インドのマハラジャ ーその知られざるライフスタイルー
in the land of KINGS

MAHARAJA OF SARILA
マハラジャが愛する至極のコレクション

April 2015

インド中央部に位置するマディヤ・プラデーシュ州の街、サリーラの
宮殿をメンテナンスしつつ、デリーの高級住宅街で暮らす
マハラジャ、ウペンドラ・シング氏を訪ねた。
photography takashi kobayashi
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気品溢れるエレガントな空間祖父から引き継いだ19世紀の絵画が並ぶ。カーペットは、「ベジタブルダイ」と呼ばれる野菜の色素を染料にした貴重なものだ。お后様は、雑誌メディアの「最も美しい20人」企画に選出されたほどの美貌を持つ。クラシック音楽の流れる優雅なリビングルームで、愛犬モジョとともに寛ぐ一枚。

Maharaj Upendra Singh Ju Deo of Sarila / マハラージ・ウペンドラ・シング・ジュ・ディオ・オブ・サリーラデリーから車で12時間ほど離れた、マディヤ・プラデーシュ州のサリーラのマハラジャ。デヘラードゥーンの名門スクールのほか、セザール・リッツ・カレッジでホテルマネジメントを学ぶ。現在は航空機部品会社や、コルカタ近辺でエネルギー会社を持っている。2010年に結婚。現在49歳(2015年1月現在)。

祖父から受け継いだ抜群のセンス 床を占めるカーペット、壁に並ぶ絵画、高音質のクラシック。あまりにも優雅なライフスタイルを連想してしまう。いったいどんな生活をしているのだろうか。

「旅行が好きで、年に10回以上は行きます」と語るウペンドラ・シング氏。ケニアではサファリ、ルーマニアではシューティング、スイスではスキーを楽しむ。プライベートジェットで旅することも。

「ここ数年は、毎年6月に1カ月間かけて、家族や友人を誘って船で地中海を旅しています。前回はトルコやギリシャでしたが、次は黒海の予定。5階建ての船で、サポートスタッフも20人以上同乗します」

 これぞマハラジャ。なんとも豪奢な旅だ。

 それにしてもこの洗練されたファッションセンスはどこからくるのだろう。

「元々興味があるのですが、祖父が大使館の仕事でヨーロッパのセンスを身につけていた影響もあると思います。服はイギリスのテーラーで作っていましたし、靴もジョン ロブを愛用していました」

 今、一番の夢は、自分の宮殿を持つこと。既に近日中に土地を購入する予定があるという。場所は世界遺産の寺院群で有名なカジュラーホーだ。

「16世紀のイタリア建築のようにして、ホテルとして開業する予定です」。そう言って、ルネサンスの天才建築家、アンドレーア・パッラーディオの建築写真集を見せてくれた。この抜群のセンスで注目のホテルを完成させるに違いない。

What’s a Maharaja? マハラジャとは

 19世紀末、イギリス統治時代のインドには560あまりの藩王国が存在していた。イギリスはこの植民地を管理するにあたり、「マハラジャ」にそれぞれの国を治めさせた。「マハ」=偉大な、「ラジャ」=王、という意味が示す通り、彼らは広大な領土と圧倒的な権力、莫大な資産を所有し栄華を極めた。そして誰もが憧れるような、絵に描いたような生活を送っていたのだ。

 その後インドは、1947年にイギリスから独立。さらに71年の憲法改正により称号が廃止となったため、事実上、マハラジャはインドに一人もいないことになった。マハラジャたちの所有する領土や宮殿、所有物のほとんどは、中央政府に奪われた。そのため、中には没落していった王族もいるという。

 しかし今もマハラジャとその子孫たちは確かにインドに存在する。王侯の地位がなくなってもなお、その力は絶大だ。彼らの多くは、政治に携わったり、メンテナンスの目的を兼ねて、古くなった宮殿をホテルや博物館としてオープンするなどしている。彼らのライフスタイルとはいったいどんなものだろうか。6人のマハラジャのライフスタイルを探りに、インドへ向かった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 02

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