The 220-Year Legacy: Kutani Ware Meets Kaga Vegetables in a Kanazawa Samurai Residence

【金沢】九谷焼220年の美意識が宿る武家屋敷ダイニングの「加賀野菜鍋」

December 2025

約220年にわたり九谷焼の魅力を伝え、継承してきた老舗窯元「鏑木(かぶらき)商舗」。その美意識を料理へと昇華させた「鏑木食堂 武家屋敷店」が、加賀野菜の魅力をまるごと味わう鍋コースの提供を始めた。九谷焼の器とともに、金沢の食文化を堪能できる新しい体験だ。

 

 

text yukina tokida

 

 

 

 

 北陸新幹線の開通後、建築や工芸、食文化やアートなどの多方面の魅力に絶えず注目が集まっている金沢は、いま国内外からの観光客で大きな賑わいを見せている。ひがし茶屋街や武家屋敷跡など人気スポットには平日でも多くの人が行き交い、街全体が活気に満ちている。それと同時に、街を歩いていると、谷口吉郎をはじめとする名建築家や工芸の名匠を数多く輩出してきた、この地ならではの主張しすぎることのない穏やかな美意識も随所に感じられる。

 

 そんな金沢を象徴するように、長町武家屋敷跡に店を構えるのが「鏑木食堂 武家屋敷店」だ。鏑木商舗は、徳川11代将軍の治世に九谷焼最初の商家として開業し、220年にわたり、さまざまな革新的な取り組みとともに進化を続けながらその歴史を紡いできた老舗。現在は8代目の鏑木基由氏がその舵をとり、市内に点在するショップや工房、ギャラリーにおいて、九谷焼の魅力をあらゆる角度から発信している。

 

 そんな窯元が営む食事処は、ただ料理を提供するレストランではない。金沢ならではの文化体験の場である。立派な梁や土壁、中庭が残る武家屋敷の空間は、時間を忘れ、美しい九谷焼の器の魅力と料理の滋味深さを一層引き立ててくれる。

 

 今秋、本格的に提供が始まった「鏑木 加賀野菜鍋」は、金沢の食文化に深く根ざす伝統野菜を主役に据えた鍋料理だ。まず先付けとして、加賀野菜を使った和えものやきんぴら、サラダなどが登場。続いてよもぎ生麩の刺身と鮮魚の昆布締めが供される。筆者が訪れた際には甘エビだった。昆布の旨みと甘エビのねっとりとしたやさしい甘味に、まだコース序盤だというのにすでにお酒がすすんで仕方がなかった。

 

 

 

 

 そしてメインの登場。この日は、地元食材のすだれ麩や粟麩、花麩など東京ではなかなかお目にかかることのない多彩なお麩に加え、加賀レンコン、金沢せり、金沢春菊、源助大根、金時草、金沢一本ネギの計6種の加賀野菜が用意されていた。加賀レンコンはすりおろしたものが、つなぎを使用せず団子に仕立てられていた。もちもちで、やさしい甘みが広がる、この地ならではの具材に心が躍る。出汁にはごぼうのささがきも加えられており、食べ進めるにつれて食材の旨みがどんどん増していく。

 

 

鍋の蓋には職人が一つひとつ手仕事で仕上げた可愛らしい絵柄が描かれている。九谷焼の魅力にたっぷり触れられる鍋コースの始まりだ。

 

 

 

 

 そのあとは豚ロースのしゃぶしゃぶと〆のラーメンへと続く。美容や健康への意識が高いゲストにも嬉しい、軽やかさと満足感を兼ね備えた内容だ。

 

 さらに嬉しいのが、オプションとして香箱蟹や日本三大寿司店として知られる金沢のあの名店で提供されているうなぎの蒲焼、世界チャンピオンに輝いた芝野大造氏によるかの有名な「マルガージェラート」も注文できること。少し足を伸ばさないとありつけないこのジェラートを金沢市内で食べられる場所はごくわずかというから、ぜひ追加でオーダーしていただきたい。

 

 

 

 

 そして、この鍋コースのもうひとつの魅力は、九谷焼の器との“一期一会”。用意される器はその日によって異なったり、隣のテーブルともまったく違う絵柄が登場することもある。再訪した際にはまた違った器に出会えるという楽しさは、窯元が営む食事処ならではの醍醐味だ。

 

 料理に合わせる飲み物も、ワインから日本酒まで幅広く揃っている。それは店主の鏑木基由氏が、ワインや日本酒への造詣が深いから。ソムリエ・ドヌールや酒サムライにも就任しており、オリジナルの日本酒も手がけている。

 

 予約はランチ、ディナーともに2名から可能。2営業日前までの予約が必須だ。定休日(水曜)と木曜を除く全日、楽しむことができる。次なる金沢の滞在時、ほっこり鍋気分になったらぜひこの店を思い出してほしい。

 

 

 

 

基本の鍋コース:先付、よもぎ生麩の刺身と鮮魚の昆布締め、野菜鍋、豚しゃぶ、〆のラーメン ¥7,500

オプション:うなぎの蒲焼 ¥2,000/マルガージェラート ¥1,000/香箱蟹(時価)/ドリンク ¥440~(飲み放題90分¥2,000)

 

 

鏑木食堂 武家屋敷店

石川県金沢市長町1丁目3-16

TEL. 076-221-6666

営業時間:10:00~21:00(水曜定休)

https://kaburaki.jp/shops/ippuku

not found