LOVE! LIFE! LIVERANO!
リヴェラーノ&リヴェラーノ
October 2018
text yuko fujita
リヴェラーノ&リヴェラーノを支えるスタッフたち。今や世界中から、若者たちがアントニオへの弟子入りを志願して訪れる。やる気に満ちた後進を育てるのも、アントニオの大切な仕事である。
アントニオの昔の写真を見てほしい。ドニゴールツイードのジャケットを着た11歳の少年は、若い時分から着ることが大好きだった。活発で情熱にあふれ、ときに野心的で、それは大人になってからも変わらなかった。亡くなった兄のルイージはとても偉大な職人で、人がよすぎるほどボーノだったと今日まで語り継がれているが、彼は工房に閉じこもって仕事をするのが大好きな職人肌のサルトだったそうだ。そんな対照的な2人のコンビは、サルトリアを見事に切り盛りしていった。
実際アントニオは、仕立ての技術に優れているだけでなく、優れた慧眼で、その人の雰囲気に合わせて、新しいパーソナルな一面を最大限に引き出してくれる。一度でも彼の服を仕立てたことのある紳士たちは、彼の魔法にゾッコンだ。だからこそ世界中の洒落者たちが、わざわざ“リヴェラーノ詣で”に訪れるのだ。
ここでの主人公は客ではなく、魔法の服を仕立てるアントニオ・リヴェラーノだ。彼はどんな客であろうと、さりげなく自分のオススメを提案し、結果その人を自然なかたちでさらに洗練させる。そうやって、顧客との歴史を紡いでいるのだ。70年のキャリアは伊達ではない。
プーリアからフィレンツェに移った11歳のときに撮った写真。ドニゴールツイードのジャケットを見事に着こなしている。