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俳優:ミシェル・ヨー インタビュー「ガラスの天井は、粉々に打ち砕く!」

May 2023

映画デビューから約40年。レディ・アクションスターの先駆けであり、現在60歳のミシェル・ヨーは、アジア人として初めてアカデミー賞主演女優賞を受賞し、世界的な賞賛を浴びている。
text tom chamberlin
photography charlie gray
styling jordan johnson chung, elson lee & grace gilfeather
producer-director angelica zollo
special thanks Mandarin Oriental Residences, Beverly Hills

Michelle Yeoh / ミシェル・ヨー1962年、マレーシア生まれ。15歳のとき、ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・ダンスに進学。1984年に『デブゴンの快盗紳士録』で映画デビュー。ジャッキー・チェンらとの共演を重ねて香港を代表するアクションスターに。1997年、『007 /トゥモロー・ネバー・ダイ』でハリウッドに進出。2023年、主演を務めた『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でアカデミー賞主演女優賞を獲得した。

ジャケット、タンクトップ、トラウザーズ すべて参考商品 Ralph Lauren Collection
イヤーカフ、ピアス both by Anita Ko
時計「RM 67-01 オートマティックエクストラフラット」自動巻き、18KWG×ダイヤモンドケース、47.52×38.70mm。¥30,030,000 Richard Mille

 ミシェル・ヨーは、周囲の人々からまるで結婚式のメッセージボードに書かれた言葉のように高く評価されていて、非常に人望がある女性だ。その一方で、史上最高のレディ・アクションスターとしての側面も持つ。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022年。日本公開は2023年3月。以下『エブエブ』)では見事なカンフーバトルを披露しているが、今年1月のゴールデングローブ賞の受賞スピーチで触れていたように、彼女は昨年60歳になった。役のために自ら危険なスタントをこなし、戦闘機の壮絶なGに耐えることに驚嘆される、あのトム・クルーズと同い年なのである。

 ヨーが初めて映画に出演したのは、トム・クルーズのデビューから3年後のこと。しかし、彼女は『トップガン』が公開された1986年よりも前に、少なくとも3本の映画で高度な武術スタントを披露している。今年、彼女がゴールデングローブ賞を受賞したことにより、真のアクションスターとしてなぜトム・クルーズと同列に語られてこなかったのかという疑問を投げかけることになった。

夢を諦めて拓けた道 ヨーは1962年、マレーシアで生まれた。英国の植民地支配は既に終わっていたものの、その影響は残っていた。だから修道院付属の全寮制の学校で英才教育を受けた彼女の第一言語は、英語であった。

「校長のシスター・モーリーンから、クイーンズ・イングリッシュを使うよう言われていました。“OK”なんてダメで、“Yes”か“No”か“Maybe”だったんです」

 4歳からバレエを始めた彼女は、やがてバレエダンサーになることを夢見るようになった。15歳になると、両親とともにイギリスに移り、ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンスに進学する。

「両親は、私が何を学びたいか自分で決めることにとても前向きでした。父方の家族は学者ばかりで、父は弁護士でしたが、『医者か弁護士になりなさい』とか、『家名を守るためにこうあるべき』というプレッシャーを与えられたことはありません。当時から、マレーシアではイギリスに進学する子供が少なくなく、珍しいことではありませんでした」

本記事は2023年5月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 52

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