夏こそブラック・テーラード

意外かもしれないが、夏にブラックのテーラーリング・アイテムを着こなすのはとても良いアイデアだ。

ここでは、どのようにしてブラックを着こなすかをご紹介する。

 

 

by freddie anderson

 

 

 

 

  こんな1年を過ごした後に、この夏、黒のテーラード・アイテムを着ることをおすすめするのは、まったくおかしなことだと思うかもしれない。しかし、落ち着いて物事を深く掘り下げてみると、それがいかにクールなアイデアかという多くの証拠が得られるだろう。

 

　黒のテーラードというトレンドは、秋冬のニューヨークやロンドンでしかポピュラーではないようだ。

 

　しかし、自分に合うものを見極めてシンプルに考えれば、ブラックを着る基準は冬でも夏でもほとんど変わらない。

 

 

EDWARD SEXTON Black Linen Contemporary Trousers $ 515	EDWARD SEXTON Black Linen Single-Breasted Jacket $ 1,515

 

 

 

　ロシアのコサック兵は、猛暑のロイヤル・ウェルシュ・ショーの日に、特徴的な黒のユニフォームを着てパレードをしていた。またギリシアのイドラ島の司教は、真夏に全身黒の聖職者の服を着ていた。このような人々を見ていると、ブラックのテーラーリングは、1年中着られるものだと思えてくる。

 

　黒を着るということは、暗いイメージがあるかもしれないが、バルバネーラの共同設立者であるセルジオ・グアルディ氏は、もっとポジティブなイメージを持っている。彼はこう言う。

 

「黒は悲しい色ではありません。黒は反骨の色です。優しく、もちろんムーディでダークです」

 

 

 

 

　多くの人はブラックを夜に着るものだと思っていますが、グアルディは日没前にも着るべきだと考えている。

 

「私は黒のオーダーメイド・スーツをいくつか持っていて、日中でもシャツとブーツを合わせてカジュアルに着ています。そう、私はジョニー・キャッシュのファンなんですよ」とジョークを飛ばす。

 

 

EDWARD SEXTON Black Point Collar Shirt $ 435	EDWARD SEXTON Black Wool House Dress Trousers $ 550

 

 

　ここ数週間、The Rakeには上質なブラック・テーラード・アイテムが続々と入荷している。メンズウェアのコメンテーターは一般的に、ミディアム・ウエイトのウールでシンプルにまとめ、シルクのような光沢のある生地は避けるように言う。

 

　伝統的でありながら革新的なアプローチをとるエドワード・セクストンは、そんな一般的な意見に従うことはない。ブラックリネンのスーツをマスターできるテーラーがいるとすれば、それはアバンギャルドなマインドを持ったテーラーであるに違いない。ブラックスーツは、シルエットがシャープでなければならない。

 

　セクストンはロックンロールの要素を加え、アイリッシュ・リネンの生地を、夏用の悪魔のようにクールなスーツに仕上げている。幅広のピークトラペルと細めのウエストが特徴のこのジャケットは、紛れもなくエレガントだが、サファリジャケットを彷彿とさせる長めのパッチポケットが付いているため、非常に多くの着こなしが考えられる。

 

　セットアップのトラウザーズ、ターンブル＆アッサーの白いドレスシャツ、チフォネリの黒のヘリンボーン・シルクタイ、ザ リフェランス ライブラリーのサングラスを合わせれば、スマートでありながらちょいワルな雰囲気を醸し出し、1963年に公開された映画『8½』でマルチェロ・マストロヤンニが着用したようなスタイルになる。

 

 

 

 

　エドワード・セクストンのブラック・ポインテッドカラーシャツは、彼らのロックンロールへの傾倒を表している。シルクではなくても、黒のシャツは、快楽主義者のミュージシャンたちに愛されてきた。

 

　セクストンの有名な顧客であるエリック・クラプトンは、淡い色のウエストコートから黒のジャケットまで、黒のオープンカラー・シャツをステージでよく着ていた。一方、最も印象的な着こなしのひとつは、ストレイ・キャッツのドラマーであり、ブリット・エクランドの元夫であるスリム・ジム・ファントムだ。

 

　彼はクラプトンのように、シャツの上3つのボタンを外し、ジュエリーを身にまとい、リラックスしたフィット感のユニークなスーツに合わせていた。スーツの色はアイボリーやエアフォースブルーで、どちらも黒のシャツを引き立てる色だ。

 

 

 

BARBANERA Mustang Black Silk Vintage-Inspired Western Shirt $ 345	G. INGLESE Black Striped Cotton Waistcoat $ 290

 

 

 

　バルバネーラの“マスタング”ブラック・ヴィンテージシャツは、1940〜50年代の典型的な“サテン”ウエスタンシャツからインスピレーションを得ている。クラシカルな雰囲気のポイントカラーは、このシャツにさりげなく洗練された雰囲気を与えている。テーラードに合わせて、大胆に着こなすのがいいだろう。

 

　グアルディ氏の大胆なやり方に倣って、ウェスタンプリントのネッカチーフを合わせれば、さらに刺激的なスタイルとなる。

 

　テーラード・アイテムではないが、黒のコットンワッフルニットのテュコ・ヘンリー・シャツもおすすめだ。

 

 

THE REFERENCE LIBRARY Michael Black D-Frame Sunglasses $ 420	BARBANERA Black Cotton Waffle Knit Tuco Henley Shirt $ 160

 

 

 

　黒のテーラリングは、ブラックタイを除けば、上流階級の人々には敬遠されてきた。ジャンニ・アニエッリやウィンザー公でさえ、この色を着ることはなかった。考えられるのは、メンズウェアのアイコン的存在である彼らにとって、失敗の可能性はあまりにも高かったということだ。

 

　ブラックは誰にでも似合うわけではない。服飾評論家アラン・フラッサーは次のように述べている。

 

「黒を着るときは、特に顔の近くに注意してください。ミディアムブラウンの髪に色白の肌、あるいはグレイの髪に明るいバラ色の肌という顔立ちの人が、顎の下に黒を置くと、視線が散漫になるだけでなく、肌の自然な色素を薄めてしまいます。逆に、コントラストの強い顔色、つまり白い顔に対して髪の毛の色が暗い場合、黒は肌の色を活性化し、顔を暗い色で縁取るのに役立ちます」　とアドバイスしている。ニック・ケイヴやロバート・スミスが、これに当てはまるだろう。

 

 

 

 

　これから夏だというのに、ブラックタイ用のアイテムがリリースされてきている。エドワード・セクストンは、初の既製服としてのディナースーツを、シングルブレストとダブルブレストの両方で提供している。

 

　同じくイタリアのジ・イングレーゼからは、黒のシャーリング・タキシード・シャツが登場した。イブニングルックを完成させるために、セラ ファイン シルクは魅力的な黒のボウタイを製作している。

 

 

MAGNUS & NOVUS Black Cotton Sheen ‘Events Leisure’ Shirt $ 450	G. INGLESE Black Cotton Poplin Ruched Tuxedo Shirt $ 555

 

 

　他にも、シャツのスペシャリスト、フラルボ＆イートンの黒のテーラードシャツや、マグナス＆ノバスの光沢感あふれるコットンのウィークエンドシャツなどがある。

 

　ブラックは正しく着こなせば、エレガントにも、セクシーにも、クリーンにも、そしてこの夏の気分＝少し反抗的にもなる。

 

　肝心なのは、自分の直感を信じて、何が自分に合うかを決めること。優れたメンズウェア・ブランドの黒の服に投資することは、ワンランク上の装いを可能とするのだ。

 

 

EDWARD SEXTON Black Wool Double-Breasted Dinner Jacket $ 1,750	EDWARD SEXTON Black Wool Single-Breasted Dinner Jacket $ 1,750