We're Smart Japan Award in Nagaoka, Niigata
世界的な食のアワード「We’re Smart® ベストベジタブルレストラン」の授賞式が新潟で開催されたわけ
November 2024
世界49か国のレストランを評価するグルメガイド「We’re Smart® Green Guide」が、新潟・長岡で「ベストベジタブルレストラン」の日本トップ10を発表した。この地が選ばれた理由と、その舞台裏を探る。
text yukina tokida
去る9月、世界的なグルメガイド「We’re Smart® Green Guide」による「ベストベジタブルレストラン」日本トップ10が、新潟・長岡にて発表された。
このガイドは、世界49か国1,500以上のレストランを評価し、最も優れたベジタブルレストラン(野菜や果物をメニューのベースとした創造的でサステナブルな料理を提供するレストラン)を紹介するもの。世界のベジタブルガストロノミーを牽引するガイドであり、サステナビリティに貢献するレストランを広く知ることができる。
評価は、レストランの規模や、ベジタリアン/ビーガン向けメニューの有無に関係なく、季節の食材の創造的な活用方法やメニューに占める果物や野菜料理の割合、持続可能性への取り組みなどに基づいて行われる。またランキングは星の数ではなく、1から5までの「ラディッシュ」の数で評価される仕組みとなっており、現在、最高評価の5ラディッシュを保持している全世界のレストラン126軒のうち、日本からは9軒が選出されている。
「We’re Smart®」の創業者・発起人であるフランク・フォル氏。
「We’re Smart® Green Guide」のアイコンは、可愛らしいラディッシュ。このラディッシュの数で評価ランクを示している。
今回、発表の場として新潟・長岡が選ばれたのは、新潟県のガストロノミーへの積極的な取り組みと、地域食材の多様性や質の高さが評価されたから。新潟は、酒造りや味噌、漬物作りにも欠かせない米をはじめ、名物「栃尾あげ」の原料となる大豆、レンコンをはじめとする根菜類、さらには京野菜や加賀野菜にも匹敵する伝統野菜など、幅広い食材の宝庫なのだ。
特に魚沼・長岡地域では、古くからの伝統野菜がいまも多く残っており、たとえば食べる場所や調理方法によっては辛味が少なく甘味さえ感じられる唐辛子「かぐら南蛮」や、20種類以上の在来種を誇る「長岡なす」がある。険しい山々と豪雪に囲まれた地理的条件が、独自の食文化と伝統野菜の継承を可能にしてきた。
上:熟した「かぐら南蛮」。種の脇の白い筋の部分が非常に辛いため、この場所を避けると子供でも食べられるという。辛い部分を避けるとパプリカのような甘味も感じられた。左下:他の唐辛子と比べて丸っこい形が特徴。右下:長岡市の山古志地区で「かぐら南蛮」農家を営む長島久子さん。保存会をつくり、伝統を守り続けているひとり。
上:見渡す限りどこまでも続くれんこん畑。左下:長岡・中之島地区の名産である「大口れんこん」。この地で育てられているのは「エノモト」と「ダルマ」の2種類。収穫には強力な水圧が必要不可欠。水の力で土から掘り出し、土を洗い落とす。右下:れんこん農家の中島ご夫妻。農家の数が減っている中、この地域のれんこん産業を支える若い力。
こうした豊かな食文化が育まれてきた長岡を舞台に発表された、日本のベストベジタブルレストラントップ10は以下の通り。
1.【和歌山】Villa Aida(5ラディッシュ)―小林 寛司
2.【新潟】早苗饗(5ラディッシュ)―桑木野 恵子
3.【東京】六雁(5ラディッシュ)―秋山 能久
4.【東京】Florilège(5ラディッシュ)―川手 寛康
5.【東京】Maz (5ラディッシュ)―サンティアゴ・フェルナンデス
6.【山梨】Tsushimi(5ラディッシュ)―都志見 セイジ
7.【東京】Faro(5ラディッシュ)―浜本 拓晃
8.【京都】草喰なかひがし(5ラディッシュ)―中東 久雄
9.【東京】Narisawa(5ラディッシュ)―成澤 由浩
10.【石川】Respiracion(4ラディッシュ)―八木 恵介、梅 達郎
授賞式後には、2位に輝いた早苗饗の桑木野 恵子シェフと、特別ゲストシェフとしてスペイン・バレンシアから来日していたLa Salitaのベゴーニャ・ロドリゴシェフによる、旬の食材を使ったプラントベースの特別ランチが提供された。
ロドリゴシェフが大きな鍋で炊いてくれた、スペインのアルブフェラ米とバレンシア産ボデガス・ノドゥスワインを併せたパエリア。
新潟のブランド米コシヒカリをはじめ、山菜や栃尾揚げ、ブランド野菜の大口れんこんやかぐら南蛮など新潟の特産品をふんだんに使った桑木野恵子シェフによる見事なランチ御膳。東京ではなかなかお目にかかれない貴重な山菜もふんだんに使われていた。
日本が誇る多様な食文化を再発見し、それを世界に発信する場となった今回の授賞式。今回選ばれた各レストランは、ただおいしい料理を提供するだけでなく、食材の持つ魅力や地域の伝統を生かし、環境に配慮した未来のガストロノミーを提案している。
各地域の豊かな食文化を支えるベジタブルレストランは、これからもさらに国内外で注目を集めるだろう。持続可能なガストロノミーをリードし、日本の食文化をさらに広めていく役割を担っていくに違いない。
会場に駆けつけた受賞シェフたち。左から順に、八木 恵介氏(Respiracion)、浜本 拓晃(Faro)、サンティアゴ・フェルナンデス氏(Maz)、中東 久雄氏(草喰なかひがし)、桑木野 恵子氏(早苗饗)、秋山 能久氏(六雁)。4位に輝いた川手シェフも出席していたが、残念ながら写真撮影までいられず帰京。
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