DESIRE FOR LUXURY: MAYBACH

マイバッハの世界:百年目に辿り着いた至高のステイタス

July 2022

「マイバッハ」はメルセデスの最高級ラインを意味する。
そのブランド誕生100周年を記念して、特別な人々に向けた、特別なクルマが公開された。
text shintaro watanabe

Mercedes-Maybach GLS 600 Edition 100“マイバッハ”の100周年を記念して用意された特別仕様車は全世界で100台の限定生産。昨年ドイツで発表され年末にオーダーを開始、今年になって欧州での納車が始まった。基本的にはメルセデス・マイバッハ GLS 600 4MATIC(ISG搭載モデル)をベースとしているが、内外装が特別仕立てとなっている。シートはクリスタルホワイト/シルバーグレーの本革で、いずれも厳選された素材とカラーだ。Dピラーやサイドステップなどにはマイバッハと“EDITION100”が組み合わされた特注のロゴマークがあしらわれている。 Mercedes-Benz

 1846年にこの世に生を受けたひとりのドイツ人がいた。彼は工業エンジニアとして類い稀なる才能を持ち、ダイムラー・モーター社のゴットリープ・ダイムラーの目に留まり、初めて“メルセデス”という単語が車名として冠されたメルセデス35HPの開発に携わる。ダイムラーが亡くなると彼も独立。1918年に息子とともに自動車会社を設立し、1921年のベルリンモーターショーで当社初となる量産型のプロダクトを発表した。これが親子のファミリーネームである“マイバッハ”のW3であり、マイバッハというブランドの長い歴史がスタートした瞬間でもあった。

 マイバッハW3は当時のドイツ車としては初めて4輪ブレーキを搭載するなど革新的な技術をいくつも備えるとともに、室内には上質な素材がふんだんにあしらわれるなど、高級車の原型ともいえるモデルだった。1941年にいったんその歴史を休止するが、2002年に当時のダイムラー・クライスラー社がマイバッハを復活。以来、高級車ブランドとして確固たる地位を築いたメルセデス・ベンツのさらに上に君臨する“best of the best”なブランドとして、世界中のセレブから絶大なる信頼を得ている。

 メルセデス・マイバッハ GLS 600 エディション 100は、マイバッハが100周年を迎えた昨年、ミュンヘンで開催されたIAAモーターショーで発表された特別仕様車である。ベースとなるのは次に紹介するメルセデス・マイバッハ GLS 6004MATIC(ISG搭載モデル)で、4リッターのV型8気筒エンジンを搭載した4輪駆動のSUVだ。

 ボディには、ウエストラインから上部がノーティックブルー、下部がハイテックシルバーの2色で構成されるツートーンの塗装が施されている。最近はあまり見かけなくなってしまったツートーンのボディカラーは、その昔は高級車の象徴でもあった。大きなボディを2色に塗り分けるには大変な手間と時間、そして高度な塗装技術が必要不可欠だからである。上品な色合いのブルーと、精密な機械を想起させるシルバーとの組み合わせは、最上級の仕立てと世界最高水準の性能を併せ持つマイバッハにふさわしい絶妙なエクステリアカラーといえるだろう。

 インテリアにはクリスタルホワイト/シルバーグレーの本革が採用された。クリスタルホワイトは高級感だけでなく室内に開放感を与え、シルバーグレーは本来なら膨張色のホワイトを適度に引き締める視覚的な効果を発揮している。

 特別な仕様であることを示す“EDITION 100”のロゴマークはホイールセンターキャップやマイバッハのエンブレムと組み合わされてDピラーにさりげなく置かれている。このクルマ、世界でわずか100台限定なのである。

 マイバッハ親子は当時、最高の自動車を作ることだけを考え、100年も続くブランドにしようとはおそらく微塵も思っていなかったはずである。マイバッハの性能と品質に魅了された世界中の賢人たちが、この歴史を紡いできたのである。

ボディカラーはウエストラインより上がノーティックブルー、下がハイテックシルバーのツートーン。大きなボディを2色に塗り分けるのは高い技術力が必要で、ツートーンは昔は高級車の象徴でもあった。

※写真は欧州仕様のため、日本仕様とは異なる場合があります。
※当車種は日本では近日発売予定。在庫状況についてはメルセデス・ベンツ正規販売店までご確認下さい。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 47掲載記事