BOWHILL & ELLIOTT: THE VELVET SLIPPER UNDERGROUND
“満ち足りた”時をもたらすスリッパー
“ボウヒル&エリオット”
February 2021
創業1世紀半にならんとするノリッジの老舗、ボウヒル&エリオットは、創業当時と同じ場所で、最高級のスリッパーを静かに手作りしている。
by freddie anderson
ウェンサム川沿いに位置するノリッジは、ノーフォーク州の州庁所在地で、英国で最も完璧に中世の姿を留めている町だと考えられている。
かつては、ノーサンプトン、ロンドンに続き、最高のレザーを使用した、エレガントでクラシカルな靴を生産する場所として尊敬を集めていた。長い間、英国の伝統的な靴作りの拠点であり、世界的な名声を得ていた。ピーク時には26の靴工場があり、12,000人が働いていた。
しかし、職人たちがそのクラフツマンシップにこだわるあまり、靴産業は徐々に衰退していった。彼らはチープなテクニックを使うことを頑なに拒んだ。それが賞賛されてもいたが、マーガレット・サッチャー元首相がポスト工業化政策をとり、海外との競争が激化して、その運命は変わってしまった。低価格の靴に対する需要と相まって、生産は安価な労働力を持つ中国のような海外へ移ってしまい、ノリッジの老舗靴屋のほとんどが廃業に追い込まれた。
しかし、1970年代以降、ずっと右肩下がりだった英国の靴産業は、ここ10年間でルネッサンスを迎えた。不毛の時代を生き抜いたシューズメーカーは、再び注文が増え、生産量が増加している。
皮肉なことに、サッチャー政権時代の工場閉鎖で生き残った企業は、中国のような場所で需要を得ているのだ。今では韓国、日本、フィリピンなど、遠く離れた市場が、ノリッジで作られた靴の生命線となっている。
靴作りの大手がノリッジの歴史的な靴街から離れていく中、ずっと伝統を守り続けてきた小さなメーカーがある。1874年からスリッパーとハウスシューズを手作りしているボウヒル&エリオットである。
創業以来、ファミリーによる経営を続けており、現在はロジャー・ジュリーが当主を務めている。彼らは英国王室や大統領、映画スターのためのスリッパーをひっそりと作っている。
ロンドン・ストリートに面したショップの床下には、昔ながらの工房があり、伝統的な手法が守られている。7人の熟練した職人が、昔ながらの厳格な方法で、靴とスリッパーを手作りしている。
ボウヒル&エリオットで最もよく知られているのは、刺繍入りのスリッパーである。今の時期、大邸宅やロンドン・グランドホテルでの舞踏会へ招待されることはないかもしれない。しかし現在ではスリッパーは万能シューズとなり、室内から屋外まで幅広く履くことができる。ハンドメイドのスリッパーに、今こそ投資するべきだ。
ブランドの最も人気のあるスタイルのひとつである、牡鹿の頭が刺繍された黒のベルベットのスリッパーは、ジーンズ、Tシャツ、ブレザー、スーツ、そして昼間から夜明けまで、もちろんディナー時の服装にもよく似合う。この思わぬ適応性の高さが、スリッパー復活の大きな理由となっている。
しかし、それは決して安物であってはならない。世界中の人々は、伝統的な方法で製造された、完全にトレーサビリティのあるスリッパーを探しているのだ。
しかし、これを提供できる企業は非常に少なく、ボウヒル&エリオットのスリッパーが、ファッション先進国である日本で、非常に人気があるのも不思議ではない。ピッティ・ウオモなどでも、メンズウェアのアイコンの足元を多く飾っている。ボウヒル&エリオットのビジネスは、知る人ぞ知る賞賛の的となっているのだ。
ボウヒル&エリオットのスリッパーの履き心地の良さは、家庭内での使用にも最適だ。
無地のコットン・ベルベットのシグネチャー・スリッパーは、ブラックやネイビーなどを選べ、快適なキルティングの裏地とレザーソールが付いているので、家の周りで履くのに最適なデイリーシューズだ。
また、王冠やキャバレーの骸骨が刺繍された“コロネット”スリッパーも魅力的なオプションだ。穿き心地の良いトラウザーズとニットを合わせれば、外に出るときも脱ぎたくなくなるはずだ。
英国の伝統的な靴職人が、創業当時と同じ敷地内で、今もなおその技術に磨きをかけ、こんなにも手間をかけて靴を作っている・・これは、とても珍しいことだ。
ボウヒル&エリオットのスリッパーへの投資は、間違いなくあなたに“満ち足りた”時をもたらすだろう。