SIGNATURE FRENCH FINE DINING at Mandarin Oriental, Tokyo

コンセプトを大幅チェンジ! フレンチファインダイニング「シグネチャー」が次に目指す高みとは

December 2021

 

 

 

 コロナ禍で休業を余儀なくされていたマンダリン オリエンタル 東京のフレンチファインダイニング「シグネチャー」が、10月27日の再開を機にコンセプトを一新した。新たなコンセプトは、料理長のニコラ・ブジェマ氏が生まれ育ったフランスの伝統的な知識や料理技術を基に、歴史に残るシェフとレシピに敬意を込め、古典料理にモダンなエッセンスを加えた料理。長い休業期間のなかで、シェフをはじめ、スタッフひとりひとりが思いを巡らせ、さまざまなことを見つめ直して生まれたアイディアや情熱が、シグネチャーをさらなる高みへと躍進させている。

 

 シグネチャーを率いるシェフ ニコラ・ブジェマ氏は、クラシックフレンチの直系で学び、修行を重ねてきた人物。今日のフレンチを語る際に外せない2大巨頭の元で磨き上げられ、継承してきた技や知識は、コンセプトを一新したシグネチャーで提供される料理の数々に生かされている。

 

 なかでも特筆すべきは、氏のスペシャリテである「フォアグラ ブリオッシュ レッドポートのジュレ」だろう。作り上げられるまでを簡単に説明すると、まず、フォアグラを塩とアルコール(コニャックとポートワイン)でマリネ。次の日、そのフォアグラを低温のオーブンで火入れをし、しっかりと冷まし、その後2週間(7日間で最初に施した味つけがフォアグラにいきわたり、さらなる7日間で味に深みがもたらされる)ゆっくりと休ませる。そして、自家製ブリオッシュの生地で包み、焼き、冷まし、ポートワインのジュレを入れ、冷蔵庫で一晩寝かせる。つまり、フォアグラが納品されてから16〜17日間かかる。いまでは進化を遂げて多彩なスタイルで楽しまれているフレンチだが、同ダイニングでは、オリジンに近い多くの段階を経て生み出される“伝統的”でありながら、“モダンな”フレンチを楽しめるようになった。

 

 

シグネチャー料理長のニコラ・ブジェマ氏。

 

 

 

 シェフ ニコラのキーワードでもあり、彼の料理の基本になっているのが、「浸透(オスモシス)」。プレゼンテーションは一見シンプルながらも、火を使い、時間を使い、手間をかけて、“浸透”を経て作り上げる、滋味深いフレンチをゲストに味わってほしいという。そして、それをいかに若い世代に残していくか、というもの彼自身のテーマだとか。

 

 彼と二人三脚でシグネチャーを牽引しているといっても過言ではない料飲部長の内坂 徹氏も、「あらゆるものが簡易化されつつある今では見ることができなくなったサービスを、次の時代に継承していきたい」と語っており、内坂氏を筆頭にサービス面においてもシグネチャーは進化を遂げている。

 

 

「テーラーメイド ペアリング」で供されたワインのセレクションのごく一部。

 

 

 

 そんな時間と手間をかけて作り上げられるシェフ ニコラの料理に合うワインを選んでくれるのは、シェフソムリエの野坂 昭彦氏。シグネチャーを新しくオープンするというまっさらな気持ちで取り組んできたニコラと内坂氏とともに、ワインのコンセプトもがらりと変えたという。

 

 多彩なダイニングを要する同ホテルでは世界中のワインを取り扱っているが、シグネチャーについては、フレンチの伝統、そしてフランスの文化を尊重するような、ワインの文化の中心地であるフランスのワインに限定してワインがセレクトされている。「クラシックとモダンの融合」をコンセプトに、新進気鋭の生産者から、伝統的な生産地まで、幅広いジャンルからワインをセレクトし、シェフの料理の寄り添うドリンクを提供してくれる。

 

 ここでは厳選されたワインをボトルで楽しめるだけではなく、テイスティングサイズやバイザグラスで色々な種類のワインを楽しむのもおすすめ。なかでも「テーラーメイドペアリング」では、プリフィックスのコースメニューから、ゲストが各自選んだ料理によって、一皿一皿に合うワインを選んでくれる。同じテーブルでも選んだ料理が違えば、ワインも異なるものを楽しめるのだ。料理には日本の食材も使用されているため、ワイン以外だと日本のクラフトビールやクラフトコーラ、さらに日本酒まで、今話題の厳選されたドリンクの数々もペアリングで楽しむこともできる。

 

 またコロナを機に、ソムリエ4人でオリジナルのノンアルコールワインも作り上げたという。その名も「シャトー・ノージー」(野坂氏の愛称“ノージー”が由来)。黒ブドウに中国茶と6種類のスパイスなどがブレンドされており、その華やかな香りとは裏腹に、赤ワインを彷彿とさせるような、甘味、酸味、苦味、塩味、旨味の五味と赤ワインのような風味をしっかりと感じられる大人な味わいに仕上がっている。ぜひ、お試しいただきたい。

 

 


ノンアルコールワイン「シャトー・ノージー」。

 

 

 

 それでは、ここで味わうべき、シェフ ニコラの料理をいくつかご紹介したい。まず注目はランチの前菜。クラシックなサーブ方法に敬意を表し、ワゴンにてゲストの目の前まで運んでくれる。実物を見て、丁寧な説明を聞いた上で、好みの一品を選ぶことができるのだ。

 

 常時5種類ほど用意されているため、説明を聞けば聞くほど悩んでしまうと思うが、なかでも必食は前述の「フォアグラブリオッシュ レッドポートのジュレ」。これはシェフがフランス・アルザスで150年の歴史を誇るフレンチレストラン「オーベルジュ・ド・リル」で修行していた時代に得たテクニックを用いた料理。本場フランスのサイズで作ると大きすぎてしまう為、日本、そして時代にあわせて小さくし再現されている。小さく料理するのは非常に難しいことから、何十回も試作を重ね、約2年の歳月を経て完成したという。ブリオッシュに包まれたフォアグラのコクと甘み、ポートワインのジュレの酸味の絶妙なコンビネーションを堪能してほしい。付け合わせの赤いソースはシェフ特製の「ビチャップ」。ケチャップをもじったこのソースは、ビーツを使った酸味のあるソースだ。

 

 

ランチで提供される前菜の一例。

 

シェフ ニコラのスペシャリテ「フォアグラブリオッシュ レッドポートのジュレ」。

 

 

 

 また、ディナーで提供される魚料理の「甘鯛と手長海老の“アミラル風” ムール貝のグラタン リースリングソース」はソースまで一滴残らず平らげたくなる一品。「アミラル=海軍大将」の名を持つこの料理は、もとは丸々一匹を調理した魚を母艦に見立て、その周りを護衛艦のようにオマール海老や、ムール貝などが盛り付けられることから名づけられたもの。バターと白ワインを利かせたソースを使った、フレンチの魚料理を象徴する一皿だ。

 

 そして、シグネチャーを象徴するメイン料理「A5 和牛テンダーロインのロースト ボルドレーズソース ポムアンナ」も、シェフ ニコラの思い入れが強い一品。力強いソースを得意とするシェフ ニコラの料理に最適なA5ランクの和牛フィレ肉を大きい塊のままゆっくりとローストし、しっかりと休ませることで均一に火入れを行ったもの。10日間かけて作るボルドレーズソースは、最後までフィレ肉を愉しめるようにと、ボルドーのワインを煮詰め、酸味をきっちりと残し、エシャロットの香りと仔牛のジュ(焼き汁)が合わさった濃厚なソースに仕上げられている。クリスピーなポテトガレット「ポムアンナ」は、シェフ ニコラが修業時代に一番初めに覚えた付け合わせだという。

 

 

シグネチャーを象徴するメイン料理「A5 和牛テンダーロインのロースト ボルドレーズソース ポムアンナ」。左側に美しく並んでいるのが、クリスピーなポテトガレット「ポムアンナ」だ。

 

 

 

 余談ではあるが、料理と共に供されるブレッドやバター、塩においてもこだわりが詰まっている。例えばブレッドは、毎朝、ヘッド ベーカーの中村 友彦氏が焼き上げる3種(サワードウ、プティバゲット、パンオレ)。そしてバターはチーズ熟成士、ロドルフ・ムニエ氏が手がける無塩バター。添えられているのはフランス西部、ビスケー湾を望むバッツの塩で、塩田に吹く風の向きによって塩の風味が異なるんだとか(ちなみにいまシグネチャーで提供されている塩は、東の風が吹く時期にとれたもの)。ルイ14世にも献上されていたものだ。

 

 テーブルの上にサーブされるひとつひとつに、緻密に考え抜かれたアイディアやこだわりが隠されているのだ。気になる点があったら、ぜひソムリエやスタッフに話を聞いてみるのがいいだろう。想像以上の深いストーリーがその裏には隠されているはずだ。

 

 

「ポワールウィリアムスでブレゼしたメゾンミトールのフォアグラ ビターチョコレート」。フォアグラの名門「メゾンミトール」のホールのフォアグラを贅沢に使用し、洋ナシのオードヴィーを使いブレゼ(蒸し煮)することで、フォワグラの美味しさを最大限に引き出した料理。

 

 

 

 来たるフェスティブシーズンには、シェフのスペシャリティである「フォアグラのミルフイユ ストラスブール風」や、「A5 和牛フィレ肉のロースト 濃厚な黒トリュフのクーリ アンディブのオルロフ風」などを含むコースメニューも登場。2021年12月24日(金)~26日(日)と31日(金)、そして2022年1月1日(土)と2日(日)の6日間限定のメニューだというから、ぜひこの特別な機会に足を運んでいただきたい。

 

 “浸透”や火加減、調理時間、感触などの技や感覚、そして長年の経験をもって生まれるシェフ ニコラの繊細な料理、それらをより引き立てるソムリエ野坂氏が選ぶワインと丁寧で心温まるサービス–––これが見事なバランスでマリアージュする時間は、思い出に鮮やかに残るひとときとなるだろう。

 

 また行きたい、また食べたいと思わせてくれる、そんな力強くも優しい正統派モダンフレンチが、マンダリン オリエンタル 東京にはある。

 

 

ランチ:11:30~15:30(13:30L.O.)

3品のコース(前菜、魚料理または肉料理、デザート)¥7,590

4品のコース(前菜2品、魚料理または肉料理、デザート)¥9,130

5品のコース(前菜2品、魚料理、肉料理、デザート)¥11,500

 

ディナー:18:00~21:00(20:00L.O.)

4品のコース(前菜2品、魚料理または肉料理、デザート)¥15,400

5品のコース(前菜2品、魚料理または肉料理、チーズ、デザート)¥18,700

6品のコース(前菜2品、魚料理、肉料理、チーズ、デザート)¥22,000

 

テーラーメイド ペアリング

ランチ:3-GLASS ¥6,600/4-GLASS ¥8,500/5-GLASS ¥10,500

ディナー:3-GLASS ¥7,500/4-GLASS ¥9,500/5-GLASS ¥11,500

※税込・サービス料別

 

ホリデーディナーコース

6品のコース(冷たい前菜・温かい前菜・魚料理・肉料理・チーズ・デザート)¥28,600(税・サ別)

 

 

37階 フレンチファインダイニング「シグネチャー」

定休日:月曜日・火曜日(祝日を除く)

TEL.0120-806-823(レストラン総合予約9:00~21:00)

Eメール:motyo-fbres@mohg.com

www.mandarinoriental.co.jp/tokyo/nihonbashi/fine-dining/restaurants/french-cuisine/signature

<本連載の過去記事は以下より>

ホテル連載第29回:ホテルのこだわりパン《第二回 大手町・日比谷エリア》

「FRENCH BLOOM」から誕生した新世代のノンアルコール・スパークリングワイン

【シャンパーニュ ボランジェ】ガストロノミーに寄り添う偉大なヴィンテージ誕生

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ホテル連載第28回:ホテルのこだわりパン《第一回 赤坂・虎ノ門エリア》

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