GODS of CREATION: Toshihiro Morimoto, The Leather Tailor

【神々の道具と作りしもの】森元 俊宏氏:日本にも遂に出現!大注目のレザーテーラー

May 2025

東京・清澄白河にアトリエを構え、ビスポークとメイド トゥ メジャーのレザーウェアを手がける森元氏。テーラード仕立てが随所に生きた一着は必見だ。

 

 

text hiromitsu kosone

photography kenichiro higa

 

 

森元 俊宏/Toshihiro Morimoto

1987年生まれ。伊勢丹新宿店のメイド トゥ メジャーコーナーでスーツのフィッターとして勤務したのち、2018年に自身の名を冠したオーダーメイドのレザーウェアブランドを始動。現在はMTMと仮縫いつきのビスポークを展開し、型紙製作、裁断、縫製などの主要工程を自身で行う。

 

 

 

 本棚を見ればその人がわかるというが、森元氏のアトリエに並ぶ本を見て、思わず心惹かれてしまった。シアーズ・ローバックのカタログやフランソワ・コラーの写真集に交じるマティスの画集。壁にはピカソの「青い鳩」が写された葉書が無造作に貼られている。レザー職人=マッチョな豪傑という固定観念を、言葉を交わさずして覆された気分である。そして彼が作る服も、“革ジャン”の常識を超越した出来栄えだ。

 

 圧倒されるのは、その佇まい。精緻な縫製もさることながら、まるで上等なスーツのようにふくよかな立体美が目を奪う。それもそのはず、彼の服には、イセ込みをはじめとするテーラリングの技法が満載されているのだ。

 

「襟は首に吸い付くように設計していますし、肩線をカーブさせて前肩に作っています。肩先の革が重なるところには縫い代に切り込みを入れてショルダーラインを整えたりも。手をかけるほど、全体の仕上がりに味が出る。だから妥協できないのです」と森元氏。THE RAKE読者なら、心から共感できる言葉だろう。

 

 

30~40年代のアメリカンヴィンテージに想を得つつ、型紙の設計は根本的に変えているという森元氏のレザーウェア。しなやかにロールした襟がエレガンスを漂わせている。MTMで納期は約6カ月~。¥286,000~ Morimoto(モリモト info@morimoto-est2018.com)

 

 

製作は型紙設計から自身で行う。実はもともと、三越伊勢丹でオーダースーツのフィッターを務めていた森元氏。そのときに学んだノウハウがあるからこそ、ここまでテーラード・マインドなレザーウェアを作れるというわけだ。

 

 

各所の縫合部は、ミシンをかける前に革の端をすいて薄くする。これによって縫い上がりが美しくなるという。ちなみに指で触れれば1㎜以下の厚みの違いまでわかるそうだ。

 

 

Morimotoの魅力は、モダンで優美な革の発色にもある。日本のタンナーに特注して色出ししたものも多いそうだ。近年は鹿革などのジビエレザーにも注目しているという。ちなみに、顧客の間で人気なのはスエードだそう。

 

 

MTMは13型を展開。もちろんビスポークならゼロからデザインを起こせる。MTMのカーコート ¥319,000~ Morimoto(モリモト info@morimoto-est2018.com)

 

 

ローラーやハンマーを駆使して、丹念にクセづけをしながら仕立てる。アイロンによるクセとりができないレザーウェアを立体的に仕立てるには、想像以上の手間が必要だ。

 

 

縫い終わりの返し縫い部分は、直前の縫い目と同じ針穴に糸を通していく。極力革に穴を開けないための工夫だ。