Fashionista’s Crush
ファッショニスタの愛するクルマ
September 2017
ファッションを愛する洒落者たちは、クルマに対しても、独自の視点を持っていることが多い。彼らにとってクルマとは、あくまでもファッションの一部である。それは自らのテイストを表現する道具であり、コートの外側に着る、大きなアウターなのだ。
そこで世界を代表するファッショニスタに、彼らの愛車と選んだ理由を聞いてみた。馬力やトルクなどのスペックで、クルマを語るべき時代が終わった今、彼らの審美眼を、われわれも大いに参考にするべきだろう。
Case 1
Jeremy Hackett ×Aston Martin V12 Vantage S Roadster
英国を代表するブランド、『ハケットロンドン』のファウンダー、デザイナーにして現会長のジェレミー・ハケット氏。“ミスター・クラシック”の異名を持つ彼のスタイルは、あくまでもブリティッシュ、そしてエレガントだ。そんな彼が選んだのは、英国の誇りとも言える名車、アストンマーティンである。ジェームス・ボンドが愛したボンド・カーとして、あまりにも有名なブランドだ。
Aston Martin V12 Vantage S Roadsterは、シリーズのトップに君臨するモデルで、V12エンジンを搭載し、最高出力573ps、最大トルク620Nm、最高速度323km/hを誇るモンスターだ。しかし、イタリア勢と比べると、その佇まいはあくまでもジェントル。スペックは完全にスーパーカーのそれであるにもかかわらず、アンダーステイトメントなところが、実にハケット的、そしてイギリス的だ。
アストンマーティン www.astonmartin.com/ja
Case 2
Brunello Cucinelli × Bentley Continental GT
一代で世界的ブランド、ブルネロ クチネリを築き上げたカリスマ的デザイナー。素晴らしい品質のカシミアなどを使ったコレクションは、独自の世界観に溢れている。イタリア、ソロメオ村に本社を置き、一時は廃墟だった村を、見事に甦らせたことでも知られる。郷土愛に溢れた、実にイタリア的な経営者である。しかしその愛車は、英国車、ドイツ車が多く、中でも一番のお気に入りはベントレーである。
「ベントレーは世界で一番美しいクルマだと思っています」と、ベタ褒めだ。
コンチネンタルGTは、ベントレーを代表するクーペスタイルのグランツーリスモで、超弩級の性能もさることながら、クラフツマンシップに溢れた内装は、他ブランドでは決してマネの出来ないものである。クチネリ氏のベントレーは、外装はグレイ、内装はパナマ色。センスのよさが際立っている。
ベントレー モーターズ www.bentleymotors.jp
Case 3
Lapo Elkaan × Fiat 500
フィアット・グループの御曹司(問題児?)であり、イタリアを代表するセレブリティのラポ・エルカーン。数々のスキャンダルはともかく、祖父ジャンニ・アニエッリ譲りのファッション・センスとクルマに対する趣味のよさは、間違いなく超一流だ。
彼の立場ならフェラーリでも、マセラティでもお好みのままだろうが、最も愛しているのは、自ら開発にも携わった小型車、フィアット500(チンクチェント)らしい。
「とにかくズバ抜けたクルマなんだ」と語っている通り、フィアット500を自ら運転している姿が、よくパパラッチされている。しかしそこはラポだけあって、ハウンドトゥースやチョークストライプなど、まるでスーツ地のような模様にラッピングして、他とは一線を画しているのだ。
フィアット www.fiat-auto.co.jp
Case 4
Kean Etro × Land Rover Discovery
イタリアの老舗、エトロのクリエイティブ・ディレクター、キーン・エトロについては、彼を知る人すべてが“天才”だと口を揃える。何物に対しても独自の美意識を持ち、世界中の芸術・文化からインスピレーションを得ている。(例えば、一時は日本のアイヌの伝統柄に夢中になっていた)
そんな彼の愛車は、ランドローバー・ディスカバリー。ミドルサイズのSUVのベンチマークとして、根強い人気を誇る一台だ。昨今のSUVはファッション性の高さで選ばれることが多いが、キーンがこのクルマを選んだ理由は、純粋に「山で仕事をしたり、荷物を運ぶために必要だから」というもの。
「石や木を運んでいてシートを破いたので、その部分にはバンドエイドを貼ってある」そうだ。
ランドローバー www.landrover.co.jp/index.html