BELL&ROSS × THE RAKE AND REVOLUTION BELLYTANKER ‘EL MIRAGE’ AND ‘DUSTY’ CHRONOGRAPHS
“ベル&ロス×THE RAKE”
スペシャル・コラボレーション
ヴィンテージに魅せられて
January 2019
最高のアイデア
しかし、ベリータンカーのクロノグラフをバーゼルで目にした瞬間、スピードマスターとデイトナというビッグネームに続く、まったくオリジナルのスポーツクロノグラフの3本目がついに現れたと思った。
「伝説の時計の象徴的なデザインを侵害しないようなスポーツクロノグラフを考案するのは、本当に大変なこと。これは挑戦だったんだ」とベラミッシュは語る。ベリータンカーのポイントは、手頃な価格ながらも素晴らしいデザインであることだ。どこも他社の真似をせず、独自の魅力を持っている。どうやってこのスーパークールなスタイルにたどり着いたのか。
「前段として、過去の時代の時計を掘り起こすところから始めたんだ。僕たちは長年、1940年代末~1950年代初頭のものが大好きだった。往年のアメリカ文化、特に第二次世界大戦後の南カリフォルニアのホットロッド文化も大好きだったよ」
なるほど。では「ベリータンク」とは何だろうか。ベリータンクとは、長距離飛行ミッションで飛行距離を延ばすために軍用機に取り付けられた増槽(着脱式の燃料タンク)を指し、第二次世界大戦中に使われた。戦後、南カリフォルニアの改造車マニアたちがそれをベースに、レーシングマシンを作ったのである。
ビル・バークと彼のホットロッダー仲間であるドン・フランシスコが、ベリータンクのレーシングマシンと一緒に写った『HOT ROD』誌の表紙(1949 年)
草分けは、カリフォルニアの伝説的ホットロッダーのビル・バークだ。南太平洋で兵役に就いたときに初めてベリータンクを目にしたバークは、その流線型の形状がレース向きだと見抜いた。そして戦後、P-51ムスタングの増槽を使ってマシンを作る。車体は小さすぎたがそれでも時速約220キロの速度に達した。次いでP-38ライトニングの増槽で改良版を作り、レースを走りきった。バークは正真正銘の、アメリカきってのかっこいい男だ。
そんなマシンでレースをする男が身に着ける時計とはどんなものか、という空想にふけていたベラミッシュに、ベリータンカーの最初のコンセプトが降りてきた。
「ミリタリーウォッチや航空計器のルールに沿ったクロノグラフを作りたかった。激しい振動があるときでも視認性に優れていて、兵士たちが退役後も使用した払い下げのミリタリーウォッチのような魅力を持つクロノグラフを。ちょうどその1~2年後、トミーヒルフィガーの広告を見たんだ。塩湖の跡にできた平原で美しい男女がキスをしていて、その傍らにベリータンクのレーシングマシンが停まっていた。すごくクールだと思った。これは夢で見たコンセプトでもある。僕はデザイナーとして夢の中で新しいアイデアを見つけるんだ」
ベラミッシュが夢で見たコンセプトである、ベリータンクのレーシングマシンが塩湖を走る様子を、具現化したイメージ画像。
魅力的なダイヤル
時計ファンなら、最初に目が行くのは文字盤だろう。まさにここが、ベリータンカーの傑作たる所以である。3つの異なる領域で異なる情報を指し示すことで視認性を高めている。ひとつ目は文字盤の中央部で、時分表示に関係する。ふたつ目はサブダイヤルの30分カウンターとスモールセコンド、そして3つ目は段差のあるセコンドトラック。すごいのは、これら3つの領域が異なる配色でわけられていることだ。サブダイヤルとセコンドトラックは黒地にクリアホワイトの太いマーキングがなされ、文字盤の中央部はミリタリーカーキとなっている。
ベリータンカーのクロノグラフをベースに誕生した2バージョン、「ダスティ」(左)と「エル・ミラージュ」(右)。Bell & Ross by The Rake
ブラシ研磨加工を施した細身のアワーインデックスは、文字盤の内側から段差の先まで伸びており、ケースはすっきりしていて、突き出たラグも同じく薄く上品。ステンレススティールのベゼルにはヴィンテージスタイルのタイポグラフィーが入っていて、ドーム型のサファイア風防は耐傷性に優れる。プッシャーとリュウズも精巧、なおかつセンスのよい仕上げで、タッチもよく、実用的である。
ある日、ロシロとベラミッシュと私は、ディスカッションを始めた。ホットロッド界のレジェンドであるビル・バークが数々のレース中に着用していた時計を、まったくの無傷で発見できたとしたらそれはどんな外見だろうか、と。考えた末に、我々は思いついた。きっとその時計は、南カリフォルニアの太陽の紫外線を浴びてきた。そのため、文字盤はブラックからトロピカルブラウンに変色し、風格のある傑作になっているだろう、と。