ATTAIN PERFECTION
赤峰幸生が最後に辿り着いた服 第2回: 60年かけて確信した私にとっての最高の生地
January 2023
photography setsuo sugiyama
赤峰幸生 / Yukio Akamine1944年、東京都生まれ。90年、自身の会社インコントロを設立。98年、イタリア生産による紳士服ブランド「Y.Akamine」をスタート。2008年、カスタムクロージングのブランド「Akamine Royal Line」を立ち上げる。今、大切にしているのは「クラシック」の本質を若い世代に継承してもらうこと。今や20代、30代の赤峰ファン多数!
ミディアムグレイの霜降りの美しさ、生地の張り、ウエイトと仕立て映え。すべてにおいてドーメルのヴィンテージのトニックは赤峰氏の理想だ。赤峰氏着用:70年代初期に織られたドーメルのトニックで、28年前にリヴェラーノ&リヴェラーノで仕立てたスーツ、アカミネロイヤルラインのシャツ、アルニスのタイ。靴は信濃屋の白井俊夫氏から譲り受けたシルヴァノ ラッタンツィ。右:70年代のトニックを用い、約30年前に仕立てたリヴェラーノ&リヴェラーノのスーツ、アカミネロイヤルラインのシャツとタイ、ジョン ロブのシューズ。すべて property of Yukio Akamine
赤峰幸生氏の生地の好みは非常に明確だ。贔屓のサルトが仕立てた服を実際に10年、20年、30年と着てきて、その多くは今でも愛用している。自分の経験によって導き出されたそういった生地は、揺るぎない自信をもってそれが正解であったと、赤峰氏は断言する。
「当時は今のように雑誌で詳しく生地の紹介がされるような時代でもなかったですし、自分の五感だけを頼りに、生地を選んできました。それを実際に今日まで着てきて、それらの生地はヤレるどころか風合いを増し、その風合いがより深みのある服の表情を生んでいるわけです。その代表とされるのが、古くはドーメルの“トニック”や“スポーテックス”でした。でもこの手持ち感の生地って、今や織れなくなってしまったんですよね。英国にはドブクロス ルームという日本でいうシャトル織機があったのですが、それは緯糸のスピード回転数が今日のものとはまったく異なり、非常にゆっくりと織り上げられていたんです。でも、今日のイギリスの織機ではそれを再現するのは非常に難しくなってしまいました」
というわけで、理想としている当時の“トニック”をどうにか再現できないかということで、糸1本からこだわって、約1年以上かけて日本に残る低速織機で作りあげたのが、アカミネロイヤルラインのオリジナル生地だ。
「モヘアが58%入っているこのモヘアシャンブレーはすごくゆったりとしたスピードで織られたものです。決して撚りを強くしているわけではないのですが、それによってモヘアの素材自体の強さが生かされた生地が完成しました。最近は糸1本から自分で開発するしかないなということで、静岡や津島までよく足を運んでいます。そこまでこだわって自分で作り上げる、それが本当のオリジナル生地だと思うんですよね。これらの素晴らしい生地を、若い世代に継承していきたいですね」
手に入らないから作った、アカミネロイヤルラインの珠玉の生地
モヘアシャンブレー愛するヴィンテージの“トニック”の素晴らしさをどうにか再現できないかと糸の1本からこだわって作り上げたモヘアシャンブレー。経糸にメリノウール、緯糸にモヘアを用い、超低速で織り上げられている。見事なハリで、ミディアムグレイの霜降り感も美しい。380g/m。
コットンシルク コードレーン経糸にコットン、緯糸にシルク100%(21d10本撚り)を用いて限界まで糸を打ち込んで織られたコードレーン。コットン76%、シルク24%の混織率。270g/mとは思えない、圧倒的なハリ感。
ヘリンボーン30〜35マイクロンのニュージーランド羊毛30%と24.5マイクロンのオーストラリアメリノ70%による、赤峰氏別注の糸で織り上げたシャドーヘリンボーンのコート生地。硬すぎず締まりのあるタッチはまるでヴィンテージ。コートは1928年のモデル。
フランネルしなやかなスーパー100’sに、23マイクロンのオーストラリアメリノをブレンド。フィニッシング工程を何度も繰り返したことで、見事な風合い。トップグレイの粗挽き感といい、これぞアカミネフランネル。450g/m。