ASK THE RAKE: CAN YOU LIST 10 ARISTOCRATS THAT HAVE INFLUENCED AND INSPIRED GENTLEMEN'S ATTIRE?
紳士の装いに影響を与えた、10人の貴族
February 2021
THE RAKE国際版の編集長トム・チェンバリンが、紳士の装いに影響を与え、インスピレーションを与えた10人の貴族をリストアップする。
by tom chamberlin
インドのジャイプールのマハラジャにしてポロ・プレイヤー、パドナマーバ・シン。
この命題は、最終的には、何を“影響力”と定義するかによって違ってくるだろう。
かつていわゆる“ラグジュアリー産業”において、貴族は重要な役割を果たしていた。ラグジュアリーの概念とは、最初は、その土地の王または女王が、服であれ、宝石であれ、家具であれ、何か特別なものをタダで職人に作ってもらうことだった。そして貴族たちが、それを真似して、同じものを作ってもらい、お金を払っていた。
現在の英国では、政治が王室から分断され、社会が民主化されていくなかで、トレンドはあらゆる種類の場所から発生するようになった。しかし、パブや通りに名前をつけていたような人々は、今日の“インフルエンサー”と呼ばれるような存在であったし、今でも彼らの影響力は決してバカにはできない。
ここでは主な10人の、“インフルエンサー貴族”を紹介しよう。
1.<ウィンザー公爵>
彼はある時点では英国王だったので、正確には貴族ではないかもしれない。退位した君主としてコート・ダジュールに居を定め、地元のセレブたちに多大なる影響力を持っていた。
有名なエピソードとしては、彼がスペインの高級リゾート、マルベーリャ・クラブを訪れたとき、彼が来ることを知っていたゲストたちは全員ブラックタイを着用していたが、彼はハワイアン・シャツを着て到着し、他の客がイブニングウェアを着ているのを見て、あわてて着替えるために去っていき、パーティに戻ると、今度はゲストは、全員彼のようになるために、ジャケットと蝶ネクタイを外していたという笑い話がある。
2.<エイヴォン伯爵>
ウィンザー公の次に来るのは、エイヴォン伯爵だ。元首相アンソニー・イーデンとしてよく知られている。彼はおそらく今までで最も身なりの良い政治家だった。
ホムブルク・ハット、ワイドラペルのスリーピース・スーツ、ステッキを好んで身につけていた。太り過ぎだったウィンストン・チャーチルに欠けていた、颯爽とした着こなしであった。
3&4.<第5代アングルシー侯爵と第7代バース侯爵>
ファッショニスタと呼ぶには、あまりにも変わっているかもしれない。しかし、エキセントリックな貴族のステレオタイプは、彼らによって確立された。このリストに含まれているのは、それがメンズスタイルに対する大いなる貢献だと思われるからだ。
5.<第11代リッチモンド公爵>
残念ながら、現代の貴族にとって、大邸宅は持て余し気味で、近代的な機能を与えられず、ましてやそれによって金儲けなどとてもできない。その中で最もレイキッシュな例外が、リッチモンド公爵だ。最近まではマーチ卿として知られていた。
彼の居城であるグッドウッドで、スピード・フェスティバルなど、さまざまなイベントを開いていることで有名だ。並外れたドレッサーとしても知られる。お気に入りのテーラーは、テリー・ヘイストだ。現在存命している貴族のなかでは、最も影響力のあるひとりだろう。
6.<ユベール・ド・ジバンシィ>
彼の名前と業績は知っていても、彼が爵位を持っていたことを知らなかった人は多かったのではないだろうか? 彼は生まれながらの貴族で、信じられないほど影響力のあるアイコニックな“伯爵”だったのだ。
7.<マハラジャ・パドナマーバ・シン>
パドナマーバ・シンは若く、魅力的で、スポーティで、紳士的だ。正確には貴族ではなく、君主である。いつも非の打ちどころのない着こなしをしており、その多くはチフォネリである。
リッチモンド公爵が今日のサルトリアルな世界を象徴するとすれば、シン殿下は未来への希望のような存在である。
8.<バロン・ド・レデ>
フランスの著名な銀行家、貴族、麻酔医、コレクター、社交家。すべてのヘリテージ・ブランドが、「ウチの愛用者だった」と主張したい人物だ。彼に認められたということは、それだけで箔が付くのだ。
最も有名なのはクレバリーである。彼の名を冠したシューズのセレクションがあり、今日ロイヤル・アーケードのショップでは、彼のために作られたコレクションの数々を見ることができる。多くのパーティに奇抜な格好で出席し、おそらく、史上最も偉大な“仮装家”と言えるだろう。
9.<オルセー伯爵>
このリストに加えられた人物としては、最も古いものだ。しかし当時のファッションや文化に影響を与えたという点では、ボー・ブランメルに勝るとも劣らないほどだった。
私が彼に対して何を言おうと、ニック・フォルクスの著書『Last of the Dandies』ほど明確で情報に富んだものはないので、ぜひ一読をおすすめする。笑って、泣いて、人生が変わる本だ。
10.<ニキ・ド・ガンズバーグ男爵>
ニキ・ド・ガンズバーグ男爵は、ニューヨークの著名なファッショニスタ、エレノア・ランバートが創設した国際ベスト・ドレッサー・リストの殿堂入りを果たしている。パリで最も教養のある人物と評され、カルバン・クラインは彼の人生で最も偉大なインスピレーションを与えられた人物と賞賛した。
『タウン&カントリー』誌の編集長、『ヴォーグ』誌のシニア・ファッション・エディターとして、ニューヨークで多くの時間を過ごした。