BECAUSE CRAFTSMANSHIP COUNTS
藤田雄宏が勧める、今オーダーすべき職人 05:SAIC
May 2023
photography giulio grisendi
Hiroyuki Murata / 村田 博行1984年生まれ。大学で建築を学びながら、独学で鞄作りをスタート。卒業後、アパレルを経て2009年にフィレンツェに渡る。CISEIの大平智生氏に師事したのち、2015年に独立してフィレンツェにてサイクを始動。
ひとつの鞄が、サルトリア フィオレンティーナのスーツにはもちろん、ジーンズでのカジュアルな格好にもスッと溶け込む。村田博行氏がフィレンツェの工房で手がけるサイクの鞄は、どれもそんな“中性的”な懐の深さを備えている。そこにあるのは“隙のない美しさ”ではなく、使い手にスッと馴染んでくれる“優しく柔らかな美しさ”。ハンドメイドの鞄にありがちな仰々しさが微塵もなく、鞄は常に自然体だ。それでこのオーラを醸し出せるのだから、やはり村田氏は凄い鞄職人なんだと思う。
優れたサルト フィオレンティーノが袖を通したときより美しく感じられる服を仕立てるように、サイクの鞄も手に持ったときにさらなる輝きを放つ。縦長のトートバッグにしても、ハンドルを握った“動”の中で新たに生まれる美しいフォルムがあり、ちゃんとそれが美しく表現される革が用いられている。ワンストラップショルダーのリュックも、柔らかなサルトリア仕立てのスーツに合わせたくなる。至ってシンプルな鞄なのに、どれもまったくもって唯一無二。本人は微塵も思っていないだろうが、彼はアーティストなのだ。
作品を眺めていて感じるのは、突き抜けたセンスのよさだ。上:フレンチカーフのメッセンジャーとワンストラップショルダーのリュックはともに¥285,000。下左:フレンチバッファローの縦に長いデザインがクールなトートバッグは¥240,000。ベルトは¥42,000〜。フィレンツェの彫りが入ったシルバー925バックルのクロコダイルベルトは¥98,000。下右:ミニクラッチは¥120,000、村田氏の手縫いによる革小物は¥52,000〜、ベルトは¥42,000〜。すべてオーダーのみの展開。
年2回のペースで帰国し、トランクショーを開催している。鞄のほか、革小物やベルトのオーダーも人気がある。納期は鞄が約年〜、革小物が約半年〜。
info@saicfirenze.com
本記事は2023年1月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION ISSUE 50