Banyan Tree Higashiyama Kyoto, The Sanctuary of Ryozen

古都の美意識を映す幽玄の世界「バンヤンツリー・東山 京都」が誕生

October 2024

ユネスコの世界遺産に登録された清水寺にほど近い高台に、東山の景観と見事に調和しながら幽玄の美を体現した「バンヤンツリー・東山 京都」が開業した。新たなホテルの建築には世界的建築家の隈研吾氏をマスターアーキテクトに迎え、日本の伝統的な建築技術を取り入れながら周囲の自然に溶け込むように設計。庭園には他に類を見ない能舞台も鎮座する。京都の文化とバンヤンツリーの世界観が融合したホテルとは、いかなるものか。

 

 

text chiharu honjo

 

 

 

 

 インターナショナルブランドホテルの開業が相次ぐ京都の祇園・東山エリアに、アジアを代表する独立系グローバル・ホスピタリティ・カンパニーであるバンヤン・グループが日本初進出を果たした。日本におけるフラッグシップ・ホテルとしてオープンした「バンヤンツリー・東山 京都」は、歴史を感じる清水寺や高台寺に隣接する高台の閑静な場所に位置しており、アクセスは京都駅からタクシーで20分ほど。喧騒から離れた東山の自然の中にひっそりと佇む、隠れ家のような空間だ。

 

 

ヒノキなどの天然木材を贅沢に使用した正門。

 

 

隈研吾氏が手掛けたエントランスの大庇。

 

 

 

 ホテルの入口に堂々とそびえ立つ正門は、ヒノキなどの天然木材を贅沢に使った美しい意匠。あたかも霊山の聖域へと導かれているような、この地域が持つ魅力を際立たせている。門をくぐり抜けてタクシーを降りると、エントランスに力強く張り出した木の大庇(おおびさし)が存在感を放つ。見上げると、天然の白木が交差し幾重にも重なった重厚かつ奥行きのあるデザインが視界に広がり、訪れる者を圧倒する。

 

 

日本庭園を望む吹き抜けのフロント。竹細工の大きなオーナメントが飾られた天井と、正面に見える竹林が呼応する印象的な空間だ。

 

 

数々の京都伝統工芸品やアート作品が散りばめられているロビー。

 

 

ウエルカムドリンクとして抹茶を点ててくれる。

 

 

 

 東山の裾野にある同ホテルは敷地内に12mの高低差がある。ランドスケープデザインはこの高低差を活かし、3つの庭とその奥に広がる樹木で構成。新緑や紅葉、雪景色など、ここにしかない景観を堪能できる造りになっている。また、サステナブルの観点から既存の樹木や竹林を残しながらも手入れの行き届いた環境を維持する取り組みが行われている。

 

 インテリアデザインには世界有数のラグジュアリーホテルを手掛けるDWP Internationalを迎え、バンヤンツリーブランドがもつ唯一無二の世界観と京都の歴史や文化を、空間デザインの各所で表現。和の設えでありながらモダンな雰囲気を醸す魅力的な空間に仕上げている。

 

 

能舞台は隈研吾氏によるデザイン。

 

 

能舞台の奥に広がる青々と茂った竹林の散歩道。

 

 

 

 特筆すべきは、京都のホテルで初となる能舞台が庭園にあること。伝統的な能舞台をコンテンポラリーなステージへと昇華した斬新なデザインで、鏡のように反射する水盤の上に佇む極めて美しい建築物だ。白木と白木の間にあえて隙間を空けることで、背景に広がる竹林も舞台の一部として溶け込む仕掛けがなされており、静寂に包まれた竹林から漂う神秘的な雰囲気が見る者の心を奪う。

 

 

八坂の塔や京都の市街を一望できる客室「ウェルビーイング サンクチュアリ ツイン」。バランスボールやヨガマットなどウェルネスな道具も備わる。

 

 

広々とした客室で京都の天然温泉にゆっくりと浸かれる最上ランクの一部屋「バンヤンONSENリトリート」。

 

 

「バンヤンONSENリトリート」の窓からは能舞台を見渡せる。

 

 

 

 全52室からなる客室デザインは、数々のラグジュアリーホテルやブティック等を手掛ける橋本夕紀夫氏のデザインスタジオが担当。能の伝書『風姿花伝』に出てくる「秘すれば花」という一節をコンセプトに、ヒバの木のバスタブや、い草が香る畳、名栗加工を施し金箔をあしらったベッドの上部など、日本の伝統素材を随所に取り入れ、驚きに満ちた空間を創り上げた。

 

 滞在をさらに特別なものにするなら、館内で8室のみの天然温泉に入れる客室を選びたい。中でも「バンヤンONSENリトリート」は74.5㎡のスイートで、大きなヒバの浴槽を開放感あふれたバスルームに誂えた贅沢な空間だ。

 

 

大浴場にある天然温泉の外湯。

 

 

プライベート温泉やスチームサウナのある「バンヤンツリー・スパ」のトリートメントルーム。ふたりで受けられるダブルトリートメントルームもある。

 

 

テクノジムの最新マシンが揃うジム。

 

 

 

 敷地内から湧き出る天然温泉の大浴場には内湯と外湯があり、利用可能な時間内なら宿泊者は自由に利用できる。また、ルームキーで24時間利用できるジムにはテクノジムのマシンが備わりトレーニングも自在だ。

 

 そして、バンヤンツリーといえばスパブランドも名高い。同ホテルのスパは、京都の天然温泉とバンヤンツリー独自のセラピーを融合させた温泉スパとなっており、ここにしかないオリジナルの施術が受けられる。注目は、京都・東山限定のシグネチャートリートメント「温泉インダルジェンス(120分 ¥50,000)」。トリートメントルーム内にあるプライベート温泉とスチームサウナで60分間の温泉浴をした後、熟練したセラピストによる60分間の全身マッサージを行うことで、旅で疲れた体を回復させより深いリラクセーションへ導いてくれる。

 

 

割烹料理「りょうぜん」。カウンター席を含む48席のほかに10~20名まで利用できる個室もある。ディナーのみビジターの予約が可能。

 

 

日本酒の3種飲み比べは、京都産の限定酒や銘酒が揃う。左から、「神蔵 無濾過・無加水・生酒(純米)」、「玉川 山廃 無濾過生原酒 雄町 木下酒造(純米)」、「月桂冠 鳳麟(純米大吟醸)」。

 

 

会席コース 風姿会席(全8品、¥22,000)で3品目に提供されるお造り。

 

 

朝食は爽やかな空気を感じながらテラスでいただくこともできる。

 

 

新鮮な食材を使った滋味深い朝食(¥6,500)。

 

 

 

 さて、季節を五感で感じる料理を味わいたいなら割烹料理「りょうぜん」で会席のコースを堪能するのがよいだろう。京都の清らかな軟水に合う5年熟成の利尻昆布からとった出汁に鰹節と鮪節を加えた出汁を使った、素材の美味しさを引き出す心身に染みわたるような日本料理をいただける。

 

 ここでは日本酒が豊富に揃っているため、テイスティングをしながら日本料理とのハーモニーを愉しめる。辛口と旨味のバランスがよい「十石」や辛口純米酒「脱兎」、「澤屋まつもと」、「蒼空」、「英勲」、「城陽」など京都を代表する日本酒から自分好みの味を見つけたい。

 

 

 

 

 落ち着いた雰囲気を醸す「BAR RYOZEN(バー りょうぜん)」もオープン予定だ。選りすぐりの日本酒と独創的なカクテルを愉しめるバーで、プレミアムな日本酒だけでなく、あまり県外に流通しない京都の希少な地酒を30種類以上揃えるというから期待したい。

 

 

 

 

 訪れて感じたのは、バンヤンツリーのラグジュアリーとは、肩ひじ張らずに寛げる心休まる世界観だということ。浴衣や雪駄を履いたゲストが館内でリラックスする光景は、モダンかつインターナショナルな高級な温泉旅館という雰囲気を漂わせている。

 

 日常の喧騒から距離をとり、心地よい香りに包まれた幽玄の世界に身を置くことで、心身の緊張がほぐれリラックスすることができた。静寂の中で聖域の自然を五感で感じながら穏やかな心で時を過ごす温泉リトリートを体感してはいかがだろう。

 

 

バンヤンツリー・東山 京都

京都府京都市東山区清閑寺霊山町7番地

TEL.075-531-0500

www.banyantree.com/ja/japan/kyoto

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