PORSCHE CAYENNE S COUPE
ポルシェの稼ぎ頭
September 2023
毎日の通勤からオフロード、サーキットまで楽しめると謳うポルシェのオールロード・スポーツカー。あらゆる道でドライビング・プレジャーをもたらす。今回のモデルチェンジで更に魅力的な存在となった。
text tatsuya kushima
Porsche Cayenne S Coupé
日本における最上級モデル。パワフルな走りが売りだ。人気となるのは必至。そして2年後にピュアEV登場となる予定。エンジン:3,996cc V8ツインターボ/最高出力:474ps/6,000rpm/最大トルク:600Nm/2,000-5,000rpm/全長×全幅×全高:4,930×1,983×1,678mm/乾燥重量:2,190kg
5月のオーストリアを走った。正確にはザルツブルク郊外のスキーリゾート。国土の三分の二がアルプス地方なだけに、そんな景色が連なる。季節を変えて訪れれば雪深い山々に囲まれる場所だ。
ステアリングを握ったのは、新型ポルシェ カイエンとなる。2002年に誕生したこの人気モデルもすでに3世代目となり、今回はそのマイナーチェンジを迎えた。“人気”と記したのにはエビデンスがある。昨年ポルシェ全体の販売台数は30万台を超えるが、カイエンはその中で9万5000台以上を稼いでいる。つまり、このスポーツカーブランドのおよそ30%はSUVのカイエンなのだ。
そんなモデルだけに、デビュー時から大きなデザイン変更はない。ポルシェらしさを醸し出すデザインは完成度が高く、広くマーケットに受け入れられているからだ。よって、今回もヘッドライトユニットやボンネット、バンパーに手を入れてはいるが、印象はそのまま。遠くから見てもカイエンであることを誰もが認識できる。ボディ全体のシルエットもそうで、スタンダードとクーペともに変更なく試乗会場に並んだ。
その観点からすると今回はインテリアのほうが進化の度合いは大きいかもしれない。メータークラスターが全面デジタル化されたと同時に、オプションだが助手席目前にもモニターが設置された。そこではナビや音楽、エアコン調整、動画の視聴ができる。まぁ、最新の高級車の文脈からするとこの方向は自然だ。2月にイタリアでテストドライブした話題のスーパーカーの助手席にも同様のモニターが付いていた。
グレードは、V6ターボを積んだ「カイエン」、それにモーターを取り付けたプラグインハイブリッドの「カイエンEハイブリッド」、それとV8ツインターボの「カイエンS」となる。現行にある「ターボGT」は日本の排ガス規制をクリアできなかったので導入されない。というか、一部の仕向地の富裕層向けとなるようだ。
インテリアではデジタル化の流れと同時にレイアウト変更が行われた。ギアシフトレバーがダッシュパネルに移動したのはそのひとつで、センターコンソールをシンプルにしている。
そんな中でひと際輝いていたのが「カイエンS」。474psを発揮するパワーユニットはどこまでも力強くこの大きなボディを軽々と動かす。ワインディングでのステアリング操作に対する鋭い身のこなしはまさにスポーツカーだ。左右の荷重移動はスムーズだし、踏ん張りの効くサスペンションのセッティングが高次元のパフォーマンスを見せてくれる。
しかも、新型ではそこに快適さも加わった。ドライブモードを“スポーツ”にすると前述した走りを見せるが、“コンフォート”にすると一気に性格が変わるのだ。試乗車にはオプションのエアサスが装着されていたが、そもそもダンパーから見直し再設計したそうだ。そして快適性を高めたと開発者は自負していた。
というように走りの幅を広げた新型だが、その背景にはポルシェのラグジュアリー路線への移行があるようだ。きっと全体的に価格が上がってきているためさらなるアッパー層に訴求しなくてはならなくなったのであろう。もはや3000万円の壁を超えているモデルは少なくない。となればライバルは英国やイタリアのウルトララグジュアリーブランドとなる。
そんなことを考えながらオーストリアを走る。確かに快適。このまま南下して地中海まで走っても悪くない気分になった。
ラゲッジの積載量に変更はなし。リアシートは3分割で倒すことができる。
エクステリアではヘッドライトやリアコンビネーションランプなど光る部分で進化をアピール。ヘッドライトにマトリクスLED機能が全車標準装備となったのはニュース。リアはタイカンに通じる横一本ラインが特徴だ。引き続きクーペボディも生産される。