McLaren GT : FROM THE COCKPIT

誰でも気軽に
“濃密な時”を味わえる

Tuesday, February 16th, 2021

そのスピードと性能において、マクラーレンほど、傑出した存在はない。

しかも、それが毎日使えるイージーさを兼ね備えたら……

そんな夢のクルマをリポートする。

 

 

photography hirohiko mochizuki

 

 

 

McLaren GT/マクラーレン GT

マクラーレンが誇る、スーパースポーツとしての性能と、エブリデイカーの気軽さを兼ね備えた奇跡のクルマ。発売以来のベストセラーである。全長×全幅×全高:4,685×1,925×1,234mm、乾燥重量:1,466kg、エンジン:4.0ℓV8ツインターボ、トランスミッション:7速SSG、最高出力:620ps@7500rpm、最大トルク:630Nm@5500-6500rpm、0-100km/h加速:3.2秒、最高速度:326km/h ¥26,950,000(車両本体価格) McLarenマクラーレン東京 TEL.03-6438-1963

 

 

 

 早世の天才レーサー、ブルース・マクラーレンは、1964年の著書『From the Cockpit』の中で、“人生の価値とは長さではなく、何を成し遂げたかで決まる”と綴った。彼の死から半世紀が経ち、その名を冠したメーカーは、世界有数のブランドへと成長したが、ブルースの遺志は、脈々と受け継がれている。マクラーレンはそのスピードと性能において、乗る人に濃密な体験をさせるクルマなのだ。しかも、マクラーレン GTは、その前に“ 誰でも気軽に”という枕詞が付く。これは万人のためのスーパースポーツとして開発された一台なのである。

 

 とはいえ、その存在感は、巷のクルマとは一線を画す。ボディは鋭いナイフで削り取ったようなラインで構成され、サイドには巨大なエアインテークが口を開ける。上方に跳ね上がるディへドラル・ドアをオープンした姿は、まるで羽を広げた猛禽類のようだ。このデザインは、クルマというより、ジェット戦闘機のそれである。

 

 転じてインテリアは、実にラグジュアリーなものだ。コクピット周りはキメ細やかで、指に吸い付くような上級のレザーで覆われている。複雑な曲面を描くダッシュボードやトリムの革をぴたりと張るには高い技術が必要だ。シフトパドルやペダル類には削り出しのアルミニウムが使われ、鈍い光沢を放っている。どちらにも、英国伝統のクラフツマンシップが感じられる。特筆すべきは、トランク容量の広大さだ。スキーやゴルフバッグを積むことも可能だという。室内からリアラゲッジに直接アクセスできるのもいい。

 

 

ディへドラル・ドアをオープンした姿。ドアは巨大な金属塊のように見えるが、その開閉は驚くほど軽く、指一本でも可能だ。

 

 

 

 スイッチ類はごくシンプルにまとめられ、初めてでもまごつくことはない。スタートボタンを押すと、腹の底まで響く重低音とともに4.0ℓV8ツインターボエンジンが目を覚ます。ドライブ・モードセレクターを回し、最も過激な“トラック”を選ぶと、メーター表示やアイドリングノートまで変わる。

 

 モードをコンフォートに戻し、恐る恐るアクセルを踏むと、クルマはするすると動きだす。取り回しは、拍子抜けするほど簡単だ。乗り心地も実に快適。これなら都会の足として普通に使えるだろう。ただし、カーボンモノコックボディの巌のような剛性感は、走りだした瞬間から伝わってくる。自らがスーパーカーであることを、静かに主張しているようだ。

 

 高速道路に入り、フルスロットルを試みると、凄まじいGで体がシートに押しつけられる。呼吸するのが苦しいほどで、戦闘機のカタパルトってこんな感じか、といった妄想が頭をよぎる。モードをマニュアルにして、シフトを操作してみると、金属製のパドルが手に馴染み、カチカチと小気味よい。マニュアル・ギアを上手くシフトチェンジできたときのような爽快感がある。しかし、ワインディングでは、頻繁なシフト操作を要求してくるタイプではない。英国のカントリー・ロードで躾けられたであろうマクラーレン GTは、幅広いトルクバンドを持ち、どの回転数からでも、もりもりとしたパワーが噴出してくる。

 

 

レザーで囲まれたコックピット。ベージュのコーンがお洒落なスピーカーは英国の名門B&W製で、素晴らしいサウンドを聞かせる。

 

 

 

 翻ってみると、マクラーレン GTは、軽くしっかりとした車体、キレのいいシフト、トルクフルなエンジンと、ブリティッシュ・スポーティネスの伝統を遵守した一台であることがわかる。それでいて荷物がたっぷり詰めて、運転もラクで、乗り心地もいい。毎日の通勤からパートナーとの1〜2泊の旅行まで、幅広く使える。

 

 このクルマを購える人は幸せである。なぜならば、スピードや性能のみならず、濃密な人生の時を手に入れることができるからである。

 

 

ミドシップ・エンジンの上に設けられたリアトランク。形状にもよるがゴルフバッグなどの積載も可能だ。フロント150ℓ、リア420ℓという広大なトランク・スペースを擁する。

 

 

撮影協力 :THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 仙石原 TEL.0460-83-8981

 

本記事は2021年1月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。