“LONGMORN”
130年続くスコットランドの至宝、「ロングモーン」
February 2024
これまでオフィシャルとしてはほとんど販売されてこなかった「ロングモーン」が、2024年、満を持して独立ブランドとして日の目をみる。
text the rake
photography shoichi kondo
シングルモルトウイスキー「ロングモーン」は、ウイスキーづくりに欠かせない美味しい水ときれいな空気に恵まれた“ウイスキーの聖地”、スコットランド・スペイサイドのエルギン地区にある蒸溜所から生まれる。産業革命真っ只中でありウイスキーブームの最中だった1894年に、時代を先取りする考えを持った起業家ジョン・ダフによって創業された。
旅を愛し世界を知っていた彼は、創業間も無く大胆な手を打つ。蒸留所の目の前に、なんと駅を建設した。ウイスキーのための最高の原材料を円滑に調達するため、そして蒸留所で造られた稀少なウイスキーをより遠く離れた土地へ届けるため、列車を走らせたのだ。現在では、この“鉄道”がロングモーンのイメージモチーフとして採用されている。
左:産業革命の真っ只中にロングモーンを創業したジョン・ダフ。世界に目を向け時代を捉える能力に長けた彼は、さまざまな事業にチャレンジする戦略家だった。右:当時の蒸留所を描いたアーカイブ資料。鉄道が走っているのが見える。
ロングモーンは、穀物不足や戦争でなどの数々の苦難を乗り越え、創業から現在まで一度も稼働を止めることなく、スぺイサイドの伝統的な芸術——シングルモルトウイスキーを造り続けている。130年もの歴史があるにもかかわらず、深く豊かな味わいは変わらない。現地の材料を使用するなど伝統的なスペイサイドのスタイルを守っており、モルトの粉砕、マッシング、発酵、蒸溜の方法といった製造方法も創業当時から変わっていない。
ロングモーンの蒸留所はスペイサイド・スタイルの製法に揺るぎない信念を持ち続け、130年もの長い間、一度も稼働を止めることなくウイスキーを造り続けてきた。
蒸留所の地下深く、モレー帯水層から直接汲み上げられた水は、1基のステンレス製のマッシュタンと8基のステンレス製ウォッシュバックを用いて、50時間の発酵を行い、麦汁が抽出される。蒸留は、8基の小さくユニークなオニオン型の銅製蒸留器で行われる。ひとつの部屋には4基のウォッシュスティル、もう1つの部屋に4基のスピリッツスティルがある。それらはいずれも、ウイスキーを運ぶ列車と同様に、石炭を燃料として使用されていた(1990年に蒸気コイルに変更されている)。
良質なスピリッツを最大限に活かし、スペイサイド・スタイルを究極まで表現するため、樽には厳選されたアメリカンオークとホグスヘッドのみが使用される。さらに、樽出しの際に加水しないカスクストレングスや、冷却濾過をしないノン・チルフィルタード製法を採用することで、極めてピュアなシングルモルトウイスキーに仕上げている。
ロングモーンでは約48~55時間の短時間発酵を行っており、これがウイスキーの個性に寄与している。年間の生産量は、490万~520万リットル。
ロングモーンの製造方法は、ウイスキー業界に広くインスピレーションを与えてきた。数々の世界の巨匠たちがこの蒸留所で学んでおり、日本のウイスキーの父として知られる竹鶴政孝も1919年にこの蒸留所で働いていた記録がある。つまりロングモーンは今日のジャパニーズ・ウイスキーを作り上げたルーツといっても過言ではないのだ。
その品質は、ブレンダーや蒸留家・ウイスキー愛好家から高く評価されている。近年では、「シークレットスペイサイド」コレクションとして数量限定で発売されたロングモーンが、2020年より3年連続で、世界3大酒類コンテストのうちのふたつである「インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション(IWSC)」「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)」において高評価を得ている。ロングモーンは紛れもなく、世界に誇るスぺイサイド地方の最高級品のひとつなのである。
蒸溜所の経営は現在、マーク・クルックシャンクがバトンを受け継ぎ、マスターディスティラーを務めた父親から受け継いだ教えをもとにロングモーンの歴史と野心を引き継いでいる。
2024年、プレステージブランドとして独立して発売されるロングモーンは、最適な熟成年数として導き出された「18年」以上のものに限られている(18年と22年がリリース)。今後は年に一度のみのボトリングとなり(シングルバッチ)、毎年新しいバッチが発売される(アニュアル・リリース)予定だ。加水せずに樽出しがそのままボトリングされるカスクストレングスとなり、アルコール度数はバッチにより異なる。それゆえ、非常にコレクション価値の高いウイスキーとなっている点に注目したい。
2024年より独立ブランドとして新たに発売されるロングモーンは、今後は年に一度ボトリングとなり、毎年新しいバッチで発売となるため、愛好家たちの心をくすぐるコレクション価値の高い1本となる。
ロングモーンの味わいは、スペイサイドらしく華やかでクリーミー。さまざまな飲み方に対応する万能型だが、おすすめはやはりストレートやオン・ザ・ロックだろう。ロングモーンの特徴であるトフィーフレーバーを存分に味わうことができる。また、オールドファッション、ウイスキーサワー、ロブロイなど、クラシックなカクテルでも楽しむことができる。いずれにしても、特別な時間となることは間違いない。
アムステルダムを拠点とするアートディレクター兼グラフィックデザイナー、ジェイク・ノークスによる新パッケージは、20世紀初頭のアールデコ様式にインスパイアされたデザイン。創業者ジョン・ダフが蒸留所内に建設した鉄道をモチーフとしたロゴが印象的。特徴的なアーチと相まって、ラグジュアリーな鉄道旅行を連想させる。18年と22年をラインナップ。いずれも容量は700ml。アルコール度数はカスクストレングスのためバッチごとに異なる。
左:「ロングモーン 18年」¥37,125 右:「ロングモーン 22年」¥59,400 Longmorn
ペルノ・リカール・ジャパン株式会社
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