Diners Club Royal Premium Card Special Dinner

ダイナースクラブ ロイヤルプレミアムカード特別晩餐会:綱町三井倶楽部で味わう、時間という贅

November 2025

香り立つ時間を纏った晩餐。招かれし極少数のカードホルダーたちが綱町三井倶楽部の凛とした迎賓空間で、“静かな上質”を五感で味わうひととき。文化と時が交差する、ダイナースクラブ ロイヤルプレミアムカードの品格が滲む夜。

 

 

text yuko fujita

 

 

 

 

 

 特別に開かれた晩餐の賓客は、ダイナースクラブ ロイヤルプレミアムカードのホルダーたち。ロイヤルプレミアムカードは完全招待制、発行枚数は999名様限定。現在の会員数は、公にされていない。ダイナースクラブの真髄は、会員一人ひとりに寄り添うきめ細やかなおもてなしにある。その精神を最も純粋なかたちで体現しているのが、ロイヤルプレミアムカードだ。

 

 綱町三井倶楽部が100年以上にわたって磨き続けてきた迎賓の精神を、ダイナースクラブが現代の感性で蘇らせた晩餐。それは、カードというツールを超えた文化体験そのものである。

 

 ロイヤルプレミアムカードの専任コンシェルジュは、会員一人ひとりの人生の文脈に寄り添い、その人にふさわしい瞬間を設計する知の執事だ。かつて綱町三井倶楽部の執事たちが賓客の嗜好を記憶し、完璧な晩餐を設えたように、彼らもまた、会員の美意識や価値観を深く理解し、真に上質な時間をつくり出している。そしてその水準を保つためにこそ、このカードは、ごく限られた人たちだけに開かれている。

 

 歴史の賓客たちを迎えてきたメインダイニングルームには、ひとつの伝説が残っている。1958年、東京がオリンピック候補地として視察を受けた際、IOCのブランデージ会長がこの場所を訪れた。当時、欧州の委員たちは「日本にはまともなワインもない」と懸念を口にしていたという。その夜、会長の前に差し出されたのは、Château d’Yquem 1947。豊かなセラーと、心を尽くしたもてなしに感銘を受けたブランデージ会長は、グラスを掲げながらこう言った。

 

“Tokyo will do!”(東京でいいじゃないか!)

 

 そのひとことが、翌年のIOC総会での1964年東京オリンピック開催決定を後押ししたといわれている。この夜、ロイヤルプレミアムカードメンバーのゲストたちは、その伝説のメインダイニングで、特別な晩餐のひとときを過ごしたのだ。

 

 

 

ダイナースクラブが誘う、文化体験としての晩餐

 

 開宴前、ゲストたちはクラブ内のバーを訪れたのち、通常は立ち入りが許されないワインセラーの特別見学に招かれた。

 

 バーは静かな照明のもと、空気に深い落ち着きが漂っている。木の艶が光を柔らかく受け止め、時の流れがほんの少しだけ緩やかに感じられた。壁一面に並ぶボトルは、どれも長い歳月を経た記憶のようだ。中にはThe Macallan 50年(1928年に蒸留)。琥珀の光を宿したその存在が、ただの社交場ではないことを物語っている。

 

 

温かみのある木のカウンターに並ぶ、Grand Old Parr やBlack & Whiteの古いボトルたち。それは、この倶楽部を訪れた賓客たちの記憶を、静かに封じ込めているかのようだ。

 

 

1928年に蒸留された、The Macallan 50年。凄まじい値であることが想像できる。

 

 

 

 約12,000本のワインが静かに眠るワインセラーは、まさに圧巻だった。錚々たる銘柄の中を歩きながら、思わず宝探しのような気持ちになる。目に留まったのは、筆記体ラベルの Romanée-Conti 1937。

 

 ほかにも、まるで時を閉じ込めたようなボトルが幾列も並んでいた。最古のワインは Château Margaux 1891だという。ラベルははがれ、ボトルは時の風格を纏いながら、長い歳月を超えて静かに守られてきた。それは、綱町三井倶楽部が受け継いできたもてなしの文化の象徴的存在だ。

 

 

セラーに眠る最古のワインが、こちらChâteau Margauxの1891年ヴィンテージ。

 

 

地下のワインセラーには、たくさんの貴重なヴィンテージものを含む12,000本ものワインが眠っている。

 

 

 

 セラーを後にし、ゲストたちはゆっくりとダイニングへと向かった。グラスの音とともにChampagne Louis Casters Sélection Brut Tsunamachi Mitsui Club Labelの繊細な泡が立ちのぼり、晩餐の時が始まった。

 

 

 

 

 海の幸のカリフラワーのムース ジャルダン風がスペシャリテにもなっている、香味野菜と牛すね肉、鶏がらなどを絶妙なバランスで60時間火にかけながら、細やかな工程を経て生まれる琥珀色の「コンソメスープ」。クラシックフレンチの真髄だ。

 

 続いて、オマール海老のポワレとシャンピニオンのフラン。ワインはBouchard Père & Fils Montagny 1er Cru 2016が寄り添い、その柔らかな余韻が料理の旨味を静かに引き立てていた。

 

 

 

 

 メインの黒毛和牛ヒレ肉のステーキ フォンドボーリエには Château Saint-Pierre 2012 (Saint-Julien)。赤の深みがテーブルの会話とともに、ゆっくりと夜の温度を深めていった。

 

 そしてデセールのショコラ ラムレーズンには、Château Coutet 1998 (Barsac)。27年の時を経た貴腐ワインが、蜂蜜のような甘美さで、この日の夜を静かに閉じていった。

 

 

 

 

 

65年の眠りから優しく目覚めたマルゴー

 

 楽しい食後のざわめきのなか、ソムリエが再び姿を現した。その手にあったのは、なんと Château Margaux 1960。

 

 日本のダイナースクラブの創設年のワインであり、この日のために開けられた特別な1本である。時の色をした赤が、グラスの中で静かに佇む。人生で二度と出逢うことのないであろうこの清らかなワインを、味わうだけでなく、その空間と時間ごと、贅沢に五感で堪能する。かつてこの部屋で Château d’Yquem 1947 が歴史の一幕を刻み、この夜、Château Margaux 1960 がその記憶を静かに継いだのだった。

 

 セラーに眠っていた1960年ヴィンテージが2本開けられたことで、夢の世界はさらに深みを増していったのだ。

 

 

 

 

 

ダイナースクラブがもたらした、時間を味わう贅

 

 帰りには、心に残る素晴らしいギフトが用意されていた。ダイナースクラブのために特別に作られた、宮城の新澤醸造店の大吟醸酒。女性杜氏・渡部七海氏による、透明感と芯を併せ持つ一本である。日本の食文化やその担い手を大切にしてきたダイナースクラブの精神を象徴するような贈り物だった。

 

 

女性杜氏・渡部七海氏による、ダイナースクラブのために特別に作られた新澤醸造店の大吟醸酒。

 

 

 

 時間と文化を味わうことこそ、最も贅沢な歓びである。そんなことを改めて実感する一夜となった。

 

 ロイヤルプレミアムカードの世界では、その力が、静かに磨かれていく。選ばれた会員だけが招かれる晩餐。名建築の扉の奥で開かれる、かけがえのないひととき。本物の体験が、感性を深めていく。そこには、時を超えて受け継がれてきた文化を、自らの感性で味わう歓びがある。

not found