「三方よし」のセレクトを目指す
田野浩志さん
Sunday, March 25th, 2018
田野浩志さん
guji代表取締役
text kentaro matsuo photography natsuko okada
2006年に京都にてオープンした第1号店を皮切りに、現在では全国に9店を構えるguji/ring(グジ/リング)の代表、田野浩志さんのご登場です。いま急成長しているショップの社長ということで、もっとギラギラした感じの方を想像していましたが、昨年初めてお会いして、そのイメージは180度変わりました。とても温和でユーモア溢れるキャラクターなのです。
「関西の出身なので、どこか“三方よし”(近江商人の心得を説いたもの)を目指しているのかもしれません。つまり“売り手よし、買い手よし、世間よし”、すべてが丸く収まるような商売です。以前は『成功していい生活をしたい』とか『ライバルを蹴落としてやろう』と思っていた時期もありましたが、今ではメンズ・ファッション業界全体を盛り上げていきたいと思っています」
田野さんはもともと、シップスのご出身です。大学生時代より京都のシップスにてバイトを始め、20代にして店長にまで登りつめました。私が「相当なやり手だったのですね」と聞くと、
「セールスについて言えば、そこそこは売る方でしたが、決して売り上げが突出してよかったわけではありません。ただ、少しだけ世渡り上手だったのかもしれません。当時のファッション業界にはコワイ先輩たちがたくさんいて、若い連中は皆ビビっていましたが、そういう人たちと付き合うのは得意でした」
なるほど、人付き合いって、仕事がデキることと同じくらい大切ですよね。 そんな“好感度”を大切にする姿勢は、着るものにも表れています。
オリジナルのシルク混スーツ¥120,000、ジレ¥35,000 、タイ¥24,000 all by guji
スーツは、gujiのオリジナルで、リングヂャケットにて作ったもの。
「リングヂャケットの大定番である184というモデルを、guji風に、ちょっとシャープにしたものです。素材はカルロ・バルベラのシルク混で、ほんのりとした光沢があります。世間では、英国調の渋い服がトレンドですが、お客さんからは、『もう少し、艶っぽいものが着たい』という声もよく頂くのです。そこでこのスーツを作りました」
シャツは、ルイジ ボレッリ。
「このところ、ピンホール・カラーやタブ・カラーを着ることがままあります」
タイは、アット ヴァンヌッチ。フィレンツェ発のネクタイ・ブランドです。
ブレスレットはエルメス。
「その昔、シップスの社員旅行でハワイへ行った時に買いました」
社員旅行でハワイとは、羨ましい限りです。
指輪はカルティエの3連とgujiオリジナルのカレッジリング。
時計はロレックス。
シューズはオールデン。
「オールデンは大好きで、シップス時代には随分と集めたものです。一時、12〜3足は持っていました。しかし、起業するときにお金がなくて、全部ヤフオクで売ってしまいました(笑)」
ちらりと見えるソックスはパンスレラ。なんとラメ入りです。
「ウチの店のテーマは、イタリアらしい色気と艶を大切にすることです。ですから、こういった一見コンサバな装いでも、シルク入りのスーツやサテンのタイ、コードバンの靴などで、ちょっとした華やかさを演出します」
インタビュー中もひっきりなしにお客さんが出入りしており、その度に田野さんは席を立って、丁寧に挨拶をされていました。それぞれの人の名前と近況を覚えておられ、関西弁でのジョークも交えつつ、話が弾みます。田野さんと話しているときのお客様は、笑顔が絶えませんでした。
gujiの躍進の秘密は、この方の傑出した“人当たりのよさ”にあるのだと思いました。
guji TOKYO
〒106-0032
東京都港区六本木7-5-6 KCテラス1F
Tel:03-6721-0027
https://www.guji.jp/