Prague with Turkish Airlines
芸術と美食で満たす、黄金の都市 ― ターキッシュ エアラインズで巡る、冬の東欧 ② ―
February 2026
ブダペストを後にし、鉄道で約8時間かけてプラハへ向かった。食堂車で飲んだピルスナー・ウルケル(チェコビール)の泡が、これから出合う黄金の街への期待を静かに膨らませる。
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夜のプラハ駅に降り立ち市街地に到着すると、そこにはブダペストとは異なる熱気があった。クリスマスマーケットを中心に観光客で賑わい、冬の冷たい空気のなかで、街全体が祝祭のように脈打っていた。宿泊は「アルマナック X アルクロン プラハ」。1932年に建設された建築だが、内装はモダンなヨーロピアンクラシックで、旧市街へのアクセスも良好だ。
プラハ市内を走るトラム。このほか、地下鉄、バス、ケーブルカーの乗車券はすべて共通。
ファン必見の新ミュシャ美術館
アール・ヌーヴォーの巨匠アルフォンス・ミュシャの名は、日本でも広く知られている。優美な曲線を用いた女性像の数々は、誰でもひと目見ればミュシャの作品だとわかる。ミュシャは、パリで活躍したことで知られるが、実はチェコ共和国生まれの画家。そんな彼の作品と精神を蘇らせた場所が、2025年にミュシャ財団が新しくオープンさせた「ミュシャ美術館」だ。
ミュシャ美術館はサヴァリン宮殿と呼ばれる歴史ある建築の中に完成した。
展示を案内してくれたのは、ミュシャのひ孫にあたる、マーカス・ミュシャ氏。彼は日本をたびたび訪れる親日家で、ミュシャにとって日本は深い関係があると語ってくれた。そもそも、アール・ヌーヴォーはジャポニスムの流れから生まれた曲線美を特徴とする。そのミュシャの作品が、日本の現代のイラストレーターや漫画家にも影響を与えていることは興味深い。精神の清らかさを描こうとしたミュシャの作品は、いま見ても日本人の心に確かに響く何かがある。
展示作品は多岐にわたる。奥に見えるのはミュシャとフリーメイソンにまつわる展示。
ミュシャらしい華麗な女性像だけでなく、男性像や素描、さらにはフリーメイソンに基づく展示などもあり、ミュシャの思想の奥深さを感じさせる。小規模ながら、彼の魂を凝縮したような美術館である。展示は定期的に入れ替わり、さらに拡張の予定もあるとのこと。ミュージアムショップには土産にも最適なミュシャグッズがずらり。プラハの新名所といえる。
ミュージアムショップには日本語ガイドブックのほか、ミュシャのあらゆるグッズが揃う。
街の記憶を歩く──旧市街観光
街の中心にある旧市庁舎の塔にのぼると、ヴルタヴァ川とプラハの美しい街並みを一望できる。眼下に広がるのは、観光客と光の海。広場には巨大なクリスマスツリーが輝き、周辺にはクリスマスマーケットが賑わいを見せる。旧市庁舎の塔の壁にある天文時計には、ひときわ観光客が集まっており、正時を告げる天文時計が動き出すと、鐘の音とともに歓声が上がる。この街では、時間そのものが芸術のように演出されている。
左が旧市庁舎。塔の下に天文時計があり、広場は正時が来るのを待つ観光客で埋め尽くされる。
旧市庁舎の塔の上から。プラハのランドマークであるティーン教会と、旧市街広場のクリスマスマーケットの賑わいが望めた。
ヴルタヴァ川に架かるプラハ最古のカレル橋では、両側に15体ずつ、合計30体の聖人像が並び、静かに冬の光を受けていた。なかには日本でも有名な聖フランシスコ・ザビエルの像もある。聖ヤン・ネポムツキー像の台座は、触れると幸せが訪れるとして観光客の列ができていた。橋を渡り歩きながら、ヨーロッパをつなぐ交易都市としてのプラハの記憶が甦るようだった。
プラハ観光の目玉のひとつ、カレル橋。両サイドに聖人の彫刻が並ぶ。絵描きやジャズ・ミュージシャンの演奏などでも賑わう。
翌日訪れたのは、バロック様式の図書館「クレメンティヌム」。映画のロケ地としてもたびたび使われている美しい空間に思わず息をのんだ。17〜18世紀の書物が整然と並び、天井画とステンドグラスが光を散らす。そこに立つだけで、知と祈りの歴史が身体に染み込むような緊張感に包まれた。
クレメンティヌムの図書館。写真で見えるこの内部に入ることはできないが、その重厚感に歴史を感じ取ることができる。
さらに街歩きの途中で立ち寄った「市民会館」も印象的だった。アール・ヌーヴォーの粋を集めたこの建築は、1918年のチェコスロバキア独立宣言が行われた歴史的舞台でもある。ミュシャをはじめとするチェコ芸術家たちが手がけた壁画や装飾が、この国の誇りを今に伝えていた。2階にはコンサートホールがあり、毎年「プラハの春」と呼ばれる国際音楽祭が開催される。1階と地下には格式あるレストランやカフェ、ビアホールがあり、昼も夜も賑わっている。プラハの歴史と文化を感じられる象徴的な場所だった。
市民会館には作曲家スメタナにちなんで名づけられたホールがあり、名門プラハ交響楽団の拠点でもある。
1階には、プラハで最も美しいといわれるカフェ「カヴァールナ・オベツニー・ドゥーム」があり、ミュシャの壁画などが見られる。
水上の視点──ヴルタヴァ川クルーズ
夜はヴルタヴァ川のディナークルーズへ。約3時間の乗船だが、揺れはほとんどなく快適。豪快なビュッフェスタイルのディナーを満喫した後、船上に上がって見上げるプラハ城のライトアップは、息をのむほど荘厳で、千年の時を超えて築かれた都市の重みを感じさせた。冷たい風を頬に受けながら、“黄金の都”と呼ばれる所以を理解する。
ヴルタヴァ川からの夜景は格別。どこを切り取っても美しい。正面に見えるのがプラハ城。
チェコ料理の最前線、クラシック&モダン
この旅の食のハイライトはレストラン「420」だった。チェコの国番号〈+420〉を冠した店名の通り、伝統的なチェコ料理をモダンに昇華させた新世代レストランだ。旧市庁舎のすぐ向かいに位置し、チェコで有名なミシュランスターシェフ、ラデク・カシュパーレク氏が手がけている。パプリカや西洋ワサビ、モラビアチーズの泡を巧みに取り入れたコースは、素材の滋味と洗練のバランスが絶妙だった。
レストラン「420」。かつて邸宅として使われた歴史的な建造物の中庭に天井をつけてアレンジした内観。
メインディッシュはガチョウのレッグとレバーのグリルにパプリカシュソースを添えて。
もうひとつ訪れた「Červený Jelen」もまた、伝統的なチェコ料理を現代的に洗練させたレストランだった。ここでは、泡を味わう文化として知られる“ミルコ”スタイルのピルスナー・ウルケル(チェコビール)を体験した。なんとグラスの9割が泡。チェコ人は、これをお酒とお酒の合間の休憩、あるいは締めの一杯としてみんなで飲むのだそうだ。きめ細やかでクリーミーな泡を豪快に楽しむ文化に、チェコの国民性を感じた。
チェコの美食に欠かせないチェコビール、ピルスナー・ウルケル。写真は通常のオーダー。9割泡の「ミルコ」は、夢中になりすぎて写真を撮りそびれてしまった。
プラハからイスタンブールを経由して
プラハは、文学・音楽・建築が互いに呼応し合う都市だった。フランツ・カフカゆかりのモニュメントが街角に息づき、モーツァルトやショパンが訪れたことを示すレリーフが建物のあちこちに見られた。歴史や文化が市民の日常と混ざり合う光景が、どこまでも華やかで魅力的だった。
カフカの顔のオブジェ。パーツがバラバラに動いて首が回るのだが、夜はライトアップされてさらにシュール。
帰路はやはりターキッシュ エアラインズで、イスタンブールを経由して羽田へ。ターキッシュ エアラインズは、世界で最も多くの国へ就航する航空会社だが、イスタンブール空港は単一ターミナルでトランジットも快適だった。ターキッシュ エアラインズのビジネスクラスの利用者、スターアライアンス・ゴールド以上のメンバー、そしてMiles&Smilesの上級会員が利用できる「Miles&Smilesラウンジ」は非常に広く、フードとドリンクの豊富なラインナップに驚いた。そのホスピタリティは、東欧を結ぶ旅の終わりにふさわしい快適さだった。
Miles&Smilesのラウンジは奥に長い構造で、5,596㎡という広さ。席数ももちろん多いが、メニューの数に驚く。わざわざ立ち寄る価値のあるラウンジだ。
取材協力:ターキッシュ エアラインズ、Czech Tourism、Prague City Tourism
























