Explore the Hidden California Episode3
【短期連載3】農業王国と古き良き街で美味探求!モデスト〜バイセリアのグルメなカリナリー・ツーリズム
September 2025
カリフォルニアには、知られざる魅力的な旅先がまだまだいくつもある。Wellness&Retreatな大人のディスティネーションをご紹介する短期連載3回目は、カリフォルニア中西部にあるモデストとバイセリアへのカリナリー・ツーリズム。ワインや果物、野菜、ナッツ…ヘルシーで美味しい地元食材の秘密を深掘りし、食いしん坊たちが幸福感で満たされる極上の旅に。
text maiko takeda
Destination1: モデスト
カリフォルニアは全米屈指の農業地域で、全米で消費される果物やナッツの約60%、農産物の約40%を生産しており、そのアグリカルチャーの中心をになっているのがモデストという街。
ロサンゼルスやサンフランシスコから車で約1時間半。モデストは山に囲まれ、乾燥しているのに土壌の水分は豊富で、火山灰による栄養満点の肥沃な土地が農業に適しているのだそうだ。なかでも、全米に流通するアーモンドの約80%はカリフォルニア産で、その3分の1はモデストで収穫される。2〜3月にはアーモンドの薄いピンクの花が、まるで桜のように並木道に美しく咲きほこり、春の訪れを告げる風景に。まさにここはアーモンド天国。着いて早々、生のアーモンドを絞って作ったアーモンドバターミルクシェイクを頂いたが、香ばしくて濃厚で、コク深い味わいであった。
この地に来たら、まず欠かせないのはフルーツピッキング。いわゆるフルーツ狩りであるが、うかがったのは6月末。桃やブルーベリーが美味しい季節。観光農園「ヴァンダー ヘルム ファームス」では日本で見掛けることがない、新しいハイブリッドなフルーツもいただけるとあって、楽しみにうかがった。
モデストでは9割がファミリービジネスだそうだが、こちらの農園も家族経営のフルーツ狩りをメインとした果樹園だ。広大な敷地内にたくさんのフルーツの木がずらり。日本だと、イチゴ農園だとかブドウ農園だとか種類を絞った専門果樹園が多いものだが、こちらはバラエティ豊かに多くの種類の木が実をつける。この日に収穫できるフルーツは、桃、あんず、ネクタリン、ブルーベリー。しかもそれぞれのフルーツに種類がたくさん。桃だけで4種類も!その上、掛け合わせハイブリッドなフルーツまであるのだ。たとえば、アプリウムはあんずとスモモの交配種。プレーリーはスモモとさくらんぼの交配種。プルオットはプラムとあんずの交配種という具合に。初めて聞く名前にワクワクしてくる。
![]() |
![]() |
さまざまなフルーツの説明を受けながら、木からよく熟したフルーツを選んでもぎとり、皮ごと丸かじり。もぎたての桃はとにかく甘くて果汁がパンパンに充満していて感動的! 色も大きさもさまざまな桃やあんず、ネクタリンなどを次々と味比べした。陽射しの強さ、気温の高さも相まって、ジューシーなフルーツが美味しすぎる。スモモだけでも種類が豊富だから、掛け合わせるのにも幾通りものパターンが完成する。どれが成功するか、どんな味になるかはやってみないとわからないのだと楽しそうに話す農園の方々。交配種フルーツも頂いた。なかでもいちばん味わい深かったのがあんずとプラムのハイブリッド、プルオット! 酸味と甘みが絶妙で、柔らかくていい香り。観光客じゃなかったら山ほど買って帰るところだ。あー、日本でも栽培されればいいのに…。
この農園では、8月に農園を閉め、また4月にイチゴとブルーベリーでフルーツピッキングを開園する。ブルーベリーは15種類もあり、時期をずらしながら7月まで収穫できる。さくらんぼは5〜6月中旬、桃やスモモ、ネクタリンなどのツリーフルーツは5〜8月末までで、桃だけでも12種類も!摘み取ったフルーツは、各々1ポンド(約450グラム)ごとに3〜4ドルほどで持って帰れる。知られざるカリフォルニアのフルーツの美味しさを体験でき、テンションが上がった。農園で採れたワイルドフラワーの生ハチミツはお土産に評判。
ヴァンダー ヘルム ファームス
![]() |
![]() |
知らなかったが、オリーブオイルもモデストの名産品である。「シアビカ オリーブオイル&ブリューワリー」で試飲会に参加した。こちらは、1936年の創業以来、シチリア島で習ったというコールドプレス製法で仕上げた最高品質の100%エクストラバージンオリーブオイルを製造する工房。人工香料や添加物、遺伝子組み換え作物を使わず、職人の手作業によって丁寧に作られるため、雑味がなく、香りとコクがあってピカ1の美味しさ。テイスティングをしたなかで驚いたのは、フレーバーオイルのフレッシュさ。今まで、フレーバーオイルはとくに美味しいものという認識がなかった。
しかし、こちらでは生のガーリックやフレッシュフルーツ、フレッシュハーブだけをオリーブと一緒に無加熱でゆっくりと圧縮するコールドプレス製法で作られる。多くのメーカーでは、加熱して浸け込んだり、香料やエッセンスを加えて作ることが多いフレーバーオイルだというから、その味わいの違いは明白。ガーリックやレモン、バジル、ハラペーニョ、ローズマリー、ブラッドオレンジ、ライム、グレープフルーツ…。種類豊富で、すべてお土産にしたいぐらい魅力的だった(厳選して持って帰りました!)。オリーブオイルで作ったクッキーも試食させてもらったが、バターよりも軽くさっぱり。こちらではクラフトビールの製造も行っているので試飲も!
シアビカ オリーブオイル&ブリューワリー
https://sunshineinabottle.com/
移動の途中に「ロダン・ファームスタンド」を発見。4世代に渡り、30年間愛されてきた果物屋さん。採れたてのフレッシュフルーツやナッツが色合い豊かに並べられている。試食をさせてもらったが、黒イチジクが絶品だった。
![]() |
![]() |
そして、日本ではあまり見かけないセミドライのフルーツや約40種のフレーバーナッツに歓喜!セミドライの桃、あんず、ケイジャンミックスのアーモンドを購入したが、この美味しさで3つで20ドルとは、とてもお手頃だったと思う。
ロダン・ファームスタンド
夜はワイナリーを持つ農園バーン「リチャーズ ランチ」でディナーを。こちらは90エーカー以上の土地を持ち、ウエディングパーティやイベントなどが幅広く行われる農園の納屋スペース。ぶどう畑を見渡せるテラスで、こちらのプライベートブランド「アルベルティ・ヴィンヤード&ワイナリー」のワインと共にビュッフェをいただいた。
ローカルファームの野菜で作った香り豊かなハーブサラダ、ハチミツ、グラスフェッドバター、オリーブオイルを駆使した料理の数々。チミチュリソースやBBQソースでいただくアンガスビーフ、ハーブを効かせたチキン、ローストポーク、ねっとりと美味しいレッドポテト、ポルトガルブレッド、バーボンソースを添えたオーキースタイルのキャロットケーキも。暮れて行く夕空を眺めながらの〝Eat Local〟は、体にしみじみと染み入る至福の美味しさだ。空気まで美味しい。
リチャーズ ランチ
https://richardsranchevents.com
アルベルティ・ヴィンヤード&ワイナリー
農園や工房、ワイナリーが数多く点在するモデスト。その街中であるダウンタウンをそぞろ歩いたら、大きなウォールアートが印象的だった。ジョージ・ルーカスが生まれ育った街だからか、スター・ウォーズのアートも。来年はここに電車が通る予定だそう。カリフォルニアを代表する美味しいものが、季節を経て豊かに実るこの地は、きっとこれからもっと人が流れ、今以上に盛り上がることだろう。
Destination2: バイセリア
セコイア/キングスキャニオン国立公園の玄関口とも呼ばれ、セットで訪れる人も多い小都市バイセリアは、モデストから車で約2時間半、ロサンゼルスやサンフランシスコから約3時間半の場所に位置する歴史深い街。ダウンタウンには煉瓦造りのヒストリカルな建物が立ち並び、映画の中に出てくる昔のアメリカのような雰囲気も垣間見える。美術館やギャラリー、劇場や小さなホールも多く、エンターテインメントを楽しめる街でもあるから、夜は多くの人でにぎわっていた。
今回宿泊したのは、2020年にオープンした、街の中心地に佇む「ダーリングホテル」。郡裁判所別館だった歴史的建造物をリノベーションし、1930年代のアールデコ様式と現代的なホテルアメニティを融合させたラグジュアリーなブティックホテル。味のあるインテリアやアールデコのディテールが優雅で、館内も部屋もどこを切り取っても絵になる。
![]() |
![]() |
屋外には温水プール、そしてオリジナルカクテルが評判の屋上バー&レストラン「エルダーウッド」はローカルからもツーリストからも大人気のファインダイニング。シエラネバダ山脈とバイセリアの景色を一望でき、中央カリフォルニアの豊かな農産物を活かした独創的な料理が楽しめる。カリフォルニアワインのペアリングでいただいたディナーは、ローストスイートポテトや赤玉ねぎ、チョクロという白い大粒のとうもろこしと一緒にいただく前菜のオヒョウのセビーチェ、メインのA5ランクの和牛ステーキ・マッシュルームのデミグラスソースにポレンタ、味噌ブラウンバターエスプーマが秀逸だった。
エルダーウッド
ディナーのあとに夜のダウンタウンに繰り出した。クラフトビールがいただけるブリューワリーがいくつもあるが、そのなかで人気の「バレルハウス ブリューウィング カンパニー」へ。
バレルハウス ブリューウィング カンパニー
https://barrelhousebrewing.com/
![]() |
![]() |
朝はダウンタウン散策。まずは木材加工工場をリノベートしたカフェ「コンポーネントコーヒー バイセリア」のテラス席で朝食。野菜と玄米のパワーボウル、そしてオーツミルクコーヒー。元気のあるみずみずしい野菜が絶品!
コンポーネントコーヒー バイセリア
https://component.coffee/pages/visalia
ダウンタウンには、元刑務所のビルや、1930年代に建てられ、美しく復元された「バイセリア フォックス シアター」、駅舎を改装してレストランとして営業していた「ザ・デポー」など、歴史的建造物があちこちにあり、見どころが豊富。馬が街を歩いていた時代に思いを馳せつつ、ノスタルジックなアメリカの原風景を堪能した。華やかなシャンデリアやランプ、天井の装飾…。古き時代のエレガントな職人仕事やヴィンテージな装飾に見入ってしまう。
ランチをした「ブラボー ファームス バイセリア」は、1階はデリやお土産のショップ、2階がレストラン。バイセリアもモデストと同じようにフルーツやナッツ、オリーブ、乳製品、野菜が豊富で、とくにピスタチオが有名なので、1階でタイ風スパイス味のピスタチオを購入。こちらはローカル産のジャムやスイーツにも定評がある。ランチは一皿の量がびっくりするほど多いサラダやピザをみんなでシェアして。ヘルシーなのにがっつりというアメリカらしい美味しい食事が楽しめるから常に満席!
ブラボー ファームス バイセリア
https://bravofarms.com/pages/visalia
バイセリアは小さな街だけれど、だからこそダウンタウンは歩いて散歩ができる。緑がふんだんで、古き良きものと新しいものが同時に存在し、ショッピングもグルメも、と心からのんびり自由に、そして多彩に楽しむことができた。
国立公園への観光と併せて立ち寄りたい小都市モデスト、そしてバイセリア。Farm to tableの精神が息づき、フレッシュなローカルフードを堪能できる街での滞在は、心にも体にも栄養が行き渡るような時間だった。美味しいものの生産者さんから話を伺い、味を確かめながら深掘りできたり、知られざる獲れたての野菜料理やフルーツを目いっぱいいただけるなんて素晴らしい経験だ。食を愛する方におすすめのディスティネーション。
カリフォルニアの大自然は、健康とは何か、幸福な時間とは何かを考えさせてくれる。大都会も、とてつもない自然も、新しいものも、悠久のときのなか、ずっと存在し続けるプリミティブなものも、スケール大きく混在しているカリフォルニアが大好きになった。
次回は往復で搭乗したスターラックス航空についてご紹介したい。
取材協力
カリフォルニア観光局 www.visitcalifornia.com/jp
モデスト観光局 https://visitmodesto.com
バイセリア観光局 www.visitvisalia.com































