テーマは「裁判で勝てるスーツ」
平塚雄三さん
Thursday, May 10th, 2018
平塚雄三さん
弁護士
text kentaro matsuo photography natsuko okada
さまざまなご職業の方が登場するのが、このブログの特徴でもありますが、今回は弁護士先生です。都内の法律事務所に所属なさっている、平塚雄三さんです。
弁護士というと、一般の方はあまり馴染みがなく、ちょっとカタそうで、近寄り難いイメージですよね?
「裁判長、異議あり!」みたいな。
しかし今回、平塚さんにお会いして、その印象が大分変わりました。
「古着が好きで、よく高円寺あたりをうろついています。もともと阿佐ヶ谷の出身で、大学が高田馬場でしたので、中央線沿線が落ち着くのです」
ウチのフジタに、似ていますね。
「予備自衛官として登録をしています。普段は弁護士をしていますが、危急の際には、戦場で戦います。格闘訓練や、実弾を使った射撃訓練も受けていますよ」
えええ、マジですか?
「趣味はトライアスロンです。10年前から始めて、一昨年からは、ホノルルで行われる大きな大会にも出場しています。バイク40km、スイム1.5km、ラン10kmと、なかなかタフですね」
すごい。私なら、途中で死んでいます・・
まぁ、ぱっと見、ここまでお洒落な弁護士先生がいるとは驚きでした。それには理由があって、実は平塚さんのファッションの師匠は、メンズ・ファッション界の大ボス、赤峰幸生さんなのです。知り合ってから、もう10年以上経つそうです。
「赤峰先生には、お洒落は“基本のき”が大切で、そこをしっかり学ぶことが肝要なのだ、と教わりました。それと男は外見だけ繕ってもだめで、中身が伴わないとダメだとも諭されました」
はい、私も同じことを言われています・・
スーツは、アカミネ ロイヤルラインで仕立てたもの。テーマは“裁判で勝てるスーツ”です。
「モヘヤ製で、折り目正しく見えるところがいいですね。『これなら、どこへ出ても恥ずかしくない』と言われて作ったものです。もう10年も着込んでいますが、ようやく体に馴染んできたように思えます」
やはり弁護士先生は、きちんとした格好をなさっていますね。
「クールビズの影響でしょうか、裁判所でも、カジュアルな格好の方を見受けることがあります。ジャケットにノータイ・・中にはスニーカーの方もいます。しかし、私は法廷では必ずスーツを着ます。職業としての歴史や、顧客からお預かりしている事件の重みに相応しくない格好はできないのです」
シャツも、アカミネ ロイヤルラインのもの。
「先達から教わった所作として、私は打ち合わせの際には、白いシャツしか着ません。これは真っさらな気持ちで、お客様の話を聞くという姿勢を表しているのです。われわれが扱っているのは、国内の身近な案件が多い。例えば、離婚や兄弟間の確執、お金の貸し借りのトラブルなどです。いわば人間社会の裏側を見る仕事なわけで、相手の方の本当の気持ちを聞き出すということが、とても大切なのです」
タイは、やはり赤峰さんから薦められたリベラーノ。
時計は父親から譲り受けた、グランドセイコー。レザー・ストラップは、友人が作ったものに交換してあります。
シューズはアレン・エドモンズのコードバン製。
愛用の万年筆は、モンブラン。かつて日立造船の社長をなさっていたおじいさまの形見で“A LIFE DEVOTING TO SHIP BUILDING”(造船に捧げた生涯)とのメッセージが刻まれています。こういうものは、お金では買えませんね。
実は、平塚さんのひいおじいさまは、元・東京都知事、東龍太郎氏です。
「ダンディな人でした。いつも自宅の池の前で、シガーを燻らしていたのを覚えています。その匂いを嗅いだのが、大人の世界の入り口だったような気がします」
いまではシガーは、趣味のひとつだとか。
「私のスタイルの原点は、曽祖父にありますね」
なぜ、弁護士になったのですか? との問いには、
「弁護士が主人公のドラマを見て、かっこいいなぁと思ったのがきっかけです(笑)。私も正義の味方になりたい、と。しかし実際に弁護士になってわかったのは、弁護士は正義の味方ではなく“われわれを信頼してくれる人の味方”でなければならない、ということです。法廷では、何よりも勝たなければならない。日々是戦いです」
なるほど、この先生なら、何かあったとき、とても頼りになりそうです。できれば、顧客ではなく、友人としてお付き合いさせて頂きたいですが・・