FERRUCCIO SERAFINI “Zaino”
ローマの90歳のじっちゃんが手がけた奇跡のリュック
January 2024
text and photography yuko fujita
フラップポケットの開け閉めを含め、お世辞にも機能的とはいえないが、この鞄ならイタリアでスリに遭うこともないだろう(笑)。そして何よりこのクラシックな顔つきがいい。しなやかさを備えた牛革の型押しタイプは黒と茶の2色展開。コットンツイルのライニング付き。¥107,800。ほかに、非常にタフな成牛の革を用いたタイプもあり、そちらはアンラインド仕様で茶の1色展開。¥89,100 Ferruccio Serafni / Afterhours
イタリアの街を歩いていると、3ポケットのレザーリュックをもった年配の紳士をたまに見かける。それらは大抵、かつてイタリアの街のあちこちにあった革鞄工房のマエストロが手がけたもので、イタリアでは昔から広く愛されているデザインである。ローマの古着屋を巡ると、使い込んでアジの出た同リュックとたまに遭遇するが、町の鞄工房がすっかり姿を消してしまった今日、当たり前にあったそれらも、作り続けている職人を見つけるのはすっかり困難になってしまった。
9歳で鞄作りの世界に入り、90歳になってなお現役で革鞄を作り続けているフェッルッチオ・セラフィーニ氏は、そのレザーリュックを今も手がける数少ないマエストロだ。本来、茶の成牛の革を用いるのが定番だが、こちらは柔らかな型押しの牛革を用いており、今のファッションにも合わせやすい洗練を纏っている。
2009年、素晴らしい腕をもったマエストロとしてローマ市長から表彰されている“じっちゃん”のリュック、手に入るうちにぜひ手に取ってほしい。
今も毎朝工房にやってきて、午前中のみ仕事をこなすフェッルッチオ・セラフィーニ氏。娘婿のルイージ・スカンダーレ氏が鞄職人として一人前に育ったのが何より嬉しいという。