The Ritz-Carlton, Nikko Lakehouse×villa aida
「ザ・リッツ・カールトン日光」、小林寛司氏とタッグを組みレークハウスを一新
November 2024
奥日光の優美な自然を感じる「ザ・リッツ・カールトン日光」の洋食レストラン「レークハウス」が、「villa aida(ヴィラ アイーダ)」のオーナーシェフ 小林寛司氏とタッグを組んだ。ミシュラン二ツ星とグリーンスターをダブル受賞し、We’re Smart ベストベジタブルレストラン 日本トップ10アワードで最高位を受賞した、今最も注目されているシェフのひとりである。小林シェフとともに創る、栃木の野菜や農産物を主役にした新たなメニューとはいかなるものか。生まれ変わった同レストランを訪れた。
text chiharu honjo
Kanji Kobayashi/小林 寛司
和歌山県生まれ。21歳で渡伊し、トスカーナ州やカンパーニャ州などイタリア各地のレストランで修行。当時三つ星の「ドン・アルフォンソ1890」でパスタ部門のシェフを務め、1998年に帰国。同年12月、故郷である和歌山県岩出市に「Ristorante AiDA(リストランテ アイーダ)」をオープン。2007年にソムリエの夫人が加わり夫婦で営むレストラン「villa aida(ヴィラ アイーダ)」となる。隣接する畑で約300種の野菜やハーブを育て、その日に収穫したものを中心に、近隣の魚介、家禽、ジビエを合わせた料理を提供する「ガーデンガストロノミー」として、一日一組のみゲストをもてなす。数々の受賞歴があり、世界中から美食家が訪れる予約の取れないレストランとして名高い。直近の主な受賞歴:『ミシュランガイド京都・大阪+和歌山 2022』で二ツ星、グリーンスターをダブル受賞/『2024年 We’re Smart ベストベジタブルレストラン 日本トップ10アワード』にて最高位受賞/『Asia’s 50 Best Restaurants』にて2022年・2023年 2年連続14位。
穏やかに湖水を湛える中禅寺湖のほとりに佇み、眼前に雄々しくも美しい男体山が広がる「ザ・リッツ・カールトン日光」。同ホテルは、紅葉の名所として知られるいろは坂を越えた奥日光に位置し、華厳の滝や世界遺産「日光の社寺」にもほど近い、日光国立公園の中に建つ。古くからフランスやベルギー大使館の避暑地として別荘があるほど人々に愛されてきたエリアで、四季折々の優美な表情を見せる安息の地だ。
その離れで、栃木の自然が育んだ個性豊かな旬の味わいを堪能できるのが「レークハウス」である。ボートハウスをコンセプトにした店内は、高級感がありながらも温もりあふれる雰囲気に包まれており、中禅寺湖に生息する動植物のスケッチなどによるアートで彩られた瀟洒な空間が心地よい。
眺めのよい2階席。
緑に囲まれた1階テラス席。
ランチからディナー、カフェやバータイムまで奥日光のダイニングシーンを彩る同レストランに、ヴィラ アイーダのオーナーシェフ 小林寛司氏が監修したメニューが登場した。これまで小林シェフが、自身のレストランで一日一組のゲストをもてなしてきた「Farm to Table(ファーム トゥー テーブル)」のコンセプトから飛び出し、より多くのゲストに料理を提供する新たなコンセプト「Farm to Dining(ファーム トゥー ダイニング)」を掲げ、日光や栃木県産野菜を主役にした風土を感じる料理を創作している。
本コラボレーションのために、小林シェフは土地と季節に合った旬の野菜を作る「日光あおぞら農園」まで赴き、野菜を作るところから一緒にはじめたという。農園にある2.3ヘクタールの畑では、少量多品目で年間約200種類以上の野菜を育てており、子どもたちが安心して食べられるよう農薬や肥料、除草剤などを一切使わない、体と環境に優しい自然栽培に取り組んでいる。
この日のディナーメニューは、1品目のスープ「じゃがいも 白いんげん豆 帆立貝」から始まり、「かぼちゃ なめこ しめじ」、「さつまいも セロリ 塩レモン」、「日光市産舞茸 タリアテッレ」、「サステナブルフィッシュ 蓮根 冬瓜」、「とちぎ霧降高原牛 落花生 牛蒡」、そして「梨 カカオ」の全7品。足尾地域に伝わる稀少な伝統野菜「舟石芋(ふないしいも)」やかぼちゃ、さつまいも、生落花生などを使い、さまざまな調理法で主役の野菜を引き立てる料理が並んだ。いずれも野菜本来のやさしい甘さや旨みを感じる滋味深い味わいだ。
アラカルトメニュー「栃木県産いろいろトマトのカプレーゼ」¥4,200
ディナーコース(7品、¥24,000)の1品目「じゃがいも 白いんげん豆 帆立貝」
コース6品目「とちぎ霧降高原牛 落花生 牛蒡」
これまで何度もこの地に足を運び、同ホテルのカリナリーチームとともに、地元の旬の食材を最大限に味わえるメニューの開発に取り組んできた小林シェフは次のように語る。
「日光を訪れ、生産者の方々に会い、良質な水資源や肥沃な大地から生まれる豊かな栃木県産食材に対する理解を深めてきました。“美食とは何か”を考えたとき、ただ美味しい、美しいだけでは何も残りません。自然と調和し、持続可能性を根底から意識し、自然環境と人間の営みを豊かにしてくれる、そんな気づきと人の癒しとなる料理を、ザ・リッツ・カールトン日光のスタッフと一緒に伝えていきたいと思っています」
「また、ここ日光は海外からもたくさんのお客様が来られますから、日本の強みを活かした料理を作り、私たちの味でおもてなしをしたい。栃木には美味しい軟水や知られざる魅力的な食材が豊富にあるので、食材と向き合いながら、この土地ならではの旬の美味しさを表現したいです」
レークハウス内にあるカウンター。
同レストランでは、料理を引きたてるワインリストも、料理に合うものをより幅広く取りそろえたという。イタリア・日本を中心に、テロワールやヴィンテージの特徴がストレートに現れている自然派ワインが充実したラインナップだ。
コース料理に合わせたペアリングは、北イタリアのヴァッレダオスタ州の極上シャルドネ「レ・クレーテ シャルドネ キュヴェ ボワ 2022」からスタート。栃木のココ・ファーム・ワイナリーが手掛ける「甲州F.O.S.2021」や「ぴのろぜ2021」、イタリア「オーソニア アポロ トレッビアーノ・ダブルッツォ 2020」、北イタリア「トーマス・ニーデルマイヤー ソラリス 2019」、イタリア「ピノ ネロ ブレッサン 2015」など多様な味わいを堪能できた。
食後は館内にあるザ・バーへ移動して、「日光モヒート」、「華厳フォール」、「明るい庭園」など10種類以上あるシグネチャーカクテルや日本全国の焼酎、ウイスキーのグラスを傾けながら語らうのもよいだろう。
ココ・ファーム・ワイナリーの甲州F.O.S.2021
ザ・バー シグネチャーカクテル「明るい庭園」(米、ディル、マスティハ、エルダーフラワー、トマト、バジル) ¥3,200
さらに、テイクアウトメニュー「Grab & Go」もリニューアル。栃木県産レタス(Lettuce)、アボカド(Avocado)、ケール(Kale)、そして卵(Egg)の頭文字から名づけられた「L・A・K・Eサンドイッチ」や「栃木県産野菜のピティヴィエ」など、小林シェフこだわりの味わいを気軽に愉しめるメニューが並ぶ。周辺を散策しながら自然の中でいただく軽食や、チェックアウト日のランチなどで利用したい。
テイクアウトメニューのひとつ「L・A・K・Eサンドイッチ」 ¥1,800
奥日光の手つかずの自然と調和したホテルの外観。
一枚の写真を切り取ったかのように美しい「ザ・リッツ・カールトン スイート」からの眺め。
レークハウスで比類なき美食体験をした後は、ホテルでくつろぎ、気ままなひとときを。プライベートバルコニーから湖や山の景色が望める客室には、縁側に見立てた広々としたラウンジが備わり、刻々と変化する風景を眺めることができる。なかでも中禅寺湖ビューの客室からは、あたかもヨーロッパの湖畔に来たかのような洗練された美しい景色が広がり、訪れる者の目を癒してくれる。茜色に染まる夕日が湖の向こうへ落ちた後、ふと夜空を見上げると都会では見ることのできない満天の星が広がっていた。奥日光の絶景と美食を求めて、いつもとはひと味違う贅沢な時間を過ごしてはいかがだろう。
ザ・リッツ・カールトン日光
栃木県日光市中宮祠2482
TEL.0288-25-6666
www.ritzcarlton.com/ja/hotels/tyonz-the-ritz-carlton-nikko/overview/