BELL&ROSS × THE RAKE AND REVOLUTION BELLYTANKER ‘EL MIRAGE’ AND ‘DUSTY’ CHRONOGRAPHS

“ベル&ロス×THE RAKE”
スペシャル・コラボレーション
ヴィンテージに魅せられて

January 2019

美しく歳をとるということ

 

 数十年前までは、古い時計を手に入れて最初にやることといえば、ムーブメントを分解して組み直し、ケースとラグを丁寧に磨き上げ、新品のようにきれいにする作業をこなすことだった。しかしこの10年ほどの間に状況は様変わりし、経年変化による風合いが愛されるようになった。ヴィンテージウォッチの世界には、「トロピカルダイヤル」以上にニーズの高いものはない。トロピカルダイヤルとは、もともとブラックだった文字盤が強烈な紫外線に晒された後、暗い場所に放置されて、ダークチョコレート色から薄いアンバー色くらいまでに変色したものだ。

 

ベリータンカーのクロノグラフ「ダスティ」。Bell & Ross by The Rake

コート 参考商品 Lardini、シャツ 参考商品 Ermenegildo Zegna、スカーフ 参考商品 Dunhill、タイ Rubinacci

 

 

 トロピカルダイヤル人気に貢献した人物といえば、オークションハウスの御大オーレル・バックス以外にいない。彼はクリスティーズの時計部門を率いた後にフィリップスへ移り、ポール・ニューマンが所有し2017年に1780万ドルという記録的な高値で落札されたデイトナなど、ヴィンテージブームを演出してきた。「トロピカルダイヤルの美しい点は、それぞれに個体差があるところ。コレクターはそこに魅力を感じているのだと思う」とバックスは語る。「しかし、世界中でこの手の文字盤が注目された結果、今ではものすごいプレミアがつくようになった」。

 

 問題は、若いコレクターや大金を払いたくない人に、どうしたらトロピカルウォッチと同じような視覚的効果を持つ手頃な時計を届けられるのか、ということだ。

 

 

徹底したヴィンテージ風デザイン

 

 我々は、究極に経年変化したベリータンカーのクロノグラフを作ることに取り組み始めた。まず議題に上がったのは、古びた趣を作ることに対するモラルの問題。昨年のコンコルソ・デレガンツァで、かつてティム・バーキンがレースで乗ったベントレー・ブロワーを、新しいオーナーが冒とく的なやり方で古びた感じを出そうとしたため総スカンを食らった例を我々は知っている。ロシロは次のように述べた。

 

「70年近く経ったらどうなっているか、想像した通りの時計をデザインしよう。そのままの色合いを選んで、僕たちが好きなものを作る。でも、昔を思い出させる手法であるという事実はしっかり公言しよう」

 

 もうひとつ重要なのは、実際に日常的に着用できること。それまでトロピカルダイヤルの時計とは、経年変化の真っ只中にある独特のコレクターズアイテムで、大事にしまっておかれるものだった。だがこのベリータンカーなら、いかなるシチュエーションにおいても時計をダメにしてしまう心配をすることなく着用できる。

 

 我々は最終的にふたつのバージョンを用意した。ひとつは「ダスティ」。その名の由来はバークがたびたびレースをした“乾燥湖”である。スティールケースを採用しており、深みのある濃いタバコブラウンのダイヤルとベゼルがこの上なく美しい。ベラミッシュはこう話す。

 

「最終的に決まったデザインで特に気に入っているのは、色合いだ。文字盤の中央はキャラメル色、サブダイヤルとセコンドトラックはブラック、ベゼルはチョコレート色で絶妙なコントラストだ」

 

 ダスティは仕上げとして、本体に合わせた色合いのミリタリースタイルのストラップを取り付け、ヴィンテージを忠実に再現したピン式バックルで完成させた。

 

 

ブラウン系の着こなしとコーディネイトした「エル・ミラージュ」(左)と「ダスティ」(右)。

 

 

ブロンズの経年変化

 

 もうひとつの「エル・ミラージュ」は、P-51ムスタングのタンクを改造したバークのレーシングマシンのイエローからインスピレーションを得たものだ。私が「イエローゴールドのバージョンを作ろう」と発言すると、ベラミッシュとロシロから逆に、ゴールドではなく特殊な方法で安定化させたブロンズを使って深みのあるイエローを作ろうと提案があった。

 

 ロシロはその理由について、「安定化させたブロンズというまったくの新素材を初めて導入したかった」と説明する。ベル&ロスがこの素材を用いるのは初めてだ。ベラミッシュはこう述べている。

 

「1950年代のヴィンテージのイエローゴールドには、独特の魅力がある。安定化させたブロンズなら限られた範囲しか経年変化しないので、この色合いに近づけられるかもしれないと思ったんだ。シャンパンカラーの文字盤に、トロピカルブラウンのサブダイヤルとベゼルの組み合わせは、マジックと思える仕上がりだ」

 

 エル・ミラージュにはダークカラーのミリタリースタイルのストラップが取り付けられ、さらに業界初の(と私は思う)同素材のブロンズによるピン式バックルが付いている。

 

 ふたりはこれら2本のスペシャルモデルを見て、「これまで作ってきた中で最高峰のヴィンテージ・コレクションだ」と言ってくれた。私にしてみれば、真の友情と時計に対する情熱から生まれた時計で、彼らとコラボレーションできたことこそ、この上ない名誉だ。ダスティとエル・ミラージュは、トロピカルをテーマにした究極のクロノグラフだ。洋服とのコーディネイトという観点で見れば、フランネルやツイード、チェック、コーデュロイなどのブラウン系との着こなし、さらにはディナージャケットと合わせれば、これまでになかった調和とエレガントさを生むだろう。

 

 最後に、そして最も肝心なことだが、私たちは読者への感謝の印として、この魅力的なタイムピースの価格を通常モデルの価格にできる限り近づけたことも付け加えておこう。各バージョンとも100本の限定生産である。

 

2017年にリニューアルさせたヴィンテージ・コレクションのなかでも最高傑作の呼び声高い「BR V2-94 ベリータンカー」をベースに、THE RAKE とREVOLUTION誌が別注して実現した2本の限定モデル。シャンパンカラーのダイヤルにブロンズのケースを採用したのが「エル・ミラージュ」(上)で、キャラメル色のダイヤルにステンレススティールケースを採用したのが「ダスティ」(下)だ。どちらもヴィンテージを表現したカラーリングで絶妙なコントラストを形成し、視認性も確保。ピン式バックル付きのカーフスキンレザーストラップ。ともに自動巻き、41mm。世界限定各100本。エル・ミラージュ」$4,990「ダスティ」$4,500 Bell & Ross by The Rake

 

 

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