俳優ポール・ベタニーの個人的証言

Paul Bettany ／ ポール・ベタニー1971年ロンドン生まれ。19歳からロンドンのドラマ・センターで学び、舞台俳優としてデビュー。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーを経て、1997年の『ベント／堕ちた饗宴』で映画初出演。『ROCK YOU!』（2001年）や『ダ・ヴィンチ・コード』（2006年）で注目を集める。『アベンジャーズ』や『アイアンマン』シリーズでは人工知能ジャーヴィスの声を担当。近年はさらに進化した人造人間ヴィジョン役でスピンオフに出演。

スエードスーツ、ニットポロ ともに参考商品 Ralph Lauren Purple Label
時計 property of Paul Bettany

　Zoomにありがちなスタートのトラブルを対処したあと、まずは挨拶を済ませた。ポール・ベタニーは、サウスカロライナ州の貸別荘でPCに向かっている。彼は目を凝らして受信トレイを見つめていた。

「……えーっと、どこだっけな。リストを確認しないと。『戦争の話はNG』とか、触れてはいけない話題のリストがあるんだ。色素欠乏症のカトリック修道僧で殺し屋という役をやったのに、色素欠乏症、カトリック、殺人の話が禁止されていたこともある。笑っちゃうよね（笑）」

　タブーリストはハリウッドのパブリシストから役者に渡されるのが常となっている。ベタニーは今回のインタビューでも厳守するつもりらしい。リストを見つけると、聞き取れないほどの小声でリズミカルに読んだ。話す内容には慎重にならざるをえないのだろうが、彼の率直な性格を考えると少し違和感があった。

　ベタニーは決して秘密主義な人間ではない。『ビューティフル・マインド』（2001年）で共演したジェニファー・コネリーに、彼がプロポーズした経緯も公表している。アメリカ同時多発テロで感じた恐怖がきっかけで、まだデートもしていないのに電話で伝えたのだという。それに息子ステランの卒業式の写真や、もうひとりの息子カイ（コネリーの連れ子）との写真もSNSで公開しているし、オスカーを獲得している妻がパジャマ姿でツイスターゲームをするのが好きなことや、家族で地下室をローラーディスコに改造するのを楽しんでいることも気軽にしゃべっている。また、ベタニーは自分が長年セラピーを受けていたことについても明かしている。