オールドハリウッドの万華鏡の輝き“ユーリ＆ユーリ”

サヴィル・ロウの洗練と伝統に、ビートニクなアイデアを融合させたユーリ＆ユーリは、独創的で唯一無二の美学を体現している。

 

by hugo curran 

 

 

 

　ユーリ＆ユーリはこだわりのコレクションで、サヴィル・ロウのイメージを塗り替え続けている。ハリウッドの黄金時代と、ボヘミアンシックを融合させているのだ。それは、非常に独創的な美学だ。60年代のアイビーリーグのスポーツウェアの要素も、スタイリッシュに取り込んでいる。彼らの最新コレクションは、いつもわれわれに驚きをもたらしてくれる。今回のコレクションも、期待に違わぬものだった。素晴らしいテーラード・トラウザーズとショーツ、印象的なニットウェア、そしてユニークなアウターウェアなどが発表された。

 

　シュールなデザインのドレッシング・ガウンで知られる彼らは、このサイケデリックなタッチをニットウェアにも取り入れてきた。カーキとモカのワンピース・ポロシャツは、サイケデリックな模様で埋め尽くされた、マイケル・イングリッシュの60年代のポスターデザインを彷彿とさせる。イングリッシュは、ジミ・ヘンドリックスをはじめとする当時の偉大なミュージシャンのイラストを手がけた人物だ。

 

　彼は1960年代に、ロンドンのケイル・ストリートにあった、マイケル・レイニーのファッション・ブティックの有名な壁画も描いている。その店“ハング・オン・ユー”は、ピーコック革命の中心にあったブティックで、ビートルズ、ストーンズ、ザ・フーにも愛されていた。昔を知る客は、こう回想する。

 

「ミック・ジャガーが前日に買っていたかもしれない花柄のシフォンシャツを、ファンたちは3倍の値段を払ってでも手に入れようとしていました」

 

　もしユーリ＆ユーリのポロシャツが、このブティックで売られていたら、絶大な人気を誇っていたことは間違いない。しかし、彼らのポロはヴィンテージの生地を手直しするのではなく、日本の特許を取得した繊維“セリエ”を使用している点が違う。透かしの入ったキャメルブラウンのパターンで、完全に手作業で作られている。

 

　彼らのクラフトマンシップへの無限のこだわりは、例えば襟部分に見て取れる。ワンピース構造になっており、補強ステッチが施され、ジャケットの下にきれいに収まるように作られている。もしダンスをしていて、もう少し派手な格好をしたいと思ったら、ジャケットのラペルの上に襟を出しても着られるようになっている。

 

 

 

 

　ビート・ムーブメントは、シュール・レアリスム、ジャズ、ポスト・モダニズムなど、さまざまな要素を独自の表現方法で融合させたものだ。見る人によって、その解釈もそれぞれ違う。メンズウエアの世界における、ネック・ジャージーやトリム・ジャンパーも、そんなアイテムだ。高度な職人技で作られたこれらの服は、どんなスタイルにも合わせることができるのだが、アイテムとしての明確なポジションはない。ビートニク・ジェネレーションにインスパイアされた彼らのネック・ジャージーは、メンズウエアの領域を超えたアイテムなのだ。

 

　イタリア産のソフトなメリノウールを使用し、すべて手作業で作られたこのジャージーは、オリーブ色のコントラストの効いたリブの縁取りを特徴としている。オリーブとライトメタリックブルーのブレンドは、美しいパターンを生み出し、実験的な効果を演出している。体にフィットしているので、Tシャツやニットの代わりとして、ハイウエスト・トラウザーズにタックインして着こなすと、実にクールだ。

 

 

 

 

　美しいモカブラウンの色合いのクリフォード・トラウザーズは、ジャージーとの組み合わせに適したすべての要素を備えている。ハリウッド・スタイルのストレートレッグで仕立てられたこのトラウザーズは、下半身にクラシカルなボリューム感を生み出す。

 

　ジャージーのタイトなフィット感を引き立て、上半身を強調する古のハリウッド・スタイルを実現している。素材はメリノ・ウーステッド・ウールを100％使用しており、ウエストはダブル・アジャスター式で、隠しバックルとタブが付いている。ダブル・プリーツは腰全体にゆとりをもたらし、快適な履き心地を実現している。

 

　フィット感の悪いショーツばかりが出回る市場において、ユーリ＆ユーリの伝統的なクリフォード・ショーツは、その名を冠したトラウザーズとほぼ同じ特徴を持っている。通常のショーツよりウエストが高めに設定されているので、シャツやポロシャツ、ネック・ジャージーを着ていると、ウエスト周りに釣り合いが生まれ、すっきりとしたバランスになる。素材には上質なエジプト・シルクがブレンドされている。1922年にエジプト王ツタンカーメンの墓を発見した、ハワード・カーターと第5代カーナヴォン卿の、ルクソールでのスマートな装いを思い出すかもしれない。

 

　ユーリ＆ユーリのテーマであるヴィンテージ・カラーに合わせて作られたのが、ボー・アイリッシュ・リネン・シャツだ。ウルトラ・サステナブルなアイリッシュ・リネンから手作りされており、50年代のハリウッド風なカッタウェイ・カラーが採用されている。夏には、さらりとしたカジュアルなエレガンスを演出したい。そんな時、この軽量なシャツほど、役に立つアイテムはないだろう。

 

　1年以上前に、ポロシャツに全く新しい風合いを与える特許取得済みの繊維“セリエ”を使用して作られた、ユーリ＆ユーリのラリソン・シャツを発見した時は感激した。この繊維はポロシャツに、全く新しい風合いを与えてくれる。そして彼らはいま、この繊維をキグレー・ジャージーにも使い始めている。このユニークなクリケット・セーターは、この繊維を使用した丈夫なワッフル織りの生地で織られている。クラシックなVネックと先進的な素材のコントラストが面白い。

 

 

　ヨーロッパでは夏の後半になると、暑い午後が涼しい夜に変わることがあるが、このジャージーはそんな時のスタイリッシュなオプションとなる。

 

　気温の変化に対応できるもうひとつのオプションは、グレイのシャーウッド・ショールカラー・ジャージーで、同じ特許繊維を使用し、クールなツイストのパターンを形作っている。