FARO Begins a New Chapter with Chef Mizuki Yamaguchi
銀座「FARO」に新シェフ、山口瑞樹氏が就任。加藤峰子氏とともに踏み出す新たな一歩
May 2026
東京銀座資生堂ビルの10階に位置するイノベーティブイタリアン「FARO」は、2018年の大きなコンセプト刷新以降、多くのフーディたちを魅了し続けてきた。初代の能田耕太郎氏、能田氏の元で開業時からファロを支えてきた浜本拓晃氏に続き、今年バトンを受け取ったのが若干31歳の山口瑞樹シェフだ。自身が慣れ親しんできた山菜や野草といった日本の食文化を発信する山口シェフの料理、そして加藤峰子氏によるデザートとともに歩み出した新生FAROの魅力に迫る。
text yukina tokida
美味しいものを、大切な人たちと食べる。最近の私にとって、それは人生の大きな楽しみのひとつだ。だから常に新しいお店も探し続けているし、行きつけのお店にも通い続けている。またそれと同時に、毎日は叶わずとも、時折、上質なレストランを訪れるようにもしている。理由は単純で、大きな刺激になるから。最近訪れたなかで強い印象を与えてくれたのが、今年新たなシェフにバトンタッチをした銀座の「FARO」だ。
床から天井までの大きな窓と、澄みわたるブルーと白のインテリアが印象的な空間に、一歩足を踏み入れるだけで、きゅっと身が引き締まる。けれど、迎えてくれるスタッフの笑顔は驚くほどあたたかい。凛とした空間でありながら、どこか肩の力を抜かせてくれる懐の深さに、誰もが自ずと料理への期待が高まるだろう。
同店は、料理専属のシェフとデザート専属のパティシエの2名体制が特徴のひとつ。「どんな背景の人でも同じ食卓を囲める」という思想のもと、常にプラントベースという選択肢も含めたコース料理を提供している。
また、食材の調達にも徹底した理念が貫かれている。日本の在来植物や天然素材を優先して活用するだけでなく、アニマルウェルフェアの理念を共有する生産者と直接つながり、完全放牧牛や山地酪農による乳製品、平飼い卵、未利用魚などを採用。オーガニック食材も積極的に仕入れることで、持続可能なガストロノミーを実践している。
さらに、器ひとつをとっても、その背景には作家の姿が見えるものばかり。破損したとしても金継ぎによって修復して使い続けるなど、循環と継承の文化を尊重している。まさに、日本が誇るべきレストランのひとつなのだ。
当日のコースの中から、いくつかのハイライトをご紹介したい。まずは山口シェフを象徴する一皿である、山女魚(ヤマメ)を使った前菜。養殖の山女魚を賽の目に切り、タルタルに仕立てた上に、こごみやわらびをはじめとするさまざまな山菜やスナップエンドウのサラダを重ね、仕上げに黒文字のパウダーを振りかける。油ののった山女魚の旨みと、山菜のほろ苦さ、そして多彩な食感に感動するだろう。季節ごとにマイナーチェンジをしながら通年で提供されるという。
そして、メダイを使った魚料理は、皮目をパリッと焼き上げつつ内側はほどよくレアな仕上がり。筍も見事に香ばしく、付け合わせの筍の出汁、魚の出汁、山人参などを合わせたソースとの相性も抜群だった。
肉料理は、七面鳥の異なる部位を使用した一皿だった。胸の部分はローストし、モモは食感や風味の違いも楽しめるようにコンフィに。それぞれに異なるソースが合わせられ、レモンのクリーム、蕗のとう、ポロネギ、アスパラガスなどの付け合わせとのコンビネーションも、完璧といっていい完成度だった。
加藤峰子氏によるデザートもまた、これまで通りの揺るぎない完成度で、コースの余韻を美しく引き受けていた。見た目の美しさに心を奪われ、口に運ぶと、その味わいにもう一度驚かされる。山口シェフの料理と加藤氏のデザートには、食材の扱いや香りの重ね方において、いくつか呼応するポイントも見えた。それすらも新たな楽しみに変えてくれる、新生FAROならではの一連のコース体験だった。
新生FAROのコースは、繊細でいて力強く、軽やかなのに味わい深い。さりげなく見えて、すべてのバランスが緻密に計算されている。日本を代表するサステナブルガストロノミー「FARO」が、山口シェフを迎えたいま、これからどのような進化を見せてくれるのか。再訪が楽しみでならない。
FARO
東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル10階
TEL. 0120-862-150


















