LOUIS XIII Global Executive Director
LUDOVIC DU PLESSIS

“100年”という時の美学を伝える手腕

Saturday, November 23rd, 2019

近年、ユニークなプロジェクトが際立つコニャックの王「ルイ13世」。

そのすべての舵をとるキーパーソンにインタビューする機会を得た。

 

photography tatsuya ozawa

 

 

Ludovic du Plessis/ルドヴィック・ドゥ・プレシ

パリ生まれ。ドフィーヌ大学でマーケティングを学んだ後、フランスの高級ワインの広報担当としてキャリアをスタート。ワインおよびスピリッツへの深い理解を生かし、ブランドの価値を高めることに情熱を注ぐ。シガーのマーケティングマネージャー、高級シャンパンのブランドマネージャーを経て、2014年より現職。家族との時間も大切にする3児の父親。

 

 

 いったい誰がこんな前代未聞のプロジェクトを発案したのだろう? 2015年、世界最高級のコニャック「ルイ13世」は、個性派俳優ジョン・マルコヴィッチと手を組み、“100年後まで観ることのできない映画”を制作した。公開は2115年。それまでフィルムは金庫に収められ、「ルイ13世」とともに100年という時間を過ごすのだ。この「100years」プロジェクトを主導したのが、グローバル・エグゼクティブ・ディレクターのルドヴィック・ドゥ・プレシ氏だ。彼は2014年に現職に就任してすぐ、セラーマスターから「ルイ13世」がどう造られるのかを聞き、その壮大な美学に感銘を受けた。

 

「“100年”という時間を、どうしたら人々に理解してもらえるか考えるうちに、世界中の老若男女に親しまれている“映画”という手段を思いつきました。モダンで画期的な方法で表現できたことがこのプロジェクトの成功の鍵でした」

 

「ルイ13世」は、約1200種類ものオー・ド・ヴィー(原酒)を複雑にブレンドして造られる。このオー・ド・ヴィーは、100年という長い時間を数世代のセラーマスターによって受け継がれることで誕生する。つまりセラーマスターは100年後に完成するコニャックのために、今仕事をするのだ。「ルイ13世」を構成するDNAのひとつである100年という“時間”を、彼は持ち前のブランディングの手腕を発揮して表現した。

 

「フィルムを収めた金庫は世界ツアーに出ましたが、どの国でも言われたのは、あまりにもクレイジーだけど素晴らしい、ということ。これは表面的でなく、深く意味のあるメッセージだったからだと感じています」

 

 2017年には第2弾として、ファレル・ウィリアムスとともに“100年後まで聴くことのできない楽曲”を発表した。しかも今度は、音源をコニャック地方の土で作ったレコードに録音し、水没に耐えられない金庫に収めることで、“私たちが地球環境を守り続けることができたら(#IfWeCare)”という重要な条件を追加したのだ。

 

「私たちが気候変動に声を上げるのは自然な流れです。素晴らしい土壌なくして『ルイ13世』は生まれないからです。気候変動について今、全力で対策を練らなければなりません。同じく環境問題に意識の高いファレル・ウィリアムスと手を組むことで若い世代にも訴えることができました。その意義は大きく、各国から99%の好意的な意見をいただきました」

 

 

ルドヴィック・ドゥ・プレシ氏(左)とファレル・ウィリアムス(右)。

 

 

 彼が就任してから次々と発表されるプロジェクトは大胆で他に類を見ないものばかりだ。アイデアのインスピレーションは常に「ルイ13世」から得るという。

 

「100年後の世界を想像してみてください。スマートフォンはスマートフォンとして存在しているかわからないですよね。でも『ルイ13世』は変わることはありません。同じ味と香りです。私たちの仕事は、100年以上前から続く伝統を守り、100年後に想いを込めて仕事すること。“時間”こそがラグジュアリーであり、『ルイ13世』の重要な柱であるということを伝えたいのです」

 

 100年後の消費者を見据えて仕事をするという企業はなかなか存在するものではない。そんな彼自身は「ルイ13世」の今後をどう見据えているのだろうか。

 

「『100 years』の第3弾も準備していますし、ブランドのストーリーについて理解していただくための手段をいくつか考えていて、近日中に発表できるはずです。皆さんが驚くような仕かけを考えています」

 

 販売方法についても革新を起こす。現在世界で3店舗ある、スピリッツブランドとしては異例の直営ブティックを、各地で展開する予定だという。その真意を尋ねた。

 

「ラグジュアリーなブランドとしての世界観や、『ルイ13世』のあるライフスタイルの提案を行います。常にお客様の近くにありたいですし、直接コミュニケーションを図りたい。ストーリーを伝えるのは必ず人から人、ですからね」

 

 

 

 

「ルイ13 世」とともに金庫に収められた粘土製のレコードは、コニャック地方で2117 年まで保管される。ファレル・ウィリアムスの書き下ろしの新曲は、地球温暖化による海面の上昇で金庫が水没してしまうことを防がなければ、誰も聴くことができないのだ

1874年に誕生以来、人々を魅了し続けるコニャックの王。「ルイ13世」を味わうということは、時間を味わうということであり、最高の贅沢といえる。700ml ¥340,000 Louis XIII(レミー コアントロー ジャパン TEL.03-6441-3025)