THE HISTORY OF THE PEA COAT

ピーコートの歴史

Tuesday, December 11th, 2018

さまざまなメンズアイテムは、

軍モノをルーツとしている。

機能的であること=いいデザインだからだ。

ピーコートはその白眉である。

 

by christian barker

 

 

 スパルタ人は、勇猛な戦士として知られていたが、実際には実用を重んじる人々だった。深紅のチュニック(キートンと呼ばれていた)を纏っていたのは、戦闘によって敵味方の血がついても、目立たないという理由からであった。

 

 レオニダス王とテルモピュライの戦いの時代から、何千年もの間、軍服というものは、まず“実用的”であることを優先してデザインされてきた。多くのメンズウェアは、軍服をルーツとする場合が多いが、それは機能的であることが、イコールいいデザインだったからだ。

 

 

 チノパン、Tシャツ、トレンチコート、ネクタイ(クロアチアの傭兵が深紅のスカーフをしていたのは、スパルタ人が深紅を纏っていたのと同じ理由ともされる)、カーゴパンツ、デザートブーツ、ボンバージャケット、アビエーターサングラス、さらにはメンズスーツそのものまで、戦場から生まれて来たファッション・アイテムは枚挙に暇がない。そして今回取り上げるピーコートも同類である。

 

 

 ブレザーなどと同じく、ピーコートは海軍をルーツとする服だ。18〜19世紀のオランダ、英国、アメリカの船員が着用したアウターに基づくと言われている。もともとはオランダ語の“ピージャッカ”が語源とされる。丈夫な青いウール布を意味する“ピー”と、メンズ用のヘビーなショート・ジャケットを意味する“ジャッカ”が合わさったものだ。念のために言うと、“ピー”は、英語でグリーンピースを意味する“ピー”とは、何の関係もない。

 

 ピーコートは、スタイリッシュであるばかりか、実に機能的な服だ。着丈は足が動かしやすいように、短くカットされている。多くの動きを必要とされる甲板の上で、このコートはとても実用的であった。

 

 

 ピーコートは、留め方を変えられる襟を持ち、8または10個のフロントボタンを持つ。雨風を防ぐように工夫された意匠だ。サイドポケットは、船員が両腕を温め、快適に過ごせるように縦形となった。さまざまな仕事に従事する下級船員のために、裾はカットされた。将官用の着丈の長いコートは、別物として“ブリッジコート”と呼ばれるようになった。

 

 伝え聞くこところによれば、19世紀半ばに、英国海軍の戦艦HMSブレザー号の船長が、謁見するヴィクトリア女王を感動させるために、乗員に金のボタンをつけさせたことが“ブレザー”の始まりだとされる。ダブルブレストの真鍮製のボタンがついた、ライトな生地のダブルブレステッドが“ブレザー”と呼ばれる理由はここにあったという。ピーコートに使われるのはもっと厚い生地だが、出自は同じ海軍である。

 

 

 ピーコートには、黒のホーンやプラスチック製の大きなボタンが付けられている。それは冷たく濡れそぼった手で、ボタンのはめかけを出来るようにするためだった。ボタンには、英西戦争時にエリザベス1世に仕えたカール・ハワード、ノッティンガム伯爵などに由来するロープ状の刻印が多く使われる。

 

 

 そんな戦時期をルーツに持つにもかかわらず、ピーコートは最終的に“平和と愛”の象徴となり、ブレザー・ジャケットとは違う意味を持つようになった。他の軍モノと同様に、頑丈で手頃な価格のピーコートは1950年代のビートニクスや60年代のヒッピーたちに愛された。70年代には、ロバート・レッドフォード主演の映画『コンドル』や、アリ・マッグロー主演の『ある愛の詩』で衣装として採用された。

 

 もともとピーコートは、30オンスのヘビーウール、またはウールとアクリルの混紡から作られていたが、今日ではより軽く、ラグジュアリーなモデルが出回っている。

 

 英国の老舗、ニュー&リングウッドは、ネイビーのウールフランネル製のダブルフェイス・バージョンをリリースしている。グレンフェルが作った一着は、ネイビーメリノ素材にメタル製のボタンを配し、レザートリムのポケットを備えている。

 

 

 同じく英国を代表するテーラー、ギーブス&ホークスは、レッドフォードが着ていたような、70年代風の大きなラペルのモデルを発表している。

 

 

 ピーコートは、現代でも最高にファッショナブルで、しかも財布に優しいアイテムだ。ここで紹介するどのピーコートを選んでも、かつての船員たちが享受したように、冬の雨風に対する備えは万全なものとなるだろう。

 

 

 

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