してくれる懐の深さは「さすが」だ。親孝行旅行のステイ先としてもお勧めしたい。

 

 

ヒルトン京都

京都府京都市中京区下丸屋町416

TEL.075-212-8007

https://kyoto.hiltonjapan.co.jp/

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