Vinile Remasters the Classic Range Rover
VINILE、レンジローバー・クラシックを「リマスタード」
September 2025
伝説のレンジローバー・クラシックが、マラネッロのクラフトマンシップと音楽的な感性によって新たに生まれ変わった。〈VINILE〉が提案するのは単なる復元ではなく、未来へと向けた「リマスタード」という新たなアプローチである。
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スーパースポーツの聖地、イタリア・マラネッロに拠点を構える新鋭ブランド〈VINILE(ヴィニーレ)〉が、ニューモデルとなるレンジローバー・クラシックを完成させた。彼らが提案するのは、過去をそのまま修復するレストアではなく、音楽における「リマスタリング」の概念を自動車に投影したまったく新しいレストモッドのかたちである。
公式デビューは2025年、モナコ・ヨットショー。ミラノ・デザインウィークでコンセプトカーを披露してからわずか数か月後に、走行可能な実車を現実のものとした。
完成した1号車はメタリックグリーンのボディに、ブラックルーフが組み合わされている。1970年のオリジナルが持つ端正なプロポーションを守りつつ、各パネルは手作業で磨き直され、パネルギャップは極限まで詰められている。
バンパーはシャープに仕立て直され、グリルやライト類は新設計されている。リアにはディフューザーやLEDテールランプに加え、ホワイトポプラ材の装飾が配され、外装と内装をつなぐ役割を果たしている。
キャビンは「四輪のラウンジ」をコンセプトに設計され、約45平方メートルものバクスター社製高級レザーとホワイトポプラ無垢材が惜しみなく使用されている。ボヘミアン・チョコやカシミア・メントといった色彩で統一され、触感と色彩の調和を追求。クラシックの再現ではなく、現代的なラグジュアリー空間となっている。
さらに10.1インチHDタッチスクリーンやApple CarPlay/Android Autoの搭載、航空機を想起させるオーバーヘッドスイッチ、ドア下に車のアウトラインを投影する照明など、数々のテクノロジーが組み込まれている。
エンジンはオリジナルのV8をベースに全面リファインされ、出力は167hpから約200hpへと進化。ややリアが沈んでいたオリジナルのサスペンションはニュートラルな姿勢に修正され、16インチ径を維持したホイールもコンケーブを強めて、ワイドなタイヤが装着されている。これらによって、走りの安定感と存在感を両立させている。
この「リマスタード」レンジローバー・クラシックは限定15台の第1号車で、価格は31万ユーロ(約5,000万円)から。すべての車両が個別仕様で製作され、顧客の要望に応じてフルカスタマイズすることが可能だ。すでに3ドア版やロングホイールベース版の開発も進行中だという。
VINILEが提示するのは「過去を蘇らせる」のではなく、「未来へとリマスタードする」新しいラグジュアリーのかたち。マラネッロのクラフトマンシップと音楽的な発想を融合させたこの一台は、レストモッド文化に新たな一石を投じるに違いない。















