DISCOVER UAE AT EXPO2025 OSAKA, KANSAI, JAPAN

五感で味わうオアシス──大阪・関西万博2025『UAE』パビリオン

September 2025

大阪・関西万博2025の会場で、ひときわ異国情緒あふれる存在感を放つのがアラブ首長国連邦(UAE)パビリオン。テーマは「Earth to Ether(大地から天空へ)」。高くそびえるナツメヤシから作られた柱や、砂漠のオアシスを思わせる香り、伝統料理の味わいなど、五感を通じてUAEの文化と未来を体感できる空間が広がっている。

 

 

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柱の森に迎えられる“現代のオアシス”

 

 エントランスを抜けると、訪問者を出迎えるのは高さ最大16メートルにも及ぶナツメヤシの葉脈を束ねた柱。90本が立ち並ぶ光景は圧巻で、それぞれが異なる表情を持ち、自然素材ならではの温もりを伝えてくれる。麻で織られたカーペットや、香り立つナツメヤシの葉のアロマが漂い、足を踏み入れた瞬間から「砂漠のオアシス」に迷い込んだかのような感覚に誘われる。

 

 伝統的なエミラティ建築様式「アリーシュ」を再解釈したナツメヤシの柱は、日本企業の協力も得て実現したものだ。ナツメヤシというUAEの象徴的な素材に、日本の技術が融合することで生まれた新しい形のアーキテクチャは、両国の絆を象徴している。

 

 

陽光が差し込むその下は、静けさと地よさに包まれた“現代のオアシス”。

 

 

 

伝統と革新を知る展示

 

 館内には、UAEの歴史と文化を物語る展示が点在する。かつて真珠産業が盛んだった時代に潜水士が用いた、亀の甲羅や羊の骨で作られる鼻クリップ(フェッタム)のレプリカや、サフランやカルダモンを加えたアラビアコーヒーのポット(ダッラ)の展示は、素朴ながらも生活に根ざした知恵を伝える。

 

 

真珠採取のダイバーたちが鼻から海水が入るのを防ぐために使用した鼻クリップ「フェッタム」のレプリカ。

 

 

左は沈香などのお香を焚くための伝統工芸品。右は客に振る舞うガフワ(アラビアコーヒー)を淹れるためのダッラ。

 

 

かつてエミラティの男性たちが腰に携えていたハンジャル(湾曲したケースに入れた短剣)。

 

 

 

 一方、未来にも視線を向ける。宇宙探査や医療、持続可能性といったテーマが、インスタレーションや映像を通じて紹介され、伝統とテクノロジーが響き合う構成になっている。

 

 

ヤシの葉から作る伝統技術(コース)で編まれたロケット。その周りにタッチパネルが設置され、宇宙開発について学ぶことができる。

 

 

クリーンエネルギーの新的な取り組みなど、どのように持続可能な未来の先導役となっているかなどを紹介。

 

 

 

若き世代が導く物語

 

 UAEパビリオンの案内役を務めるのは「ユースアンバサダー」と呼ばれる若者たちだ。UAE出身者に加え、日本人を含む多国籍チームで構成されており、来場者に向けてさまざまな言語でストーリーを伝えてくれる。

 

 

UAEの精神を体現し、その物語をきと伝える46名のエミラティ・ユースアンバサダーが活躍。そのうち日本人も20名在籍。

 

 

 

 とりわけ女性の活躍が目立つのも特徴的だ。パビリオンを率いるマリアム・アルメマリ氏(館長)やシャイカ・アル・ケトビ氏(クリエイティブ・ディレクター)をはじめ、若い世代の女性が最前線で活躍している姿は、国際社会に向けたUAEのメッセージそのものである。

 

 

アラブ首長国連邦館 副コミッショナー・ジェネラル クリエイティブ・ディレクターのシャイカ・アル・ケトビ氏(左)。ビジュアルアーティストであり、パビリオンのデザイン、クリエイティブコンテンツの開発・制作・実施を統括。UAEパビリオン館長のマリアム・アルメマリ氏(右)。

 

 

 

味覚で触れるエミラティ文化

 

 館内のレストランでは、本格的なエミラティ料理を味わうことができる。エミラティ料理は、基本的には米が主⾷で、あらゆる料理・ドリンクにさまざまなハーブやスパイスが使われているのが特徴。スパイスといっても優しい味わいで、熱狂的なファンも多い。ブラックペッパーやカルダモン、シナモンなどをブレンドした香り豊かなスパイスミックス「バザー」、乾燥ライム「ルーミー」、精製バター「エミラティ・ギー」といった食材が織りなす料理は、日本ではなかなか体験できない味覚だ。

 

 メニューは、ラム肉や米を香り高く仕上げた「ラム・ウージ」、デーツシロップをかけた揚げドーナツ「ルカイマット」など。日本人には馴染みの薄いスパイス使いも、異文化体験として楽しめるだろう。

 

 

UAE⾷⽂化を感じるハラルレストランによるBENTO BOX|弁当スタイルの一例。移住者が多い国(⼈⼝88%200以上の国籍から構成されている外国移住者)のため、⾷⽂化もミックスされてユニーク。

 

 

 

 私たち日本人がUAEと聞いて抱きがちな「高層ビルと富裕層の国」というイメージとは異なり、このパビリオンが映し出すのは、多様性に富み、伝統と未来をつなぎながら歩む国の姿である。大阪・関西万博を訪れたら、ぜひUAEパビリオンに足を運んでみてほしい。物語を五感で体感できる、特別なひとときが待っている。

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