SHIROUX at Halekulani Okinawa Enters a New Chapter

ハレクラニ沖縄「シルー」が新章へ。坂本健シェフが描く、沖縄食材を使ったイタリアン

April 2026

沖縄の美しい海を望む「ハレクラニ沖縄」のメインダイニング「シルー」が、新たな章を迎えた。開業当初から6年間にわたり、東京「フロリレージュ」の川手寛康氏が料理監修を担ってきた同ダイニングは、6周年という節目を機に、京都の人気イタリアン「チェンチ」の坂本健シェフへとバトンタッチ。フレンチからイタリアンへと大きく舵を切った新生「シルー」では、沖縄の豊かな食材がどのように表現されているのか。1月のコースから、そのハイライトをレポートする。

 

 

text yukina tokida

 

 

 

 ハワイへ足を延ばすには、ある程度の日数が必要だ。けれど沖縄なら、東京から約3時間、関西からなら約2時間。美しい海、ゆったりと流れる時間、美食、レジャー、そして時差のない気軽さがある。日本にいながら、南国のリゾート気分を味わえる場所として、沖縄はやはり特別な存在だ。

 

 その沖縄を代表するラグジュアリーリゾートのひとつが、「ハレクラニ沖縄」である。なかでもメインダイニング「シルー」は、昨年11月、開業時から料理監修を務めてきた「フロリレージュ」の川手寛康氏から、京都の名店「チェンチ」の坂本健シェフへとバトンタッチ。フレンチからイタリアンへと大きく舵を切った。

 

 京都の「チェンチ」といえば、予約困難店として知られる人気イタリアン。その坂本シェフが監修する料理を、沖縄の食材をふんだんに取り入れたコースとして味わえるのが、新生「シルー」の大きな魅力である。沖縄が育んできた恵みと坂本シェフの感性が出会い、作り手たちの想いまでもが一皿に込められる。食後には、南国の夜風のような温かな余韻が心に残る。そんなダイニングとして、すでに新たな一歩を踏み出している。

 

 本レポートは1月のコースに基づいたものだが、3〜4ヶ月ごとに内容を刷新するシルーでは、訪れるたびにその瞬間、その季節にしか出会えない沖縄の最旬を、驚きとともに味わえる楽しみがある。筆者が体験したハイライトをいくつかご紹介したい。

 

 

 

 

 最初に供されたのは、夜光貝を使った一口サイズの前菜。土台にはゴーヤのフリットを忍ばせ、その上に酢飯仕立ての蒸した餅玄米を重ねる。さらに、五島列島の魚を用いた魚醤から作る醤油麹を纏わせ、味わいに奥行きを添えていた。仕上げには炙った夜光貝と、夜光貝の肝を使ったパウダーを。蒸すことで磯の香りがより鮮やかに立ち上がり、素材の鮮度と力強さを感じさせる一品だった。

 

 それに合わせられたのは、チェンチの名物である鶏と昆布の一番出汁をベースに、フーチバー(よもぎ)を加えてほのかな苦味を添えたスープ。そこにもずくを入れ、最後にオリーブオイルを垂らした一杯だ。滋味深さのなかに軽やかな苦味がここちよい、沖縄の風を感じる温かなスープに、食欲が刺激された。

 

 

 

 

 続いてのハイライトは、前菜のひとつとして沖縄のチンビンとともに提供された多田氏のペルシュウ。そのこだわりの薄さをきちんと担保するために、専用のカットマシーンが導入されたほどで、空気のような軽やかさが特徴だ。何枚でも食べたくなるような、そしてこれとワインさえあれば、いつまでも杯を重ねていたくなるような味わい。一般的な生ハムとはまったく異なる次元の上質さに、誰もが心を奪われるだろう。

 

 続いては、フリットしたミーバイにリゾットを合わせた一品。国産のカルナローリ米を、鶏出汁、バターやニラ、椎茸のかさの部分と炊き合わせ、チーズを使わずに仕上げていた。本部町で作られた麹に、しょうがや白ねぎを合わせたソースを添え、付け合わせのジーマミー豆腐とグァバのピューレとともに。

 

 

 

 

 そして、もうひとつ印象的だったのが、チェンチの名物である鶏と昆布の一番出汁をベースに、牛テールを加えて深みを出したスープのパスタ。卵不使用の全粒粉の麺は、モチッとした食感が特徴で、付け合わせには牛テールの煮付けと浅葱が添えられ、少しずつ加えることで味わいの変化を楽しめる。好みで特製のコーレーグースを加え、さらに表情を変えられるのも嬉しい。

 

 

 

 

 ペアリングには、上質なワインだけでなく、カクテルの選択肢もあり、しかもアルコールとノンアルコールも用意されている。同ダイニング専任のミクソロジスト、清家真衣氏がすべてを手がけており、どれも料理とのバランスを考え抜いて作り上げられた独創的なものばかり。なかでも記憶に残っているのは、魚料理に合わせられた沖縄の煎茶と大葉を使った自家製ジンのジントニック。ハーブや柑橘で作った自家製トニックと合わせられた、爽やかでありながら、旨みの余韻を感じさせる味わいだった。

 

 京都で「チェンチ」の料理を体験することが難しいなら、ハレクラニ沖縄へ飛ぶという選択肢も大いにある。束の間の南国気分に身を委ねながら、坂本シェフならではの繊細なバランス感覚と、沖縄の食材が響き合うイタリアンを堪能してほしい。

 

 沖縄の言葉で「純白」を意味する「シルー」。坂本シェフが刻む新たなイタリアンは、ハレクラニ沖縄での滞在に、より鮮やかで忘れがたい余韻を添えてくれるはずだ。

 

 

 

ハレクラニ沖縄

沖縄県国頭郡恩納村名嘉真1967-1

TEL. 098-953-8600

www.okinawa.halekulani.com/

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