Friday, May 19th, 2023

設立80周年を迎えた三陽商会が100年コートの決定版を発表

 三陽商会は、戦時中の1943年5月に創業者・吉原信之によって東京に設立された。戦後、物資が少ない中で入手可能な原材料からさまざまなものを手掛け、事業を模索。1946年に防空暗幕を用いて作った紳士用の黒いレインコートが同社のコート第1号になり、これが「コートのSANYO」としてその名を轟かすきっかけとなった。

 創業から80年が経った今年、その技術のすべてを集めた「100年コート 粋SUI」が発表された。100年コートは、三陽商会のタグライン「TIMELESS WORK. ほんとうにいいものをつくろう。」を体現するためにはじめられたプロジェクトだ。いつの時代も変わらぬ価値のある、顧客に永く愛されるコートを作ることが目指されている。

「100年コート 粋SUI」では、本格的な高密度ギャバジンの風合いのまま、既存の100年コートの生地から約30%の軽量化を実現している。テ糸に超長綿、ヨコ糸に中空糸(中が空洞になっている糸)を打つことで、上質な風合いを保ちつつ軽くすることに成功したのだ。耐久はっ水加工が施されているので雨水もよくはじく。

 ライナーは、上部に「光電子」中わたを使用。自身の体温によって生み出される自然なあたたかさをキープする。下部、腰回りにはSUPER120’Sの上質なウール素材を採用し、ツヤと手触りの良さ、軽さが追求されている。

 シルエットはクラシックかつモダンなバランスを追求。立体的なドレープにこだわり、長めの着丈で自然なAラインのシルエットを実現させている。服の重心が肩ではなく体幹に乗るようなパターンを作ることで、着用時に重さを感じにくくさせる設計技術が取り入れられている。

 コートの顔ともいわれる襟周りは、熟練の職人によって手仕事で一針一針仕上げられている。ボタン付けは「根巻き」といわれる技術により、しっかりと巻き付けることで、ボタンが立ち、留めやすく外れにくくなっている。裏地、ライナー地には、歌舞伎の「翁格子」から着想したオリジナルの「三陽格子」柄があしらわれている。

「100年コート 粋SUI」は長年コートの縫製技術を培ってきたコート専業工場「サンヨーソーイング 青森ファクトリー」にて生産されている。これぞ日本が誇る歴史と技術を結集した1着といえるのである。

 

 

 

text the rake編集部