LEXUS LBX
【レクサス LBX】小ささの革命
April 2024
レクサスから、「小さな高級車」がリリースされた。目指したのは、大型車から乗り換えても満足のいく仕上がりだという。自動車評論家・小川フミオがリポートする。
text fumio ogawa
LEXUS LBX
LBXには紡錘形のシェイプをつなぎ合わせたフロントグリル「ユニファイドスピンドル」が採用され、新しい時代のレクサスを象徴する一台となっている。全長×全幅×全高:4,190×1,825×1,545mm/エンジン最高出力:67kW/エンジン最大トルク:120Nmフロントモーター最大トルク:185Nm(4WDではリアに52Nmのモーターが加わる)
レクサスが2023年11月に発表した「LBX」がおもしろい。ラージサイズのクルマと同等の質感を、コンパクトサイズで実現、が開発コンセプトなのだ。
紳士服の世界だと、モーニングコートの代わりにディレクターズスーツ、イブニングコートでなくタキシード……などと連想してしまう。フォーマル、だけど軽やか。
LBXは全長4,190mmしかない。レクサスRX(4,890mm)や同NX(4,660mm)といったSUVよりだいぶコンパクトだ。
これまで、クルマの世界では“小さな高級車”への挑戦がなかったわけではない。例えば、仏ルノーはかつてR5という全長3.5mほどのハッチバックに革内装を与えた「5(サンク)バカラ」なるモデルを造っていた。
レクサスLBXの独自性は、当初から小さな高級車を目指したところだ。開発責任者によると「大型のレクサス車のオーナーから街で扱いやすいサイズのモデルを、という声が寄せられていたため開発に踏み切りました」とのことだ。
そのため、ボディ外板には複雑なカーブがつけられ、光による抑揚がたいそう美しい。スポーティさとエレガンスが上手に両立している。
内装も上質さが追求された。レクサスの上級車種のように、やや古典的だけれど、素材の質感を生かしつつ、適度にスポーティな、説得力のあるデザインだ。
さらにユニークなのは、「(レクサス)LSから乗り換えても不満の声が出ないように」(開発責任者)と、セミアニリンレザーなど”高級素材”を使った「Bespoke Build(ビスポークビルド)」なる仕様が用意されること。内外装のカラーパレットも豊富で、全長4.2mのクルマで自分仕様が手に入ることを喜ぶひとは多いだろう。服でいえばセミオーダーの感覚だ。
ドライブトレインは、1.5リッター3気筒とモーターを組み合わせたハイブリッド。加速時のトルク感といい、操舵感覚の適度な重厚さといい、さらに高速道路などの静粛性と乗り心地の快適性にいたるまで、LBX専用に造り込んだとする、開発者の言葉に納得。
おもしろいのは、3気筒エンジンの音質まで気を遣ったという発言。特に、高回転で音がきれいに揃う3気筒の特性を重視して、エンジン回転が上がったとき、高音で吹かれた金管楽器の調べのような音質をつくりだしている。
乗るひとの感覚をいい感じで刺激してくれる点において、ボディサイズは関係ない。LBXはそのことを証明している。小ささの革命である。
小型車だが大きく抑揚がつけられた面づくりで、グラマラスで伸びやかなフォルムを特徴としている。
ホイールサイズも大きく、存在感を主張している。2,580mmのホイールベースで175cmの人間が4人ゆうゆうと乗っていられる。
自分だけの内外装を選ぶことができるBespoke Buildは大胆な色づかいもあり仕様が豊富である。