August 2022

THE PERSONAL TESTIMONY OF PAUL

俳優ポール・ベタニーの個人的証言

photography kathryn boyd brolin
fashion direction grace gilfeather
styling andrea serrano
special thanks to Kiawah Island Golf Resort

コート、ニットポロ、トラウザーズ すべて参考商品 Ralph Lauren Purple Label
シューズ M. Dumas & Sons
時計 property of Paul Bettany

 この映画は、現時点で公開日は未定だ。一方、ベタニーは別の作品で注目を集めることになりそうだ。それは、テレビシリーズ『A Very British Scandal(原題)』。制作陣は、批評家たちに絶賛された『英国スキャンダル ~セックスと陰謀のソープ事件』(原題:『A Very EnglishScandal』)と同じである。ただしストーリーとして続編ではない。前作はヒュー・グラント主演で、1960年代の英国の政界に衝撃を与えた殺害計画の疑惑をドラマ化したものだった。今作は、英国史上最も悪名高いアーガイル公爵と公爵夫人の離婚訴訟の真実に迫る物語だ。高額な報酬で雇われた錠前師が猥褻な写真を盗み出すという“リベンジポルノ”、そして公爵が妻と「関係を持った」と主張する88名の男性のリスト(大臣2名、ロイヤルファミリー3名を含む)などのエピソードを描く。ベタニーは卑劣な公爵を傲慢さ、軽蔑的な態度、溢れ出る特権意識を持って見事に演じている。

「このキャラクターにはソシオパス(社会病質者)な部分があると思う。彼は自分以外の視点から物事を見ることができなかったようだ。一連の出来事のゲーム的な側面を楽しんでいた。残酷なユーモアのセンスの持ち主だと思う」

 この作品には、戦後の英国が抱えてきたさまざまなテーマが含まれている。中でも当時のジェンダー観は、現代を生きる私たちにはまったく理解不能なものだ。

「もしあのスキャンダルが今起きたとしたら、彼女に下された判決は完全に違っただろうね。当時は彼女の行動そのものに世間の注目が集まり、彼女をそうさせた理由には目が向けられなかった」

 また、この役に挑戦するのは役者としてのチャンスでもあったとベタニーは言う。

「過去にも別のふたりの裕福な女性と結婚し、彼女たちからすべてを奪ってきたという、酷く尊大かつ悪意に満ちたナルシストで、ソシオパスだと思われる男の役。最近までずっと演じてきたチャーミングな人造人間とは、対照的だからね」

本記事は2022年3月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 45

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