Unlocking Hong Kong with Marriott Bonvoy
マリオット ボンヴォイで体験する、香港の現在地
January 2026
text yuko fujita
マリオット・インターナショナルが展開するロイヤルティプログラムであるマリオット ボンヴォイは、世界30以上のホテルブランドを横断して利用できるのが最大の特徴だ。高級から実用まで、滞在のスタイルに応じてさまざまな選択肢が用意されている。
ザ・リッツ・カールトンやセントレジスは、非日常性やサービス体験を重視するラグジュアリーブランドであり、JWマリオットは節度と安心感を軸に、都市滞在やビジネスにも適した上質さを提供する。Wホテルはデザインや音楽性を前面に打ち出し、都市のカルチャーと強く結びつく存在だ。
実用寄りでは、マリオットやシェラトンが、世界中で安定したクオリティを担保する中核ブランドとして機能している。さらに、ルネッサンスやオートグラフ コレクションは、チェーンでありながら土地の個性や物語性を重視する立ち位置にある。
マリオット ボンヴォイでは、これらすべてをひとつの会員制度で横断できる。ポイントはホテルの宿泊だけでなく、Marriott Bonvoy Momentsを通じて、スポーツ観戦やコンサート、特別な食体験などにも使える。単なる「泊まるためのプログラム」ではなく、旅先での時間の使い方そのものを広げてくれるサービスだ。
都市滞在に最適化されたJWマリオット香港
さて、マリオット ボンヴォイの中でも、私がとりわけ好んでいるホテルのひとつが、JWマリオットである。
JWマリオットは、マリオット ボンヴォイの中では上位に位置づけられるブランドだが、リッツ・カールトンのように非日常性や演出を前面に押し出すタイプではない。軸にあるのは、安心感と節度、そして大人の落ち着きだ。その距離感が、私には心地よい。華美になりすぎることはなく、長期滞在にも向いているし、仕事と休息を同時に求める滞在にもよくなじむ。
土地の個性を強く打ち出すブティック系とも、徹底した非日常を提供するリゾート系とも異なる。どの都市にあっても一定の質と空気感が保たれている点こそが、JWマリオットの最大の価値だ。都市で過ごす時間を、ほんの少し整えてくれる存在。その立ち位置を、JWマリオットは一貫して守っている。
1990年代に開業したJWマリオット香港の客室も、そうしたブランドの考え方を素直に反映した、実用性と安定感を重視する空間である。内装は落ち着いた色調でまとめられ、過度な装飾は見当たらない。仕事をするにも休息を取るにも大変使いやすく、一切のストレスを感じない。眺望は部屋の位置によって異なるが、室内の快適さそのものが成立している点に、このホテルらしさが表れている。
JWスイート ハーバービュー。香港の街と海を正面に据えた、実用性と落ち着きを重視する客室だ。
本国アメリカを含むJWマリオット全体に共通する、「滞在を安定させること」を優先する姿勢。その考え方は、香港のJWマリオットの客室にも一貫して貫かれている。
そんなJWマリオット香港の中華料理レストラン「Man Ho」は、THE RAKE読者にぜひともオススメしたい名店だ。
JWマリオット香港の中華料理レストラン「Man Ho」。落ち着いた設えと節度ある空間の中で、広東料理の正統と向き合える。
2021年から5年連続でミシュラン1つ星を獲得しているMan Hoの料理は、広東料理の王道を踏まえながら、火入れや香り、余韻の組み立てが的確で、ふとした一皿が強く印象に残る。派手な演出で驚かせるのではなく、食後に静かに思い返したくなるような味わいがある。点心や海鮮料理に共通しているのは、素材を前に出そうとする無理がないことだ。広東料理らしい軽やかさを保ちながら、食後にはきちんと満足感が残る。空間やサービスもまた、料理の印象を自然に支える距離感が心地よい。
シグネチャー料理のひとつである「杏仁濃湯煎花膠」。広東料理の高級食材である魚の浮き袋を乾燥させた花膠(かこう)の香ばし煎り焼き アーモンドスープ添え。
そしてもうひとつ、JWマリオット香港の魅力として挙げたいのがプールだ。都市の中心にありながら、喧噪から一段距離を取った空気が保たれている。7階という下層階に位置する屋外プールは、視界が大きく開けるタイプではないものの、周囲に立ち上がる高層ビルを見上げる構図は、この場所ならではの心地よさがある。
私は、アジアの都市圏のプールに特有の、水面からビルを仰ぐこの感覚に惹かれる。都市の密度や重さを、視線の角度から実感できるからだ。
JWマリオット香港の7階に設けられた屋外プール。都市の中心にありながら、視線は空へと抜け、ビル群を仰ぐ構図がこの場所ならではの心地よさを生む。
JWマリオット香港の「JW Garden」。屋外プールに隣接するガーデンラウンジで、都市の中心にいながら時間の流れが一段落ち着く。
記憶に刻むためのラグジュアリー
ザ・リッツ・カールトン香港
ザ・リッツ・カールトン香港は、2011年に開業した。西九龍のICC(International Commerce Centre)の最上階層、102階から118階にある。世界でも最も高層に位置するホテルのひとつであり、香港では最も高い場所にあるホテルだ。
西九龍のICC最上層である102~118階(高さ490m)に位置するザ・リッツ・カールトン香港。都市を見下ろす高さそのものが、このホテルの体験価値を決定づけている。
JWマリオットを安定と節度を担う存在と位置付けるなら、リッツ・カールトンは非日常と演出を引き受けるブランドであり、滞在そのものを体験に変え、日常から切り離された非日常を前提に設計されている。
ザ・リッツ・カールトン香港102階の「Tosca di Angelo」。料理と眺めが拮抗することで生まれる、非日常の食空間だ。
102階のイタリアンの「Tosca di Angelo」は、そんなザ・リッツ・カールトンの思想を料理で体現したレストランだ。空間と眺望は昼から凄まじい。味は構築的で、素材の力と技術を見事に前面に出している。料理と眺望が並走するひとときは、香港の思い出を生むとっておきのシーンになるだろう。
「Tosca di Angelo」から望む香港。都市と海、その奥行きまでを一望する高さが、このレストランの体験を決定づけている。
海老とトマトソース&フレッシュバジルのペーストでまとめたマンチーニ社のパッケリ。素材の甘みと香りが素直に重なる。
世界で最も高い位置にあるルーフトップバー、118階の「OZONE」も同様だ。昼間に訪れても、夜の高揚感とは別の、静かな中での特別な浮遊感を味わえる。高さが主役であり、バーというより、都市の上空に設けられた装置に近い。香港のすべてを見下ろすという行為そのものが、忘れられない体験になるはずだ。
118階に位置するバー「OZONE」。高さそのものが演出となり、都市の夜を別の次元へ引き上げる。
昼のOzone。光が主役になり、空間の構造と素材感だけが静かに立ち上がる。
428mの高さで飲むBarons de Rothschildが手がけたザ・リッツ・カールトンのシャンパーニュは格別だ。
客室もまた、このホテルの立ち位置を裏切らない。大きな窓、高さを意識させる構図、意識的に演出されたラグジュアリー。落ち着くための部屋というよりは、特別な滞在を記憶にしっかりと刻むための空間といえよう。
ザ・リッツ・カールトン香港は、マリオット ボンヴォイの中でも、非日常性を最も分かりやすく体現する存在なのだ。すべてが日常から距離を取る方向に設計されている。都市にありながら、意識的に都市との距離をとるホテルなのだ。
引き算ではなく、完成度で成立する。ラグジュアリーを極めたザ・リッツ・カールトン・スイート。
同じくザ・リッツ・カールトン・スイートの寝室。
空港跡地に生まれた都市型エンターテインメント拠点
カイタック・スポーツパーク
カイタック・スポーツパーク。かつての空港跡地に整備された、香港の新たなスポーツとエンターテインメントの拠点。
2024年から本格的に稼働しはじめたカイタック・スポーツパークは、スポーツ、レジャー、エンターテインメントを一体化した複合施設である。総面積28ヘクタールにおよぶこのエリアは、かつて香港国際空港があったカイタック地区の再開発プロジェクトの一環として整備された。
中核となるのは、開閉式屋根を備えた5万人収容のメインスタジアム「カイタック・スタジアム」だ。1万人規模のコミュニティスポーツや各種イベントに対応する屋内スポーツセンター「カイタック・アリーナ」、5,000人収容の公共施設「カイタック・ユース・スポーツ・グラウンド」のほか、日常のレジャーに利用できる広大なオープンスペース、リテールエリア、ウォーターフロントに面したダイニングも整備され、ここでの体験はスポーツ観戦にとどまらない。
マリオット ボンヴォイは、このカイタック・スポーツパークと複数年の提携を結び、創設ホテルパートナーとしてエリアの魅力を広げている。カイタック・スポーツパークは、国際的なスポーツ、コンサート、カルチャーイベントが集まる新たな拠点として、香港滞在の選択肢の中で存在感を増している。
今回の滞在中、マリオット ボンヴォイを通じてカイタック・スタジアムのホスピタリティスイートを予約し、香港対日本のラグビー親善試合に合わせて利用した。スイートにはサービススタッフが常駐し、アルコール類を含むフリーフローのドリンクやケータリングによる食事も充実しており、観戦は自然とイベントになる。スタジアムの熱気はしっかり届きながら、空間には余裕があるそのバランスが、観戦の楽しさをさらに引き上げてくれた。
カイタック・スタジアムのホスピタリティスイート。スタジアムの熱気を正面に据えた、マリオット ボンヴォイの特別な観戦席。
カイタック・スタジアムでは、既にCOLDPLAYのコンサートも開催されたそうで、今後も有名アーティストの公演が開催されていく予定だ。競技場であり都市のエンターテインメントの中心にもなるカイタックは、香港の新たな注目スポットとして覚えておきたい。
























