韓国クラシックの雄は日本好き
ショーン・ファンさん
Monday, April 25th, 2016
ショーン・ファンさん
ヴィッラ デル コレア オーナー
text kentaro matsuo photography natsuko okada
THE RAKE本誌でお伝えしている通り、近年アジア各地において、クラシック・ファッションが盛り上がっています。香港のジ・アーモリー、北京のブリオなど、それぞれの都市にはキーとなるショップがあり、キーとなる人がいます。そして韓国、ソウルにおけるキーマンは、今回ご登場のショーン・ファンさんで間違いありません。
「韓国のファッション界は、いま二極化の時代を迎えています。マスであるファスト・ファッションと、裕福層を相手にしたハイエンド・ファッションです。ミドルゾーンがなくなってしまった。そしてハイエンドにおいては、クラシックなスタイルが、とても盛り上がっています。われわれがお手本としているのは、イタリアなどの欧州よりも、むしろ日本です。今日私が着ているのも、日本のブランドばかりですよ」
フレスコの生地で仕立てられたダブルスーツは、チッチオ。ご存知、上木規至さんが手がけるテーラーです。最近、海外のファッショニスタで、ここのスーツを着ている人が本当に多いですね。
「日本のクラフツマンシップを感じられるところが、気に入っている理由です。シャープで、セクシーで、ロックンロールのビートが聞こえて来るようです」
シャツはシモーネ・リーギ。フィレンツェのタイ・ユア・タイで長く店長を務めていた同氏が興したブランドです。ショーンさんは、2012年から昨年春まで、フィレンツェに住んでいたので、フィレンツェのブランドやショップには、特に造詣が深いのです。
タイはセブンフォールド。以前私のブログにもご登場頂いた、加賀健二さん率いるブランドで、日本人がやっているブランドですが、やはり工場はフィレンツェにあります。
時計はパテック フィリップのゴールデンエリプス。ケースの曲線が美しい、パテックのマスターピースです。
「どちらで買ったのですか?」との問いに、
「これは父親からプレゼントされたものです」とのお答え。
さすが、韓国クラシックの雄は、育ちも良さそうですね。
シューズはイル・ミーチョ。フィレンツェ在住の深谷秀隆さんが手がけるビスポークで、これもフィレンツェ時代に購入しました。
こうして見ると確かに、イタリア在住、またはイタリアでかつて修業した日本人が興したブランドばかりです。
「私の着こなしのテーマは“シンプル”ということです。かつてはポケットスクエア(チーフ)もしていましたが、今はしなくなりました。クラシック・スタイルのゴールはミニマリズムだと思います」
彼のショップ、ヴィッラ デル コレアでは、アンブロージ、チャルディ、ダルクオーレ、サンクリスピンなど、錚々たるブランドを扱っています。今回は、ヴィンテージ・アイウェアのブランド、レトロ・スペックスのプロモーションのための来日です。
「レトロ・スペックスは、今から30年前にジェイ・オーウェンスという人物によって設立されました。1870〜1970年代までのヴィンテージ・アイウェアを扱っています。コレクションは、ヒストリカル、ミュージアムなど、6つに分かれています。この時代の物は、今と違って、一生使われることを前提に作られていました。だから、マテリアルそのものが違うのです。ワイヤーフレームはゴールド製ですし、ヒンジも別物です」
価格は1000USドル〜と値は張りますが、一生物だと考えれば、決して高くはないでしょう。
今回の撮影は今春、元ジ・アーモリーのイーサン・ニュートン氏が東京、神宮前に開いたショップ、ブレイスランズで行ないました。最近、THE RAKE編集部も、すっかり入り浸っているところです。
ショーンさんのような人が旗手となって、アジアのクラシック・ラグジュアリー・ファッションは、ますます盛り上がっていくことでしょう。彼らが日本のブランドを愛してくれているというのは、とても嬉しいことですね。