BMW M2 Coupé
“魔性のエンジン”を味わい尽くすために
June 2017
すべてがブラックアウトされたインテリア。カーボンパーツが多用され、レーシーな雰囲気だ。
スタートキーを押すと、猛々しいエグゾーストノートが響き渡る。一瞬にしてこのクルマが、天下一品のエンジンを積んでいることがわかる。それもそのはず、BMW M2 Coupéの心臓は、かつて一世を風靡した“ストレート・シックス=直列6気筒”なのだ。
昔はBMWのスポーツモデルといえば、直列6気筒が花形だった。“直6=チョクロク”は、ピストン・バランスに優れ、スポーツカーのエンジンとしては理想的なのだ。しかしレイアウト的な制約が多く、効率重視の現代では、もはや絶滅危惧種となっている。
しかしBMWは、かつての看板エンジンであった直6を諦めず、コツコツと、じっくりと熟成させてきた。そして出来上がった最新の直6エンジンは、もう芸術品ともいえるレベルに達している。
BMW自慢のインラインシックス(直列6気筒)エンジン。素晴らしいパワーとスムムースネスを誇る。
最高出力370ps、最大トルク465Nm、0-100km/h=4.3秒のスペックからわかる通り、このクルマは死ぬほど速い。フルスロットルでアクセルを踏み込むと、全身の血液が背中から抜けて行くような加速感を味わえる。
しかしこのクルマと、このエンジンのコワいところは、スペックを超えた官能性にこそある。その回り方は、同じ6気筒でも、V6の「ロロロン」とも、水平対向の「シャーン」とも違う、「ヴォーン!」といった男々しいものだ。そして高回転になると、それが「シュパーン!」に変わる。とにかくなめらか。BMWの直6を表現する言葉“シルキーシックス”とは、言い得て妙である。