THE NEW MASERATI Levante TEST DRIVE

ハイブリッドになっても、咆え続けるSUV
マセラティ「レヴァンテGT」試乗記

March 2022

 

 

 イタリア随一のラグジュアリーSUVとして人気を博す、マセラティ レヴァンテのハイブリッド・ヴァージョンが日本へ上陸した。今までのガソリンやディーゼル版と比べ、何が違うのか、早速試乗会へ出かけてみた。

 

 ニューレヴァンテは、会場となった都内ラグジュアリーホテルの地下駐車場に佇んでいた。一見したところエクステリアに大きな変化はない。全幅2mに迫ろうかというサイズが醸し出す圧倒的な量感、そしてイタリアならではの流麗なデザインは、相変わらず見る者の目を奪う。

 

 しかし、細部に目を凝らすと、いくつかモダナイズされた点が散見される。リファインされたボンネットおよびCピラーのロゴ、ブルーをキーカラーとしたフロントサイドのGTエンブレム(ハイブリッドのみ)など、確実にアップデートされている。

 

 インテリアはマセラティお得意の、ソファのようにもっちりとしたレザーが多用されたもの。シートに腰を下ろすと、美しくトリムされたメーター類やアナログ時計が目に入る。この空間はクルマというよりは、どこかの高級ラウンジのようで、ドライバーに深い充足感をもたらしてくれる。

 

 

 

 

 

 スタートボタンを押すと、「グォン!」という咆哮とともに、エンジンが目覚める。ハイブリットと聞いて、誰もが心配したのは、このエンジン音であろう。腹の底に響くような重低音は、マセラティの大きな魅力であったからだ。しかし、レヴァンテのエンジニアは、そのあたりのことは百も承知だったらしく、マセラティならではのサウンドは健在だ。

 

 走り出して100mもしないうちに、強靭なボディ剛性と重量がもたらす、どっしりとした乗り心地が感じられる。ハイブリッドになって、車重は前モデルより軽くなったというが(それはすべてにおいてよいことだけれど)、安定感は変わらない。それでいて、ハンドルを切ると、思った方向へスパスパと曲がる。狭い地下駐車場内でも、その大きさを億劫に思うことはない。

 

 外へ出て車道を走ると、改めてこのクルマのアイポイントの高さに驚く。周囲のクルマを睥睨(へいげい)しているようだ。これは見切りの良さや車幅感覚を掴むのに役立つ。ナローな都内の道でも、サイズに悩まされることはない。むしろ、アグレッシブに交通をリードしようという気分になる。

 

 アクセルを深く踏むと、大きな車体が弾丸のように加速する。動力性能は十分である。同乗したプロドライバーによると、ハイブリッドの恩恵は、特に発進加速に表れるという。確かに信号待ちからのスタートでは、モーターの手助けによるものか、前モデル以上の力強さを感じる。

 

 高速道路に入って、車速を上げてみる。法定速度である時速80km程度では、エンジン回転もごく低く、まだまだ余裕たっぷりといった感じだ。道路の継ぎ目を乗り越えるときに発生するハーシュネスは、とても低く抑えられている。走行モードを“スポーツ”に変えても、乗り心地は犠牲にならない。

 

 マニュアルモードを選択しパドルシフトに手をかけ、エンジンを5000rpm以上に回してシフトチェンジすると、「ボッ!」というインパルス音(破裂音)が発生する。こういったドライバーを楽しくさせる味付けは、イタリア車ならではだ。思わす窓を開け、エンジン音を聞きながら走りたくなる。

 

 高速を下りて、道路脇にクルマを停め、フロントフードを開けてみる。吸気パイプの下に見慣れぬ装置が付いているが、これはeブースターといって、モーターの力で吸気量を増し、エンジンパワーを引き出す装置だそうだ。もちろん燃費にも寄与する。

 

 電動リアハッチをオープンすると、十分な荷物スペースが表れるが、ハイブリッドの秘密はその下にある。床板を開けると、そこには駆動用バッテリーが格納されているのだ。リアに重いバッテリーを搭載することで、車両の前後重量バランスを最適化しているという。ちなみに従来の電装系に電気を供給する普通のバッテリーもリアに移設されていて、リアトランク下は、さながらバッテリー天国である。

 

 

 

 

 ニューレヴァンテの魅力は、そのプライスにもある。ベースグレードであるハイブリッド「レヴァンテGT」の価格は、1千万円ちょっと。これだけの存在感を持つイタリアンSUVとしてはリーズナブルだと思う。たとえ隣にドイツや英国のライバルが並んでも、決して引けを取らない。むしろ、運転が楽しいラテンのクルマであることを良しとし、積極的にこのモデルを選んだことをアピールできる。

 

 さらにマセラティというクルマの美点は、華やかで、ラグジュアリーであるにもかかわらず、ちょっとアンダーステートメントなところだ。それは派手なモードというよりも、上質なイタリアン・スーツに通じるところがある。

 

 芸能界の中でも、ずば抜けてセンスがよいとされる堺正章氏は、マセラティの大ファンとしても知られ、レアなヴィンテージ・レーシングを含む数台を所有している。そんな氏曰く、

 

「マセラティがいいのは、高級なんだけれど、リアルな部分もあって、みんなに乗る可能性を感じさせてくれるところ。どうだ、すごいだろうというようなブランドとしての威圧感はあまりなくて、どこか奥ゆかしい。そういった、乗る人との関係性を多彩に構築できるような面白みを感じさせるところがいい」と。まさに言い得て妙である。

 

 レヴァンテGTハイブリッドは、そんなマセラティを代表する、新しい時代のラグジュアリーSUVなのである。

 

 

 

 

Maserati Levante GT/マセラティ レヴァンテGT

全長✕全幅✕全高:5,020✕1,985✕1,680mm

車両重量:2,280kg

エンジン:1,995cc直列4気筒eBooster+48V BSGマイルドハイブリッド+モノスクロール・ターボ

最高出力:243kw(330ps)/5,750rpm

0-100km加速:6.0秒

最高速度:245km/h

Maserati