A NEW CHAPTER FOR THE GLENTURRET

ラリックとグレンタレット―新たな歴史の幕開け

January 2022

250年の歴史を持ち、現存する蒸留所としてはスコットランド最古の「グレンタレット」がラリックグループと共に新たな歴史の幕開けを迎えた。

それは、両者が「真正なる起源」「卓越性」「情熱」の三位一体(トリニティ)を共有する完全な結びつきだ。

 

 

by melissa byrne  

photography the glenturret

 

 

 

スコットランド、タレット湖とグレンタレット蒸留所。

 

 

 

 スコットランド、クリフ郊外に位置するパースシャー田園地帯の奥深く「ホッシュ」の人里離れた場所に潜むように建つグレンタレット蒸留所は、高い丘に挟まれたタレット川のほとりにある。その蒸留器から立ち昇る蒸気は神聖で幻想的な雰囲気を醸し出している。テクノロジーや流行、性急さとは無縁のこの場所では、古い様式が高く評価され、手作業で真心を込めたウイスキー造りが実践されている。

 

 2019年3月、ラリックグループはスイスの実業家ハンスイェルク・ヴィス氏と共同で、世界中の多くの入札者の中からグレンタレット蒸留所の新たなオーナーとして選ばれた。

 

「ラリックは、この美しく特別な蒸留所の厳粛な管理者です。地元のサプライヤーと連携することで、私たちは自らのルーツに近づくことができます。それは、この地域やクリフの町にとっても素晴らしいことです。これまで倉庫の中で眠っていた多くの希少なシングルモルトの至宝を、世界と共有できることを楽しみにしています」とグレンタレット マネージング・ディレクター ジョン・ローリー氏はいう。

 

 

ラリックが製造するグレンタレット・プロヴェナンスデカンタ。

 

 

 

 

1763年以来、手作業で真心を込めたウイスキー造りを続ける

スコットランド最古の現役蒸留所

 

 スコットランドのクリフは、最高級のウイスキー造りに適した土壌と立地環境に恵まれた場所だ。1763年のある賃貸関連文書には、熱心な醸造家・蒸留家でもあったオクタータイアのマレー男爵家が所有していた、トゥロート蒸留所(グレンタレット蒸留所の最も初期の名称)に関する記述がある。

 

 1814年、マレー家はトゥロート蒸留所を地元のウイスキー製造者トーマス・マッキネス氏に売却し、トゥロート蒸留所は「ホッシュ」という名称に変わった。この名称は、1873年に「グレンタレット」の名称に変わるまで続いた。1825年から1890年にかけてはジョンおよびヒュー・ドラモンド兄弟が指揮を執り、ウイスキー造りに情熱を傾けた。ドラモンド兄弟の後を引き継いだミッチェル兄弟は、まずロンドンの上流社会にグレンタレットを紹介し、さらにオーストラリアや米国、南アフリカへと、世界中の市場にその名を広め、高い評価を得た。

 

 1923年、禁酒法や高い税率、禁酒運動への支持の高まりにより、スコットランドのウイスキー業界は事実上崩壊し、グレンタレット蒸留所も生産停止を余儀なくされた。しかし、少人数ながら情熱的な地元のチームによってグレンタレットは現在に存続された。彼らが倉庫で熟成を続けていた96,000ガロンのウイスキーを守ったおかげで、グレンタレット蒸留所は後世の人々に残されたのだ。

 

 1957年、グレンタレット蒸留所はジェームズ・フェアリー氏により買い取られた。フェアリー氏は「伝統的な蒸留手法を守り、ウイスキーの評価を高める」ことに着手し、その後20年にわたり成功を収めた。また、1980年にフェアリー氏によって開設されたスコットランド初のビジターセンターは世界的に成功し、わずか11年後の1991年にはグレンタレット蒸留所は100万人目の訪問者を迎えている。

 

 その後、所有者がハイランド・ディスティラリーズ社に変わったグレンタレットは、1991年に英国首相ジョン・メージャー氏を、2014年にはケンブリッジ公爵夫妻(ストラサーン伯爵夫妻としても知られる)ウィリアムとケイトを迎えた。ケンブリッジ公爵夫妻は、少量のウイスキーを楽しんだ後、1本のボトルに手作業でウイスキーを充填し、サインを入れた。そのボトルは蒸留所で昂然と保管されている。また、同日にはケンブリッジ公爵夫妻の訪問を祝した追加の樽詰めが行われた。樽詰めされた原酒は、特別な機会に販売するために保存される予定だ。

 

 

 

グレンタレット醸造所を訪れたケンブリッジ公爵夫妻。©Rob McDougall

 

 

 

 

新たな歴史を刻む―新旧の融合

 

「マッカランとの長年にわたるコラボレーションのおかげで、ラリックはスコットランドのウイスキー業界において重要な専門知識と信用、そして地位を獲得しました。グレンタレットとラリックが協業することをとても誇りに思います。両社はどちらも世界クラスのヘリテージを有し、もの作りに対する情熱を持っています。グレンタレットの精神とアイデンティティを後世の人々のために守ることこそ、私たちの仕事です」とラリックグループ シルビオ・デンツ取締役会長は語る。

 

 ラリックと共に、グレンタレットは新旧の最も良い点をすみやかに融合させた。そして2020年には、歴史に導かれた新たなアイデンティティが誕生した。1763年の蒸留所設立当時、最初の所有者として知られるマレー家紋章は、3つの銀の星、スコットランド国旗、およびオリーブの枝が絡んだ胸当てと紋章入り兜が描かれた、印象的な青色のものだった。グレンタレットの紋章の中の図案は、この起源からインスピレーションを得たものであり、エレガントなアイデンティティを作り上げている。

 

 今日もグレンタレットはマレー家との強い絆を保ち、総勢32名のスタッフのうち何人かは、世代を超えてこの地域で育った者だ。

 

 

ウイスキー製造者 ボブ・ダルガーノ氏。

 

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