STEFANO BEMER FOR THE RAKE: READY TO WEAR COLLECTION

フィレンツェの靴作りの伝統を次世代へ
“ステファノ・ベーメル”

July 2020

THE RAKE がステファノ・ベーメルのカプセル・コレクションを発表するにあたり、エディター、クリスチャン・バーカーが、ブランドのバックに横たわる、クラフツマンシップと専門知識を探った。

 

 

by christian barker  photography jamie ferguson 

 

 

 

 

 ステファノ・ベーメルの物語は、1980年代初頭、イタリア、キャンティ州のグレーヴェという町で始まった。苦労を重ねて、自らの名前を冠したブランドを立ち上げた、慎ましい靴職人のストーリーである。

 

 当時まだ10代だったステファノは、靴の修理と磨きの仕事をしていた。ある日、地元の貴族に仕事を褒めてもらい、そして彼が所有していたジョン ロブのビスポーク・シューズのコレクションを見せてもらった。

 

 単なる靴の修理だけではなく、それ以上の可能性を感じたステファノは、靴職人になることを決意し、フィレンツェの職人のもとで靴作りの勉強を始めた。技術を習得した後、1987年に自身のアトリエを設立した。

 

 フィレンツェのサン・フレディアーノ広場に面した彼のショップは、かつてフォーブス誌が“小さなヒュミドールのような”と表現したような店だった。

 

 

Bitter Chocolate Chukka Boots Dark Brown Box Calf Cap Toe Oxfords
Bitter Chocolate Chukka Boots

$ 990

Dark Brown Box Calf Cap Toe Oxfords

$ 990

 

 

 ステファノ・ベーメルの美しいハンドメイド・シューズは、すぐにお洒落通たちの間で有名になった。その中には、ジャンフランコ・フェレ、アンディ・ガルシア、フリオ・イグレシアスらがいた。

 

 中でも最も有名なのは、1999年と2000年に、俳優としてのキャリアを9ヶ月間休んでまで、ステファノに弟子入りしたダニエル・デイ・ルイスだ。

 

 ふたりは完璧主義なところが似ていたと言われている。デイ・ルイスはキャラクターを表現するために、何テイクも撮影することで知られているが、ステファノも自分自身に課した、厳しい基準を満たせなかった靴は、何時間もかけて作ったにもかかわらず、あっさりと捨ててしまうのだ。

 

 

 

 

 ロンドンを拠点に活動するシューズ・デザイナー、ジャスティン・フィッツパトリックもまた、ステファノ・ベーメルのもとで靴作りを学んだうちのひとりだ。

 

 2012年、衝撃のニュースがもたらされた。ステファノ・ベーメルは、わずか48歳の若さで、早すぎる死を遂げてしまうのだ。フィッツパトリックは、彼のブログ“The Shoe Snob”で次のように書いている。

 

「ステファノ・ベーメルは、この世代の中で、最も素晴らしいアーティストの一人でした。特にフットウェアの世界では・・」

 

 しかし、フィッツパトリックが最も尊敬していた人物であるステファノは、多くのクリエイターに共通する欠点があった。商才に長けていなかったのだ。

 

 

 

 

「彼はまったくもって、よいビジネスマンではありませんでした・・」

 

 セルフ・プロモーションの欠如によって、彼とその靴は、現代のヴィンセント・ヴァン・ゴッホのような存在となっていた。ステファノ・ベーメルの名前は、あまり人に知られないまま、忘れ去られようとしていた。

 

「彼の靴は、人々に広く知られるに値するものだったので、その事実は私を悲しませました。ベーメルの靴は、ベスト・オブ・ベストでしたし、今もそうであると信じています」とフィッツパトリックは書いている。

 

 第2の物語は、ステファノの不幸な死の数ヶ月後に始まった。靴職人の友人であるトンマソ・メラーニは、ステファノのデザインと人生のパートナーであった妻のクリスティーナに声をかけた。ステファノが築き上げた独自のスタイルとクラフツマンシップを維持し、会社を成長させることで、その名を称えようという計画を提案したのだ。

 

 

Black French Box Calf Cap Toe Oxfords Dark Brown Hatched French Calfskin Apron Derbys
Black French Box Calf Cap Toe Oxfords

$ 990

Dark Brown Hatched French Calfskin Apron Derbys

$990

 

 

 革職人の世界では、知らぬ者はいないメラーニのファミリーは、60年以上も前からスクオーラ・デル・クイオを運営していた。スクオーラ・デル・クイオは、フランシスコ会の修道士と協力して設立されたレザー工房で、貧しい人々や戦争孤児に、技術と商売を教えるための学校でもあった。

 

 メラーニは、ステファノ・ベーメルとスクオーラ・デル・クイオの融合を提案した。そして次世代の職人を養成することを考えた。

 

 ステファノは、生前、多くの靴職人を育てた。その中の一人、スペインの靴職人ノーマン・ヴィラルタは、次のように語っている。

 

「私が一緒に仕事をした全ての師匠の中で、ステファノと過ごした時間が最も勉強になりました。それが靴職人としての私を形作ったのです。私が辞めるとき、彼は私がうまく独立できるよう、彼のパターンを譲るとまで言ってくれたのです」

 

 このような技術の伝承への取り組みは、メラーニの下で、12人の学生、3人の教師、12人の作業員を抱えるワークショップに成長してきた。優秀な生徒には、アトリエでの正社員のポジションが与えられることもある。

 

 

Brown Pebble Calf Apron Derbys Brown Box Calf Double Monk Straps
Brown Pebble Calf Apron Derbys

$ 990

Brown Box Calf Double Monk Straps

$ 1,170

 

 

 ステファノ・ベーメルが常に高い評価を得てきたビスポーク・ラインを維持しつつ、メラーニは、それまでは小規模で、ほとんど外注に頼っていた既製靴やメイド・トゥ・オーダーのラインを拡大し、完全に自社内で生産することで、メゾンの生産量と知名度を、新たなレベルへと引き上げた。

 

「私は可能な限りビスポークの品質を既製靴の顧客に提供したいと思っていました」とメラーニは語った。

 

「私の狙いはそこにあります。一足の靴に3000ポンドを使う人はあまりいませんが、1000ポンドなら喜んで払ってくれる人は多いでしょう。われわれは最高の素材と個性的なデザインを提供していますが、必ずしも全てをオーダーメイドする必要はないと思います」とメラーニは説明する。

 

 

 

 

 ステファノ・ベーメルのフットウェアは、クラフツマンシップとクオリティの高さが特徴だ。THE RAKEのウェブサイトでは、エクスクルーシブ・コレクションを提供する。

 

 エレガントで洗練されたブラックカーフのキャップトゥのオックスフォードから、ダンディなホーウィンのダブルモンク、素朴なスエードのブローグ、チャッカブーツまで、ステファノ・ベーメルのクラフツマンシップを堪能できる。

 

 フィレンツェ市長のマッテオ・レンツィの言葉を借りれば、ステファノ・ベーメルは

 

「フィレンツェの職人魂の真髄を体現した男」であり、その魂は、彼の名を冠したブランドの中で、永遠に燃え続けている。

 

Dark Brown Suede Apron Tassel Loafers Black Box Calf Penny Loafers
Dark Brown Suede Apron Tassel Loafers

$ 875

Black Box Calf Penny Loafers

$ 790

 

 

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