Jérôme de Lavergnolle Interview
手仕事が担う“伝統”と
メゾンを前進させる“革新”
July 2018
職人による伝統技術の継承に力を入れる一方で、モノづくりという側面においては新しい試みや挑戦も欠かさない。400年以上の歴史にとどまることなく前進するためには、“伝統”だけでなく、“革新”も必要になると考えている。
「サンルイから“革新”を奪ったら、漕がない自転車と同じです。漕がないと、前に進めず倒れてしまいます。例えば、『フォリア』というコレクションがあるのですが、工房の周りに存在する森や、ある種私たちの歴史の源に遡るテーマをベースとしつつ、モダンなデザインとLEDなどの新鋭の光源を採用しており、“伝統”と“革新”の両面性を持ち合わせています」
昨年発表された『フォリア』は、デザイナーのノエ・デュショフール=ローランスが工房周辺の森の中でインスピレーションを得て生まれた、自然賛歌のコレクション。テーブルウェアやランプ、家具など25アイテムが展開されている。
「また、キキ・ファン・アイクというオランダ人デザイナーを招聘した際、私はこう言いました。『デッサンを見せていただく必要はありません。私たちの工房に来て、職人を観察してください』と。すると彼女は工房のあらゆる場所を探索し、昔実際に使われていた古い金属型を見つけてきました。
今現在使われている型とのコントラストに感動した彼女は、それを使って新しいランプを作ると言ったのです。そして、モダンなデザインと非常に斬新な機能性を備えた、まったく新しい製品を生み出しました。大切なのは過去と同じものを再度作ることではなく、過去に敬意を表して新しいものを作る、ということなのです」